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ASKA事件が暴く 安倍首相と派遣規制緩和の闇(上)
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/150569
2014年5月29日 日刊ゲンダイ
大阪本社にも接待施設(右は南部代表)/(C)日刊ゲンダイ
パソナ「接待パーティー」国会でも追及へ
一介の芸能人の覚醒剤事件で、よくもまあ、これだけ政財界の大物の名前が出てくるものだ。
27日覚醒剤使用で再逮捕されたASKA(本名・宮崎重明=56)とその“愛人”栩内香澄美(37)が知り合ったとされるのが、人材派遣最大手パソナグループの迎賓館である「仁風林」(東京都港区)だ。
栩内が“ホステス”を務めていたという仁風林では、同社の南部靖之代表(62)主催の交流会が毎週のように開かれ、政官財界、芸能界、スポーツ界の面々が入り浸っていた。日刊ゲンダイ既報の通り、田村憲久厚労相ら5人の現職閣僚も出席していたことがあり、騒動の火は政界にまで燃え広がっている。
28日午後の衆院厚労委員会では、民主党の大西健介議員が仁風林問題で田村厚労相を追及。大西議員は「安倍政権が派遣法改正を政策課題に掲げる中、所管の大臣が派遣業界の接待を受けていれば由々しき問題です。しかも、厚労省は麻薬取り締まりも所管しています。ASKA容疑者の事件についても、ぜひ大臣の考えを聞きたい」と意気込んでいた。
5人の現職閣僚以外にも仁風林の訪問者には、民主党の前原誠司元代表とその取り巻き、自民党の森喜朗元首相、中川秀直元官房長官の名前が挙がっている。
「芸能界でもASKAはもちろんのこと、俳優の津川雅彦、高橋英樹、南部代表の母校・関西大の先輩で落語家の桂文枝と、出入りしていたのは大物ばかり。南部さんの芸能人好きは有名で、雑誌などで対談した相手にすぐ、『遊びに来てください』と誘っていた。十数人いたホステスを仕切っている女性も京都の舞妓だった元女優です」(パソナ事情通)
■大阪のグループ本社ビルでも“大物接待”
そんな大物たちを接待していたのが、「カスミちゃん」と呼ばれていた栩内だった。その仕切りのウマさは定評だったという。
「大阪のパソナグループ本社ビル内にも『澪風林』というスタッフ専用のプライベートレストランがあり、そこでも地元の著名人を集めたパーティーが開かれているそうです。オリックスの宮内義彦会長ら大物財界人の名前を何人か聞いたことがあります」(在阪マスコミ関係者)
大阪といえば橋下維新だが、08年に橋下徹が府知事選に出馬した際、堺屋太一氏らとともに南部代表が応援団のひとりだったのは知られた話だ。
「南部が出た兵庫県立星陵高の1学年上には、『過労死は自己責任』発言で物議を醸した人材派遣会社『ザ・アール』の奥谷禮子社長がいる。70年代に『ベンチャー三銃士』と称されたソフトバンクの孫正義氏、エイチ・アイ・エスの澤田秀雄氏とも交流があるし、南部代表はとにかく人脈が広い」(経済ジャーナリスト・有森隆氏)
そして、南部代表とほとんど人脈が重なっている人物がいる。安倍晋三首相、その人だ。ASKAの覚醒剤事件は現職首相にまでつながるのだ。(つづく)
◇
ASKA事件が暴く 安倍首相と派遣規制緩和の闇(下)
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/150566
2014年5月29日 日刊ゲンダイ
接待パーティーにも参加/(C)日刊ゲンダイ
安倍首相は自民党が下野していた頃、「仁風林」のパーティーやパソナ主催のイベントにたびたび参加していたという。今週発売の複数の週刊誌が報じている。南部代表を「安倍のブレーン経済人」と書いたメディアもある。
安倍はASKAとも交友がある。第1次政権時代の06年には地球温暖化防止をテーマとするコンサートを鑑賞。ステージ上でASKAが日本を船にたとえ、「僕らは同じ船に乗っている。船長は安倍船長」と持ち上げると、安倍は立ち上がって親指を上げ、うれしそうに観客の拍手に応じていた。
第1次政権当時、安倍が力を注いだのは公務員制度改革で、その恩恵をパソナは享受した。安倍は役所による天下り斡旋の全廃を掲げ、国家公務員の再就職先を紹介していた「人材バンク」業務(総務省所管)を試験的に民間に委託することを決めた。
「具体的には総務省の『試行人材バンクにおける民間事業者による求人開拓等に係る共同検証』という事業で、07年3月に実施企業に選定されたのがパソナでした。天下り斡旋を全廃する代わりに、総務省の人材バンクから人材情報の提供を受けたパソナが、求人開拓など国家公務員の再就職を支援するスキームです。当時は受注1カ月前にパソナの特別顧問に就任した竹中平蔵氏の“威光”が働いた、と喧伝(けんでん)されたものです」(経済ジャーナリスト)
2年後の09年8月に竹中はパソナの取締役会長に就任。現在、安倍政権の有識者会議の一員として労働規制緩和の旗振り役を演じているのは周知の通りだ。
そして昨年夏、公務員改革を巡ってパソナは大きな果実を得た。
■パソナ 規制緩和で300億円巨額ビジネス
第1次安倍政権時代に成立した改正国家公務員法により、総務省の「人材バンク」は廃止となった。国家公務員の再就職の窓口は、内閣府に新設した「官民人材交流センター」に一本化された。そこで再び安倍が政権の座に就くと、昨年8月末の人材交流センター長の決定により、公務員の再就職支援業務が民間に開放されたのだ。
1カ月後に企画競争による随意契約で、再就職業務を独占受注したのが、パソナである。
人材交流センターの担当者は「昨年11月から45歳以上の職員を対象に早期退職募集制度が始まった。民間への開放はより透明性を確保するための措置。民間に業務を委託することで、国の再就職への関与は薄まる」と説明するが、パソナは業務委託によって今年度に1億2960万円の予算を手にするほか、大きなビジネスチャンスが転がり込む。
「国家公務員の数は現在、約63万人。早期退職が定着すれば転職希望の公務員は数万人規模まで膨らむ可能性があります。通常、転職が実現すると、それを仲介する人材派遣業者には転職先の企業から、転職者の年収の30%前後が報酬として支払われます。仮に年収1000万円の官僚が1万人転職に成功すれば、業者の取り分は約300億円。かなりの市場規模だし、独占受注ならなおさらです」(人材派遣業関係者)
パソナが公務員改革に伴う“利権”を手にするのは偶然なのか。安倍はなぜ、「雇用の流動化」の美名の下、派遣法の見直しや解雇規制の緩和など派遣業界が潤う政策にシャカリキなのか。ASKAの覚醒剤事件は思わぬところに波及しつつある。
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