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30年間で人口が半減、若年女性が6割に減ると推定された四国のある町の光景 photo Getty Images
「消滅する市町村523」増田寛也論考が示す衝撃の人口減少予測。名指しされた自治体はどう対処すべきか?
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/39383
2014年05月28日(水) 山崎 元「ニュースの深層」 現代ビジネス
雑誌『中央公論』の6月号に載った「消滅する市町村523〜壊死する地方都市〜」という記事が話題になっている。東京大学客員教授で元総務相の増田寛也氏と日本創世会議・人口問題検討分科会の提言という形で掲載されている。
■若い女性の人口に着眼
本論考は出生の約95%を占める20歳〜39歳の女性人口に着目し、現状の出生率(合計特殊出生率は1.41)と社会的移動を前提とした場合に、2040年時点で人口が1万人を切る自治体が523自治体にのぼると試算していて、具体的な自治体名を掲載している。
個々の自治体に関して人口の推計がピッタリこの通りになるという保証はないが、人口の変動には相当程度慣性の法則が働く。現在の状況が続いた場合に、存続の意義がなくなる自治体が相当数発生することをこの記事の試算は赤裸々に示している。
データと論理の詳細に関しては前掲記事を見て頂くとしても、人口の維持・増加の直接的な担い手である20歳〜39歳の女性の人口動向に着目した将来予測には十分なリアリティと説得力がある。
人口の減少は今後相当の確度で起こるが、全国均一に起こる訳ではない。若者、特に若い女性をつなぎ止めることが出来ない地域は、人口が減少し、自治体が維持出来ないレベルに追い込まれていくのだ。
この予測は、当該地域の現在の住民や当該地域を故郷とする人々にとってショックだろうが、何よりも、当該地域の自治体に就職した人々にとって衝撃だろう。「将来とも安定した職場」だと思って就職した自治体が、徐々に寂れていって、自分が職を必要とする時期になくなるのである。自治体職員にしてこの有様なのだから、世の中は長期的には案外公平だとも思うが、「安定した職」というものはないものだという現実を認識せざるを得ない。
■東京一極集中を無理に止めるな
中央公論の前掲論文では、対策を二つの時期に分けて論じている。
先ず、2020年の東京五輪開催を挟む2015年から2025年の時期を第一期として、現在の国民の希望出生率とおぼしき合計特殊出生率=1.8を達成すると共に、東京一極集中に歯止めを掛けるとしている。そして、2025年から2034年の第二期には、人口の長期的な維持に必要な出生率=2.1を目指して、人口の安定を図るとしている。
論文は、首都圏の大地震のリスクを理由に、東京一極集中を止めることを提言しているが、これは、経済合理性を欠いているかも知れない。人口が密集する地域に人が集まるのは、そこに職があり、生活に便利であり、魅力的だからだ。
人の生活にもマーケットとしての経済圏にも様々なレベルで「規模の利益」が働き、人口の減少はこの逆効果を通じて非効率をもたらす。トータルとして人口が減るのであれば、各地域で平均的に人口を減らして、広く非効率を負担するよりも、人口が集積する地域に集まって暮らす方が効率的だ。
東京一極集中に歯止めを掛けるという考えに合理性はないのではないか。もちろん、将来起こる可能性がある首都圏の大地震に安全面の対策や行政機能のバックアップを準備する必要はあるが、「東京一極集中を止める」と考える必要はない。
一方、地方に於いて、人口が集まる地域を作ることはいいことだろう。人が一極集中する首都圏よりも地方の方が土地代は安いのだし、インターネットや物流の発達を考えると、東京でなくとも出来るビジネスは数多くあるはずだ。但し、この場合でも、人が集中して住む方が効率的な場合が多かろう。
例えば、北海道でいうなら、現存する全ての市を残そうなどといった非効率的且つ非現実的なことを考えるよりは、札幌市及びその周辺を快適にするように公的投資を行うべきだろう。札幌圏が経済的に強靱になれば、周囲の地域にもメリットが及ぶ。
もちろん、人の居住地の選択や自治体の盛衰は、個々の人や自治体に任せるべきであって、強制すべきものではない。但し、人口集積地域から過疎地への経済的支援を拡大して、いわば人口集積地の税金で過疎地の公務員を養うようなことはすべきでない。人口集積地での税金は、主としてその地域のメリット(安全対策などを含む)のために使われるべきだ。
■子供手当と外国人受け入れが合理的
中央公論の論考は、子供を産み育てやすくするための対策として、父親となる男性の育児参加や、育休完全取得、定時退社の促進などをあげているが、これらの措置に強制力を持たせようとすると、経済効率を損なって、かえって子供を産み育てることがしにくくなる可能性がある。
端的にいって、民主党政権時代に中途半端に導入されて官僚にぼろぼろにされて撤退した「こども手当」のような、子供の数に応じた金銭的な「手当」が最も有効でフェアであり、適切だろう。
これは、同時にこうした手当の支出が行政の肥大化につながる歯止めにもなる。子育て家庭に経済的な余裕が出来ると、父親が残業をしてまで稼ぐインセンティブが低下するから、結果的に男性の育児参加にもつながるだろう。
また、「日本人の子供」を本気で増やしたいなら、結婚せずに子育てできるような制度的な整備と社会的支援を大規模に行うべきだろう。婚外子を差別するような制度を「伝統」だとして残すことは、倫理的にも勘違いだし、少子化を後押ししている。家族のあり方は、国が強制すべきものではない。また、親が育てきれない子供を社会的に育てる方策を大規模且つ真剣に考えるべきだろう。
一方、同提言は、大規模な外国人の移民受け入れに対して懐疑的である。確かに、人口減少を相殺しきるほどの外国人移民を受け入れることは現実的ではないかも知れない。
しかし、個々の自治体について考えるなら、若い外国人にとって魅力的な環境を作って、外国人の受け入れで地域の活性化を図る方法が唯一の合理的な生き残り策になる場合があるのではないだろうか。
もちろん、首長や地方議員の理解だけでなく、地域住民の幅広い合意を形成する必要があろうが、自治体単位でも、また、最終的には国全体の単位で、外国人の受け入れを促進するのがいいのではないだろうか。
たとえば、英国は、人口分布に関しては長きに亘ってロンドン地域一極集中だし、外国人を幅広く受け入れつつ、往事の相対的な国力は無いものの、絶対レベルでの豊かさを保ちながら、長期的に粘り強く国民の生活レベルを維持してきた。
人口減少による全体的な国勢低下はやむを得ない。だが、我々も、個々の国民の生活レベルを合理的に守りながら、しぶとく賢く退却していきたいものだ。
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