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竹中平蔵:避けられない人口減少社会
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140529-00000000-fukkou-bus_all
nikkei BPnet 5月29日(木)8時13分配信
私は以前、安倍晋三首相に次のように申し上げたことがある。
「『3本の矢』は正しい政策です。しかし、3本の矢というのはあくまでも政策手段に過ぎません。大切なことは、どういう日本を目指すかということです。政策手段とは別に、ビジョンを示す必要があります」
■「大平研究会」の大胆なビジョン
このとき、私がモデルとしたのは大平正芳首相(任期:1978年12月〜80年6月)が立ち上げた政策研究会「大平研究会」だ。大平首相は9つの研究会を立ち上げ、「環太平洋連帯構想」「田園都市構想」といった大胆なビジョンを提示していった。これらのビジョンは現在までつながる壮大なものであった。
長期政権になりうる安倍政権だからこそ、大胆なビジョンを提示してもらいたい。そうした考えを安倍首相に伝えたところ、経済財政諮問会議に「選択する未来」委員会が設置され、今年1月から活動が始まっている。
この「選択する未来」委員会での議論と歩調を合わせるかたちで、5月8日、増田寛也元総務大臣が座長を務める民間の政策発信組織「日本創成会議」が、いわゆる“増田リスト”を公表した。これは、将来の人口推計からどういう国土が見えてくるかを示したものだ。
■2050年にかけてカナダに匹敵する人口が減少
“増田リスト”は、今後30年間で出産人口の95%を占める若年女性(20〜39歳)が半減し、人口が1万人を切る地方自治体を「消滅可能性都市」と呼んでいる。リストに示された「消滅可能性都市」は2040年に523の地方自治体に上り、全体の約29%を占めるとしている。
このリストが発表されて以来、さまざまな議論が起きているが、少なくとも明らかなのは、2050年にかけて日本の人口は3200万人以上減る可能性がきわめて高いということだ。これは現在のカナダの人口にほぼ匹敵する。
2030年の近い未来を考えても、秋田県や和歌山県などいくつかの県の人口は2割減少する。2割も減ってしまうと、現在の市町村を維持することは非常に難しくなる。すでにいくつもの限界集落が毎年消えているが、今後、人口減が進むなかで、より多くの集落が消滅する可能性が高い。
そのときに何をすべきかということを、前向きに議論しておく必要がある。そのためには二つの進め方があると思う。
一つは、人口減が進行しないように可能な限り人口を維持する政策を見つけること。二つめは、人口がある程度減ることを覚悟して、国土のあり方を考えることだ。
■40年間変えられなかった出生率のトレンド
人口減について必ずしも悲観的になることはないと私は考えているが、しかし、日本の人口を将来も1億人以上にとどめるのは、さすがに困難な道だと言わざるを得ない。
人口を現状維持するには、合計特殊出生率が約2.1なければならないとされる。日本は1970年代以降、その出生率をずっと下回り続けてきた。2012年に全国で16年ぶりに1.4台を回復したが、それでも1.41である。40年間変えられなかった出生率のトレンドを、これからわずかな期間で変えられるだろうか。
多くの先進国でも合計特殊出生率が2を超えたケースはほとんどない。人口というのは減っていくものだと考えた方がいいのかもしれない。
こうした人口減少社会へ対応する方法として移民の受け入れがある。ただ、日本では移民に対する拒絶反応がきわめて強く、大規模な移民受け入れで人口減を補うのは難しいと言えそうだ。
となると、日本は人口の減少という問題を将来にわたって受け止めざるを得ない。そのうえで本当にやるべき対策とは、どんなものだろうか。
■子育て支援策、新たな国土ビジョンが必要
まず、人口減少を受け止めるとは言え、子育て支援はしっかりとやっていかなければならない。たとえば子育てと仕事が両立できるような政策を進めていく。人口を1億人維持するという発想ではなく、あくまでも人々が豊かな生活を送れるようにするという観点から政策を実行していくべきだ。
さらに重要な対策は、人口減少を前提とした国土ビジョンを明確にすることである。これは国土政策の発想を全面的に転換することを意味する。
これまでの日本の国土政策には、そこに住んでいる人はずっと住める権利があり、住み続けられるような措置を国が講じなければならない、という暗黙の前提があった。集落がどれだけ小さくても電気が引かれなければならない。利用者がどれだけ少なくても道路は整備されなければならなかった。
しかし、2030年までに人口が2割減るようになると、すべての集落を維持することはできない。それはもちろん残念なことなのだが、現実にはその流れを押し止めることはできない。
これからの国土政策は、維持することが難しい限界集落に住んでいる人たちには都市部に移ってもらうという前提に立つべきだろう。そして、都市に移住するために補助金などを出していく。維持不可能な集落にインフラ予算をつぎ込むのではなく、人々の移動を促すための予算を付けるという発想の転換が必要なのである。
■「コンパクトシティ(集約都市)」に期待
維持できなくなった集落については、放置するのではなく、自然の回復と保護を行っていく。人々が集まってくる都市については、都市機能を拡充するために雇用機会を増やしたり、住宅整備のための補助金を用意したりする。
日本では国土政策について「国土の均衡ある発展」という言葉が浸透しているが、世界の他の国では「国民生活の均衡ある発展」という考え方をする。国土、すなわち“土地”にこだわっているのは日本特有の現象である。
ある説によれば、戦後、日本の国土政策を初めに考えた担当者は、満州国から引き上げてきた人たちだったという。 満州国では、入植を通して国境に人をはり付けることに意味があった。そこに住んでいる人を土地にはり付けるという発想が、戦後日本の国土政策にも反映されてしまっている。
小さな集落を無理矢理維持しようとするのではなく、思い切って集約していくという方向で、一日も早く政策を組み立てていくべきだ。これは「コンパクトシティ(集約都市)」という世界の潮流とも合致する。
実は、5月19日に開かれた経済財政諮問会議と産業競争力会議の合同会議で、太田昭宏国土交通相がコンパクトシティという言葉を使って国土ビジョンを作ると表明している。メディアはあまり報じなかったが、これは国土政策の大転換になる可能性がある。今後もこの流れに期待したい。
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