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JA解体のウラにある安倍政権の汚い計算
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/150706
2014年6月5日 日刊ゲンダイ
「安倍首相が小泉化してきた」と、自民党中堅議員が言う。長期政権になりそうだということか。
「そうじゃなくて、小泉における郵政改革がそうだったように、叩きやすいところを“仮想敵”に仕立てあげて攻撃を集中して、改革をやっているように見せるという乱暴な手口。今回は農協(JA)が血祭りにあげられようとしている。1度目は悲劇、2度目は喜劇ということにならなければいいんですが」と心配顔だ。
政府の規制改革会議はすでに、農協法に基づくJA中央会制度を廃止して地域の農協活動を自由化し、また農産物販売などを担っている全農を株式会社化するなど、事実上、JAグループを解体するに等しい改革案をまとめていて、6月中旬にも正式答申を出す。それを受けて、安倍政権は6月下旬に発表する新たな「成長戦略」に取り込んで、農業委員会の改革や全国農業会議所制度の廃止、企業の農地所有を可能にする規制緩和などと合わせて、「農業改革」という大きな柱を立てることを予定している。
確かに、本来は農家の自発的な相互扶助的な運動体として始まった農協が、いつしか巨大組織となって農家の上にあぐらをかいて、カネ儲けに走っているとか、農業補助金を食い物にして既得権益化しているとかいった批判は根強い。しかし、だからといって当事者であるJAや現場の農家と膝を交えて、本当に日本の農業を強くする方策をじっくり話し合うこともせずに、頭ごなしに自由化・株式会社化というイデオロギーを押し付けて、一気に組織解体にまで持ち込もうとするのは粗暴きわまりなく、JAと農家、それに自民党はじめ各党農林族の激しい抵抗を呼び起こすことになるだろう。
安倍がこれほどコトを急ぐのは、すでに4月の日米首脳会談で牛肉・豚肉はじめ農産物の聖域5分野について関税自由化を進めることを、密約として振り出してしまっているからである。TPPの交渉はもつれていて、なかなか決着できそうにないが、それでも夏ごろまでには密約の内容が表沙汰になるのは避けられない。その前にJA解体を打ち出せば、JAは死ぬか生きるかの瀬戸際に追い込まれて、TPPどころではなくなる、という汚い計算である。その結果、日本人の生存基盤である食と農は、更地のようにキレイにされて米国に差し出されることになるが、果たして国民はそれを許すだろうか。
〈たかの・はじめ〉1944年生まれ。「インサイダー」「THEJOURNAL」などを主宰。「沖縄に海兵隊はいらない!」ほか著書多数。
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