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社会学者滝口直子氏(上)「カジノで成長戦略は絵に描いた餅」
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/150799
2014年6月9日 日刊ゲンダイ
ギャンブルやアルコール依存症研究の第一人者/(C)日刊ゲンダイ
いよいよカジノ法案が来週、衆院で審議入りする。安倍政権は特区をつくり、外国人観光客を呼び込むことで、成長戦略の目玉にしようとしているが、多くの懸念があるのも事実だ。外資の食い物にされないか。成長戦略になりうるのか。ギャンブル依存性の問題はどうなのか。カジノ研究第一人者の社会学者に聞いてみた。
――安倍晋三首相は先月30日、訪問先のシンガポールでカジノを含む統合型リゾート施設(IR)を視察、「外国人観光客を2020年までに年2000万人へ倍増させたい。IRは(外国人観光客を呼び込む)成長戦略の目玉」と意気込んでいましたね。
カジノ最後発の日本が、トップを走るシンガポールやマカオと競争して世界の富裕層を引っ張ってくることができるのでしょうか。非常に甘い予測といえますし、そもそもヨーロッパやカナダなどではカジノを成長産業とみていません。確かにシンガポールのカジノは成功していますが、そのビジネスモデルが日本でも成り立つのかは疑問です。シンガポールは人口の多いインドやASEAN、中国に近い。お客さんを呼びやすい地理的条件がある。日本がシンガポールに追い付こうとしたら、地理的に近い中国などの富裕層を呼んでくることが不可欠ですが、安倍首相は日中関係や日韓関係を悪化させていますからね。絵に描いたモチとなる可能性は非常に高いと思います。
■日本人の虎の子が海外へ流れる
――最大の顧客となる隣国との関係悪化を招いた“A級戦犯”が、中国の富裕層がカギを握るカジノ推進を口にするのは支離滅裂だと。ブレーキとアクセルを同時に踏んでいるようなものというわけですね。
先月15、16日に都内で開催されたカジノの国際会議「ジャパン・ゲーミング・コングレス」では、安倍首相の発言と正反対のプレゼンテーションがありました。主な顧客は外国人観光客ではなく、日本人の富裕層という内容です。「日本人富裕層の個人金融資産量」を「日本に出来る推定カジノ数(3〜10)」で割って、「海外に比べて、日本の1つのカジノ当たりの個人金融資産量は突出しているから日本のカジノは莫大な利益は確実」と投資を呼びかけていました。
――外国人観光客を狙うわけではないんですね。
国際会議には、「スペクトラム・ゲーミング」のフレッド・グシン代表取締役をはじめ海外のカジノ業界の大物が多数参加していましたが、彼らにとって重要なのは、投資が回収できるのかどうかであって、お金を落としてくれるのが外国人であろうが日本人であろうが関係ない。外国人観光客を呼び込むという安倍政権の成長戦略のもくろみは外れ、日本の虎の子の個人資産が外資に流出してしまう事態が考えられます。
また成長産業になるどころか、日本の公営ギャンブルが廃れていったのと同様、衰退産業となる恐れもあります。今の若い世代は小さい頃からオンラインゲームやSNSに慣れ親しんでいますので、わざわざカジノに出かけていくのかは怪しい。今はアジアでカジノがブームだけれども、10年後や20年後は公営ギャンブルと同じ運命をたどっても不思議ではありません。(つづく)
◇
社会学者滝口直子氏(下)「カジノ規制なしでは依存症増える」
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/150800
2014年6月9日
シンガポールのリー首相を訪問/(AP)
――それでも安倍政権はカジノ法案を数の力でゴリ押ししようとしていますね。日本の富裕層の国富流出を防ぐ手段はありますか?
カジノという“黒船”がやってくるのが避けられないとすれば、世界で最先端の規制方法もセットで導入する必要があります。規制のない状態でカジノ解禁となれば、日本の富裕層の貯金が海外に流出してしまう。シンガポールのカジノは大衆フロアとVIPフロアに分かれていますが、大衆フロアは厳しく規制している一方、VIPフロアでは信用貸しを許すなど規制が甘い。マカオも同じです。つまりカジノは大衆狙いではなく、富裕層狙いなのです。日本でカジノ解禁になった場合、VIP向けの信用貸しを禁止することが重要です。現在の貸金業法のままではカジノでの信用貸しは出来ません。そこで、カジノ推進派は「法改正か特区扱いにすべき」と規制撤廃を求めている。「VIPは金持ちだから大損しても問題ない。一般人への対策が重要」という見方もありますが、世界の研究者は「カジノ産業も持続可能性が不可欠。VIPから巻き上げることも慎むべき」「問題ギャンブラーが大損しないように規制をかけよう」と考えています。これが「責任ギャンブリング」という考え方です。
――カジノをめぐっては、首相が最高顧問を務めている超党派の「国際観光産業振興議員連盟」(IR議連)が活動、国際会議には自民党の萩生田光一衆院議員(総裁特別補佐)と岩屋毅衆院議員(安全保障調査会長)、日本維新の会の小沢鋭仁衆院議員が参加し、超党派で法案成立に突き進んでいます。
反対しているのが共産党と社民党で、公明党が慎重という国会の状況からすれば、法案成立は確実でしょう。しかしカジノはギャンブル依存症の患者を生み、その悪影響はまず家族が被り、家庭内で処理できないと生活保護者の増加という形で、社会的損失となって表れます。そのためヨーロッパやアメリカの一部では、カジノを規制しようとしています。ギャンブル依存症の有病率は、規制が厳しいオランダやデンマークでは0.5%。欧州では1%を切っているのに対し、規制が緩いアジアは高い傾向にあります。
最先端の技術を駆使してギャンブル依存症を減らす試みも始まっています。スウェーデンの企業が作った一番新しいソフトは、ギャンブラーの行動をトラッキング(追跡)し、大損をしそうな危ない行動をするようになったら警告を発するようになっています。あらかじめ使用金額の最高額を設定することも可能で、これも歯止めになる。こうした行動トラッキングソフトを起動させないとカジノでプレーできないようにすれば、ギャンブル依存症を大幅に少なくすることができるのです。
問題ギャンブラーに助言する従業員教育もしないといけないし、依存症患者のための治療機関も不可欠です。カジノ解禁をするのなら、こうした受け入れ態勢も同時に整えていく必要があります。
■新銀行東京の幹部が出てきた奇っ怪
――国際会議では、カジノ推進派の丹治幹雄氏が司会を務めていましたね。
丹治さんは国際的なエリート銀行員として長銀に入りましたが、その長銀が潰れた後、04年に“石原銀行”こと新銀行東京の重役となり、カジノ推進の急先鋒となりました。アメリカに渡って「旧・アルゼ」(現・ユニバーサルエンターテインメント)の取締役に就任した。その後、旧・アルゼはフィリピンのカジノ進出をめぐる贈収賄疑惑がアメリカで浮上、日本でもユニバーサルエンターテインメントによる石原宏高衆院議員への選挙支援がメディアで報じられた後、あまり報じられなくなりましたが、丹治さんが再び表舞台に出てきて、石原都政時代と同じようにカジノ推進を訴えるようになった。注目しているのは、舛添都知事の対応です。先日の知事会見でカジノ構想に対し慎重な姿勢を表明しています。フランス留学経験のある舛添知事が「日本に比べてヨーロッパの有病率は低い。最先端のヨーロッパのカジノ規制を取り入れるべき」と考えていれば、アメリカの業界と同じ立場の安倍政権と激突するのは確実です。(おわり)
(聞き手・横田一)
▽たきぐち・なおこ 1955年生まれ。カリフォルニア大学民俗・神話学際プログラム、博士号取得。大谷大学短期大学部、文学部助教授を経て、2000年から大谷大学文学部社会学科教授。ギャンブル依存症やアルコール依存症を社会学的に研究している第一人者として知られる。
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