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産経新聞 6月8日(日)12時5分配信
「中国が軍事的に強いという認識は間違いだ!」と言い切る著書『田母神戦争大学』(産経新聞出版)を刊行した田母神俊雄元航空幕僚長が都内で講演した。田母神氏といえば今年2月の都知事選でスクランブル(緊急発進)し、61万票を集めたことが記憶に新しい。この日の講演では「いったん政治の世界に足を踏み入れた以上、カタギの世界には戻れない」と、新たに「日本真正保守党」を立ち上げることまで宣言したのだった。(溝上健良)
■英検3級記者の憂鬱
6月2日に東京・潮見のホテルで開かれたのは、アパグループの元谷外志雄代表による著書『誇れる祖国 日本復活への提言II』の出版発表会。同書は元谷氏(ペンネーム・藤誠志)の最近1年間の社会時評エッセー12本をまとめたもので、すべて英訳付きとなっている。「憲法を改正して独立した軍を持てる国家を目指せ」といった主張を、英訳することで海外にも発信することは非常に意義のあることだといえる。
かくいう小紙も5月1日、「国民の憲法」要綱の主要部分を英訳して紙面に掲載し、本MSN産経ニュースを通じて世界に発信した。筆者もこの企画の末端に携わったのだが、いかんせん英検3級の英語力のため、さほど戦力にはなれなかった。
いざ「国民の憲法」英訳版を発表してみると、海外からも英語での感想が寄せられてきた。この反響をまとめるため筆者も和訳の作業に携わったのだが、小紙の取り組みを「Great attempt」と評価してくださった方がいた。ちょっとうれしくなって「偉大なる挑戦」と訳していると、後ろからのぞきこんだ大先輩記者に「そこは『素晴らしい試み』くらいの訳が妥当なんじゃない〜」と注意されてしまった。うーむ、やはり英検3級の身にはこの仕事は厳しいか…。
そんなことがあってから数日後、目の前が真っ暗になる記事が小紙に掲載された。いわく「英検、幼児のお受験過熱 10年で5倍の2500人」。何と小学校入学前に準2級や2級といった高校レベルの検定に合格している子供が増えてきているとのこと。もう穴があったら入りたくなってくる。とはいえいまさら英語を勉強する気分にもなれないし、それくらいなら「ネルフ」とか「ゼーレ」や「パンツァー・フォー」とか、ドイツ語を学んだほうが楽しいし。河合栄治郎も不朽の名著『学生に与う』で「Leben ist Kampf(人生は戦いだ)!」と喝破している。ちなみに、小紙の科学担当論説委員によると、ドイツ人が話す英語は聞き取りやすく、海外出張の際にはドイツ人と親しくなるのがスムーズな取材活動の秘訣(ひけつ)なんだとか。「次は××××抜きでやろうぜ!」の一言で仲良くなれるのだという(推奨はしません。あくまで自己責任でどうぞ)。
さて『誇れる祖国 日本復活への提言II』は5万部を発行し、アパホテルの各部屋に配備して、海外からの宿泊客の目にとまるようにするのだという。なるほどその手があったか。日本発の声を海外にどう伝えていくか、新聞社としてもいろいろ考えていく必要がありそうだ。
続いて開かれた出版記念パーティーには29カ国の在日大使館関係者をはじめ約千人の招待客が詰めかける中、藍より青き(「空の神兵」)ネクタイをビシッと締めた田母神元空幕長が登壇した。
■レッテル貼りに負けるな!
冒頭、田母神氏は「危険人物の田母神でございます」とお約束のあいさつで場を和ませ、聴衆の関心を一気に引きつけた。かつての石原慎太郎元都知事の「暴走老人の石原であります」の名文句が想起される。これは某元女性国会議員によるレッテル貼りを逆手に取ったものだったが、この手法はいろいろと使えそうだ。
レッテル貼りといえば左翼・リベラル勢力の専売特許といえる。その点、朝日新聞は見事なもので、『空飛ぶ広報室』『碧空のカノン』『永遠の0』といった作品が注目されるとすかさず「愛国エンタメ」とレッテルを貼り、『悪韓論』『呆韓論』『日本人が知っておくべき嘘つき韓国の正体』『どの面下げての韓国人』『韓国人による恥韓論』『虚言と虚飾の国・韓国』『醜いが、目をそらすな、隣国・韓国!』『朝鮮崩壊』『中国という蟻地獄に落ちた韓国』『ニッポンの懸案 韓・中との衝突にどう対処するか』『中国崩壊前夜』『嘘だらけの日中近現代史』『面白いけど笑えない中国の話』…といった書籍がヒットすれば「嫌中憎韓本」が流行していると警鐘を鳴らしてみせる(毎日新聞はさすがに「憎韓」は乱暴だと考えたのか「嫌韓嫌中」本と報じていましたね)。こうしたレッテル貼りをどう切り返すべきか、田母神氏のあいさつは一つのヒントを与えてくれているように思われる。
そういえば最近は集団的自衛権をめぐる議論で「行使を認めれば『戦争できる国』になる」とのレッテル貼りも目立つ。これを田母神氏がどうひっくり返すのかも、今回の講演の聞きどころといえそうだ。
気分がのって参りましたので、さらにもう一つ。朝日新聞は5月20日の朝刊1面で、東京電力福島第1原発の所員の9割が大震災4日後の朝、吉田昌郎所長(当時)の命令に反して10キロ離れた福島第2原発まで撤退していたと報じた。本当ならとんでもないニュースである。これについては『死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発の五〇〇日』(PHP研究所)の著者、門田●(=隆の生の上に一)将氏が言論サイト・ブロゴスの「お粗末な朝日新聞『吉田調書』のキャンペーン記事」と題する長文の記事で、朝日記事の核心部分が「誤報」だと解説している。生前の吉田氏に長時間取材を敢行した作家による分析だけに重いものがあり、「おすすめ」が軽く1万を突破する注目度の高さである。日本国民必読の記事といえるだろう。
おっと朝日新聞並みに暴走してしまった。そういえばかつて「命がけで暴走します」という名言もあったような…。ま、時には小紙あたりが僭越(せんえつ)ながらA紙のブレーキ役を果たさねばならないのかもしれない。
なお田母神氏の講演中、演壇の脇では『田母神戦争大学』の共著者、石井義哲元空将補がSPのように目を光らせていたのが印象的だった。今回の著書は田母神氏にとっては記念すべき50作目の、石井氏にとっては初の著作とのこと。小柄な田母神氏と長身の石井氏が編隊飛行のように対になって行動するさまは、プラウダ高校の隊長・カチューシャと副隊長・ノンナの絆を想起させるものがあった(突然の戦車道ネタで済みません。詳しくは「ガールズ&パンツァー」をごらんください)。
■私も空軍ですから
さて本題の講演に話を戻すと、田母神氏はブラジルへの講演旅行から帰国したばかりとのことだった。
「(5月)23日から31日までブラジル日本会議から講演依頼を受けまして、2カ所で講演をしてきました。ブラジルはちょうど日本とは地球の反対側にあって、時差がちょうど12時間なんで時計の針を直す必要がまったくないんですね…」
そしてブラジルの日系人が中韓などにいじめられている日本の現状を心配していることに触れ、話題は日本の政治に移っていった。
「いま、日本の政治状況をみますと、自民党が公明党の支援を受けている今の体制では安倍総理がなんぼ頑張っても『日本を取り戻す』のは無理なんではないかと思います。私は、自民党と公明党が離れなければならないと思うんですね。安倍総理が何かやろうとすれば必ず野党が足を引っ張る。公明党は“与党内野党”で足を引っ張る。そこで日本維新の会の一部議員の方々が中心となって、自民党の右側にしっかりとした柱を立てていただいて『自民党よもっとしっかりしろ』という健全野党ができないといけないと思います。そしてその健全野党がある程度の力を持って、自公を分裂させて、健全野党と自民党との連立ができるということが必要なのではないか、そうしなければ『日本を取り戻す』ことは無理なんではないか、というふうに思います(拍手)」
「私も都知事選に出てしまいましたので、私も空軍ですから、いっぺん飛び上がったら敵空母を撃沈するまで戦うしかない(拍手)。政治の世界に足を踏み入れたら、もうカタギの世界には戻れないんじゃないかと思います(会場爆笑)」
「それでどうするか。まあ状況をみながらですけれど、私はでかいことを言うのが好きですから『政党をつくる』ということを一昨日、ツイッターで流してしまったんです。『議員でもないお前が何を言っているんだ』『そんなことできっこないじゃないか』と言われますが、私はでかいことを言うのが好きなんです。でかいことを言って自分を追い込んでしまう、そうすれば後はやるしかない、ということで、名前まで決めてしまおうかということで『日本真正保守党』という名前にしたいと。略称は『真保党(しんほとう)』にするかな、ということなんですけれど、名前だけ決まってスタッフも何も決まっていないけれども『やりますよ』という宣言だけさせていただきました(拍手)。たぶん、多くの政治家の先生方は『何を言っているんだ、政治のことも分からないのに』と思っておられるであろうことは分かりますが、とにかく頑張ろうと思っております」…
このあと、講演では憲法問題にも話がおよび、「戦争できる国」について、首相の靖国神社参拝について、さらには日本核武装についても触れられていった。
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