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集団的自衛権の見直し問題が触媒となる「与野党再編論」の現実
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/39469
2014年06月06日(金) 長谷川幸洋「ニュースの深層」 現代ビジネス
ようやく野党再編の動きが出てきた。みんなの党と日本維新の会の分裂が引き金になったが、政策的には集団的自衛権の行使容認や憲法改正問題への対応が背景にある。日米同盟を基礎に国の安全保障体制を整えながら、与野党ともに深入りを避けてきた問題が再編を後押している形だ。
この流れは今後、さらに加速する可能性がある。集団的自衛権の行使容認について与党が閣議決定すれば、早ければ今秋の臨時国会以降、遅くとも来年の通常国会から自衛隊法をはじめ具体的な関連法の修正作業が始まるからだ。
そのとき野党はあいまいな態度ではいられない。国会で関連法の改正案に賛成するか反対するか、選択を迫られる。憲法解釈の見直しは政府の問題にすぎないが、法律の改正となれば国会の仕事であり、まさしく野党の存在意義がかかっているのだ。
■参院の議席数がどうなるか
鍵を握るのは、民主党である。民主党は減ったとはいえ衆院で55人、参院で58人の計103人の議員を擁する野党第1党である。自民、公明の巨大与党に対抗するには、維新やみんな、結いの党といった野党が結集するだけでは、あまりに非力なのは言うまでもない。
民主党が大分裂し野党再編に合流するか、それとも独自路線を歩むかどうかで情勢はまったく違ってくる。民主党は集団的自衛権の見直しについて事実上、分裂した状態だが、いつまでも中途半端ではいられない。具体的な法案審議が始まるであろう来年にかけて、事態は大きく動くのではないか。
まず、足元の動きを確認する。分党する日本維新の会は橋下徹、石原慎太郎共同代表がそれぞれ結成する新党の勢力が6月5日、決まった。橋下側が37人、石原側が23人で、残る2人が無所属で活動するという。
橋下側は江田憲司代表が率いる結いの党(14人)と夏に合流し、この「橋下・江田新党」はいまのところ総勢51人になる見通しだ。加えて、橋下側も石原側もみんなの党(22人)に働きかけを強めている。
最近、私が会った安倍政権幹部は野党再編について「参院がどうなるかですよね」と言った。自民党は参院で114議席を確保しているにすぎず、議長を除いた過半数の121に7議席足りない。万が一、公明党が集団的自衛権をめぐって連立を離脱するような事態になった場合、だれが不足分を補うかが安倍政権の生命線になるのだ。
■民主党の大勢は集団的自衛権見直しに慎重
そこで各勢力の参院議員の数をみると、石原新党は2人、みんなの党は9人を擁し、橋下・江田新党は14人になる見通しだ。すると、仮に石原新党がみんなの党とまるまる合流すれば計11人となって、不足分の7人をなんとか補える形になる。
つまり、公明党が担っていたキャスティングボートの役割を石原・みんなが果たすことができる。石原側はみんなの議員に対して「一緒になれば、もしかしたら政権を動かせるようになるかもしれないぞ」という殺し文句をささやいているのではないか。
だが、これは「絵に描いた餅」に近い。みんなの浅尾慶一郎代表は「歴史修正主義には立たない」と言っている。つまり、石原とは思想信条やイデオロギー、政治観が違う。浅尾はみんなが結党以来、培ってきた現実主義の政治観が身に付いている。渡辺喜美前代表時代のみんなは安倍政権に近づいたが、浅尾のみんなが石原の誘いに乗るかどうか。
橋下・江田新党はどうか。
集団的自衛権の見直しについて、橋下は賛成だが、江田は「個別的自衛権の拡大で対応できる」と慎重だ。とはいえ、いざ朝鮮半島有事やペルシャ湾危機が現実になった場合の判断は「(集団的自衛権を容認した場合と)大きく変わらない」と言っている。とはいえ石原やみんなと比べれば、安倍政権からはやや距離があるのも事実である。
そこで民主党だ。
民主党の前原誠司元代表や長島昭久元防衛副大臣ら民主党議員13人は同じ5日、会合を開いて、集団的自衛権の行使を容認する安全保障基本法案の骨子を発表した。欠席者を含めても同志は17人程度と少ないが、細野豪志元幹事長も出席した。
前原、細野、長島らはかねて橋下や江田と接触を重ねてきた。維新が分裂したのを受けて「自分たちも野党再編の流れに乗っておかねば」との姿勢を示したのは、容易に推察できる。民主党の大勢は集団的自衛権見直しに慎重ないし様子見だ。「本番はこれから」と構えているのだ。いま前原たちの数が少なくても、流れに乗る議員たちが出てくる可能性はある。
■これからは議員たちの構想力が試される
やや長い目で見ると、集団的自衛権の問題が野党再編の触媒になっているのは、日本政治の結節点を示している。5月2日公開コラム(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/39149)で書いたように、日本の安全保障は日米安保条約で日本の安全のみならず、極東の安全のためにも米国に基地使用を事実上、認めたことで成り立っている。
極東とは具体的に韓国、台湾、フィリピンである。さらに日本は表向き認めないが、米国はベトナムも含めている。かつてベトナム戦争で沖縄が日本に返還された後も、米軍は沖縄の基地を使い続け、日本は事実上、それを容認してきた。
朝鮮半島有事の際、日本は韓国防衛に出撃する米軍に基地を提供して支援する。安保条約の取り決めでは「米軍が戦闘行為に入るときは日米が事前協議する」という建前になっているが、それは文字通り建前にすぎない。
佐藤栄作首相は1972年に沖縄が返還されたときに「極東有事の際は米軍の基地使用について前向き、かつすみやかに態度を決める」と米国で演説した。それは事実上「基地使用を認める」という話だ。日本自身が攻撃されたわけではないのに、韓国防衛で米国を支援する。これは大きな枠組みでみれば、集団的自衛権の行使容認そのものである。
だから日本は安保条約を改定した60年当時から、百歩譲って遅くとも72年から集団的自衛権を容認してきた。にもかかわらず、歴代政府も与野党もそんな現実に目をつぶって「外国(米国)の武力行使と一体化していれば集団的自衛権の行使になる」といった瑣末な議論に終始してきたのである。
いわば政府と与野党がそろって「虚構」の議論を重ねてきた。それはマスコミも同じだ。ところが、これから安倍政権が憲法解釈を変えて、具体的に自衛隊法はじめ法律の改正作業に入ると、何が起きるか。
国会で法案への賛否を問われた議員は与野党の立場に関係なく、自分自身の頭で日本の安全保障について考えざるをえなくなる。考えるだけでなく、法案への賛否を有権者に説明しなければならなくなる。そのとき「限定的な15の事例に限って認めた」とか「いや、2,3の事例で認めただけ」などという話が通用するか。有権者はバカではない。「安保条約と基地の関係はどうなっているんだ」とだれでも思いつくだろう。
中国の脅威がますます現実となる中、表面をとりつくろったような議論ではすまなくなるに違いない。これからは議員たちの構想力が試される局面である。そういう大きな構図の中で、野党再編も初めて意味のある試みになるのだ。
(文中敬称略)
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