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集団的自衛権の行使条件、9条を逸脱 公明、容認へ調整
http://www.asahi.com/articles/ASG6F5QVKG6FUTFK00G.html
2014年6月13日22時27分 朝日新聞
自民党は13日、集団的自衛権を使えるようにするため、自衛権発動の新しい前提条件(新3要件)を公明党に示した。安倍晋三首相がめざす集団的自衛権の行使を認める閣議決定案の柱となる。公明の山口那津男代表も同日、「国民の理解を深め、合意をめざしたい」と述べ、限定的に行使を容認する方向で党内調整を始めた。だが、新3要件はあいまいで、武力行使が拡大する可能性がある。憲法9条の下で専守防衛に徹してきた日本だが、この枠組みが外れることになる。
これまで自衛権は、憲法9条のもと日本が直接攻撃を受けた時にだけ反撃できる「個別的自衛権」に限られ、その発動の3要件の一つが「我が国に対する急迫不正の侵害がある」ことだった。
だが、自民党の高村正彦副総裁が13日に与党協議で示した「新3要件」では、「他国に対する武力攻撃が発生し」た時も自衛権を発動できるとし、集団的自衛権の行使容認を明確にした。
加えて自民は新3要件の一つに、1972年の政府見解で示された「我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆されるおそれがあること」との文言も盛り込んだ。公明がこの72年見解を踏まえ、集団的自衛権を狭く限定する形で容認を検討していることから、公明の理解を得やすくする狙いがある。しかし、72年見解は「集団的自衛権の行使は憲法上認められない」と結論づけており、都合のよい部分だけを切り取ったに過ぎない。
政府は13日、新3要件を内閣法制局に示し、細かな文言調整をするように審査を指示した。公明党と合意に至れば、集団的自衛権の行使を認める閣議決定案に盛り込む考えだ。
ただ、新3要件には、ときの政権の判断で自衛隊の活動範囲を拡大できるようなあいまいな表現がある。
公明党は朝鮮半島有事での対応など極めて狭い範囲に限って認めることを想定しており、早速、「自衛隊の活動が際限なく広がりかねない」(党幹部)との批判が出ている。今後の協議で文言をめぐる攻防が予想される。(蔵前勝久)
■自民提案、歯止めきかない
〈解説〉 自民党が提示した新3要件は、日本を守る場合に限って武力を使うことを認める「専守防衛」という、戦後日本が長年にわたって守ってきた基本方針を事実上放棄するものだ。新3要件が適用されれば、日本は自分の国への攻撃がなくても、ときの政権の政治判断によって、他国どうしの戦争に参戦できるようになる。
日本は先の大戦の反省を踏まえ、これまでの3要件では、日本を防衛する目的であっても自衛隊の出動を厳格に抑制してきた。武力行使が可能となるのは、自国が直接攻撃される「急迫不正の侵害」という明確な基準を設けた。さらに、政府は武力行使が可能となる具体的な場面を国会答弁などで例示してきた。
例えば、北朝鮮を念頭に置いた弾道ミサイル攻撃への対応については、相手国から「東京を火の海にしてやる」という表明があり、発射態勢になった場合などと、具体的に答えている。
一方、今回の発動要件は「我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆されるおそれ」としており、極めてあいまいだ。ときの政権が「我が国の存立が脅かされるおそれがある」と判断すれば、「地球の裏側」での戦争でも、参戦できるようになる。
自民党の提案は集団的自衛権の行使を認めているうえ、その歯止めにもならない。行使に慎重姿勢を示してきた公明党は、これにどう向き合うつもりか。「平和の党」を自任する公明党の存在意義が問われている。(園田耕司)
■自民党が集団的自衛権を行使するのに必要とする自衛権発動の「新3要件」
憲法第9条の下において認められる「武力の行使」については、
(1)我が国に対する武力攻撃が発生したこと、又は他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆されるおそれがあること
(2)これを排除し、国民の権利を守るために他に適当な手段がないこと
(3)必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと
という三要件に該当する場合に限られると解する。
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