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2014年05月30日
筆者が空売りに徹しているから、東証日経平均の堅調さにケチをつけているわけではない。最近の日米欧の株価が奇妙に堅調な動きをしている。無論、堅調といっても、わずかな上げ幅に過ぎないが、下がってはいない。日米欧のリアルな市民生活の中から、それらの国々が公表する素晴らしい経済数値の欠片を見出すことは困難だ。その現実離れした政府の経済数値に裏打ちされたように、総じて各国の株価は上昇基調にある。このコラムでは、公表された数値一つ一つに言及しても意味はないだろう。偽りが含まれる数値のどこがどのように奇妙か語る必要はない。現実の市民生活が概ね不調である事実だけで、それ以上の説明が必要と云うわけではない。
東証の6日営業日連続上げは、相場の堅調と云う印象を与えるに充分だが、どうも買い支え相場に見えて仕方がない。日経QUICKの言う通り、日経平均が75日移動平均(1万4538円、28日時点)を下回らなかったのを受け、この水準が当面の下値支持線として意識された。前日に突破した200日移動平均(1万4655円、同)も上回ると、売り方の買い戻しを巻き込んで上げに転じた。日経平均は44円高の1万4714円まで上げる場面 があった。たしかに、テクニック面からみれば、その通りなのだが、買い手口の主体にどのような資金が参加しているかがポイントだ。
おそらく、年金基金等の資金と提灯買いの個人資金が、相場を支えていると読むほうが自然だ。真実の相場を占い手段で正直なのが売買代金の総額だ。これが16日営業日連続で2兆円めどを下回っている点がポイントだ。少ない資金で、相場を操作できる期間に入っている状況に注意すべきだ。しかし、面白い現象を我々は目撃している。政府、日銀総動員体制でインフレを目指し、個別の企業は売り上げの落込みを回避しようと、必死で値下げやサービスの質の向上をめざし、デフレ方向に向かおうとしているのが、今の日本経済だ。政府日銀の意のままに政策の実効性が現れたら、4%程度のインフレは実現されるが、企業努力が、そのインフレ率を1.5%レベルに修正している現象が面白い。
国内政治に目を向ければ、安倍官邸や霞が関官僚の好き勝手な立法、行政が、躁状態で進んでいる。何もかもが欺瞞に満ちた内容で、一々取り上げていたら、こちらの頭が腐ってしまうので、捨て置くことにしている。維新が分裂しても騒ぐほどのことではない。公明党が集団的自衛権解釈で与党分裂しても、石原と渡辺で補充はきく。与党でなければならない公明党が、与党離脱出来るかどうか疑問だが、離脱しても当面の補充は可能だ。ただ、自民党圧勝の原動力が創価学会の組織力のお陰であった事を考えると、公明党の与党離脱は、自民党の政権崩壊をも意味しているだろう。
“ 日本維新の会 ”分党劇の功績があるとすれば、政界再編が起きる可能性が漸く見えてきたくらいのものだ。橋下を中心とする大阪維新の会と結いの党、太陽の党の松野ら一部が合体。見えているのはここまで。あとは、民主党の細野グループや前原グループなどが合流するかどうかと云うことが焦点となる。ここに、生活の党も加わると読むむきもあるようだ。これは小沢一郎にとって安易で具体的選択肢だと考えている。安易な選択である点は認めるが、果たして、その選択が正しいのかとなると、筆者は迷う。同じ同床異夢であるなら、連立政権に含みを持つ、別の野党連合を模索すべきだと思っている。
生活の党+鳩山元総理・細川元総理・小泉元総理、社民党、公明党の集合を目指し、若手政治家グループと一線を画す政党を創り、連立政権樹立の方向性を出す方が有権者に、「国民の生活が第一」のメッセージを発信できるのではないかと考えている。正直、小沢一郎の政治理念にも一工夫が必要な時代に差し掛かっているのは明白だ。現在の政治的言及だけでは、20代から40代の有権者に訴えかけるものが乏しい。米国一国主義への疑問と、中露との対話姿勢を加味していかないとアピール度は弱くなるし、成長経済からの脱却、痩せても枯れても誇りある国家、国民は存在できると云う時代感覚がほしいところだ。理念を肉付けする時代感覚が必要だ。
米国のご都合主義デモクラシーの行き詰まりと、中露印ブラジル等々の新興諸国の抬頭を的確に捉え、成長や福祉の充実など一見美味しい話ではなく、これからの100年、200年先の世界を語り、国民の自立への心根を育てるような、ありきたりではない政治家としてのメッセージがほしいところだ。これからは、具体的政治課題の話だけではなく、日本に欠如している、哲学的思考や仏教の考えなどを味付けに、心に滲みるようなメッセージを聞かせてほしい。それを実行するには、時間が限られてきたと云う論も多いが、細川元総理も立ち上がっている。まだまだ、日本のために小沢一郎に出来ることはある。
ただ、冒頭のアベノミクスの瓦解が確定的となるまで、野党再編の動きは鈍いものになるだろう。集団的自衛権解釈改憲はハチャメチャな話なのだが、国民の受け止め方は他人事の趣だ。自分たちが被害を受けるかどうかなんて、考えてもいない。このような国民に政治が訴えるのは実に難しいのだろう。糠に釘をどうやって打ち付けるのか、考えてみると不可能を可能にするショック療法が必要なのは明らかだ。致命的打撃は、さすがに拙いだろうが、余程のショックが訪れないと目覚めそうにない。原発が爆発しても、世論を二つか三つに分かれるだけで、大きな勢力に打撃を与えているとは思えない。平和と富と云うものは、本当に怖ろしい力を持っている。
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