03. 2014年5月27日 14:26:29
: nJF6kGWndY
ピケティは、フランスでは、どちらかと言えば新自由主義者なのが笑えるhttp://jp.wsj.com/news/articles/SB10001424052702304357604579585450142850362?google_editors_picks=true 【オピニオン】「21世紀の資本論」ピケティ氏は急進的なのか By PASCAL-EMMANUEL GOBRY 原文(英語) 2014 年 5 月 26 日 17:42 JST ピケティ氏 Ed Alcock/Eyevine/Redux フランスの経済学者、トマ・ピケティ氏の著書「Capital in the 21st Century(21世紀の資本論)」が米国で大論争を巻き起こしている。米経済学者のポール・クルーグマン氏はニューヨーク・レビュー・オブ・ブックス誌で同書を評して、「世襲財産の力の拡大を抑制」したいと願う人々への「召集」と書いた。保守派の論客はピケティ氏の「ソフトマルクス主義」(こう言ったのはアメリカン・エンタープライズ研究所のジェームズ・ペトクーカス氏だ)やタイトルであからさまにマルクスの「資本論」に触れていることにやきもきしている。 データが詰まった600ページを超える著作の中で、ピケティ氏は資産の収益率が長期的には経済全体の成長率より高いため、資本主義は不平等の悪循環を生むと主張している。ピケティ氏によると、不平等の拡大によって現代社会が新たな封建的な体制に変貌する恐れがあるという。彼は(所得にではなく)資産に対して世界的に税を課すことでこのシナリオを回避したいと考えている。 ピケティ氏は一体どれほど急進的なのだろうか。実のところ、それほどでもない。アクセントや博識、ボタンを首元までとめないシャツの着こなし、ふさふさした黒い髪。ピケティ氏はどこから見てもフランスの知識人そのものだが、フランスの知識人は誰もが急進的というわけではない。フランスにはまだ正真正銘、本物のマルクス主義者がいる。穏やかに話すピケティ氏をそれと間違えることはない。だからこそピケティ氏は米国にもたらしたほどの衝撃をフランス国内の世論に与えてはいないのだろう。 ピケティ氏はフランスでは名の通った知識人だ。左派系の日刊紙リベラシオンでコラムを執筆し、2007年のフランス大統領選では社会党のロワイヤル候補に最高経済顧問として仕えた。だが、彼の著作はパリではベストセラーにはならなかった。実は「Capital in the 21st Century」が記事に取り上げられるときは大抵、その内容ではなく、米国で予想外の成功を収めたことが話題になる。 これほど受け止め方が異なる理由は単純だ。人が議論し、本を買うのは論争があるからだ。資本主義が不平等の拡大を作り出し、社会秩序を根元からむしばむ、という考え方は米国内で議論の的になったが、フランスでは全く逆で、福音書なのである。まさに、預言者は自分の故郷では尊敬されないものだ。 ピケティ氏がフランスでそれほど影響力を持たないもう1つの理由はおそらく、彼が真剣な思想家であることだ。フランスは知識人を愛すると言われているが、フランスは知識人を愛することに陶酔していると言ったほうが正確かもしれない。実際、フランスの著名知識人は自分がほぼ何も知らないことについて意見を述べる軽量級ばかりだ。 フランスでは、多くの有名なエコノミストが本を売り、テレビの討論番組に出演している。そうした人たちの大多数に共通するのは、経済学の学位を持っていないことや、査読のある経済学の学術誌に論文を発表したことがないという点である。私自身もエコノミストではないが、フランスのニュース番組ではエコノミストと紹介された。ピケティ氏は学術的な研究を行う極めて優れた経済学者である。だが、フランスではそのことがエコノミストとしての信頼性を損ねている。 ピケティ氏の見解が米国では政治的に左寄りと受け止められているのに対して、フランスでは保守派として受け取られることもあることを考えると、米国とフランスの違いを思わずにいられない。彼は前回の社会党政権が採用した、世界的に悪名高き週35時間労働制に反対し、また給与税の削減も訴えた。基本的にピケティ氏は、政策論争に登場する人物として最もなじみのあるタイプといえる。つまり、市場原理に多くの長所を見いだしているものの、市場の行き過ぎを部分的にならすために政府による再配分を支持する、新自由主義の経済学者のままなのである。 パリの関係者の間では、ピケティ氏が社会党出身のオランド大統領を浅はかな日和見主義者だとして軽蔑していると言われている。ピケティ氏の元パートナーであるフェリペティ文化相と大統領が緊張関係にあると報じられており、そのせいでピケティ氏が大統領に敵意を抱いているといううわさもある。フランス社会党という複雑怪奇な世界では、人間関係とセックスは常に切り離せないようだ。 フランスに存在する少数だが尊敬すべき経済学者の中には、ピケティ氏の生い立ちを知れば、彼のことがよくわかるという人もいる。ピケティ氏は労働階級の家庭で育った。両親は急進的なトロツキー主義政党「労働者の闘争」で活動した。16歳で公立高校を卒業したピケティ氏は狭き門である高等教育機関「グランゼコール」の中でも最も入学が難しい高等師範学校の入学許可を得た。22歳で博士号を取得し、フランス経済学会から年間最優秀論文賞を受賞した。論文のテーマは富の再配分だった。 要するに、ピケティ氏はそれほど珍しい存在なのだ。フランスのエリート主義の純然たる産物であり、公立の学校を経て苦労してエリート校に進み、一流の官僚(ピケティ氏は国営のパリ経済学校の共同創設者で学長も務めた)になった労働者階級の子どもである。このモデルはフランスの戦後の復活を支えたが、今では破綻している。 おそらく、ピケティ氏はエリートの道を登りながら、周りの人々の両親や祖父母(多くの場合、祖父母の4代前の先祖も)が自分の家族よりもはるかに恵まれていたことに気づかずにはいられなかっただろう。だからこそ彼は、自身の左翼的な文化背景から学んだことと経済学のモデルや実証的な研究結果の中に発見したものを結びつける道に進んだ。 ピケティ氏には正しい点もあれば、誤っている点もある。だが、彼の世界観は急進的とは言えない。不平等に心を痛めていて、富の偏在という問題にこのまま手を付けなければ社会秩序が損なわれるかもしれないと懸念する右派の人間にも受け入れられるものだ。ピケティ氏の革命的と言われるアイデアをめぐって米国では不満が噴出したが、ピケティ氏の功績の中でいつまでも残るのはその保守的な洞察かもしれない。 (筆者のPASCAL-EMMANUEL GOBRY氏はパリを拠点に活動する作家で起業家) 関連記事 2014/05/13 10:59 am ET 日本でも格差は広がる―欧米で話題『21世紀の資本論』 トマ・ピケティ氏 By Yuka Hayashi
フランスの経済学者でパリ・スクール・オブ・エコノミクスの教授、トマ・ピケティ氏の新刊書『21世紀の資本論』(Capital in the Twenty-First Century)が欧米で話題を呼んでいる。700ページにわたるこの著作では格差の拡大が避けられないと結論づけられているが、日本もこの流れの例外ではないという。 日本は長年にわたって比較的平等な社会を誇っており、ピケティ教授の母国フランスとともに、米国と比べて貧富の格差がかなり小さかった。ただ、教授は向こう数十年にわたり、日本でも格差が広がると主張している。 こうした結論は、安倍晋三首相の政策議論に一石を投じそうだ。法人税率の引き下げや消費増税など、安倍首相の推進する成長戦略が格差拡大を後押しする可能性がある。 残念なことに、ピケティ教授の著作が日本語に翻訳されるまでしばらく時間がかかる。日本での版権を持つみすず書房は、翻訳者の手配が最近終わったばかりで、まだ日本語版の出版日程は決まっていないと話した。フランスの出版社Editions du Seuilによると、日本語版は2017年3月に出版されるという。 ピケティ教授の主張の核心は、21世紀には小さな経済エリート集団に富が集中するため貧富の格差が拡大するというもの。これについて、米国や欧州では経済学者やジャーナリストらの間で議論が沸騰している。 日本の読者のためにピケティ教授の著作から主なポイントを列挙してみよう。同書には19世紀までさかのぼった日本の税務書類などから集められたデータが含まれている。 格差は新しい問題ではない。欧州との文化的相違にかかわらず、日本では20世紀初頭に欧州と同じくらい高い水準の格差が存在していた。ここでは一握りの富裕層が国民所得の大部分を独占していた。教授は著作の中で「所得構造と所得格差の両面で、日本が欧州とまったく同じ“古い世界”だったことを、あらゆる証拠が示している」と指摘。二つの世界大戦を経て格差は急速に縮小したが、これは戦争がエリートの富の大部分を破壊してしまったからだ。 日本では富裕層がゆっくりと富を拡大させている。日本では過去20年間にわたってじわりと富の集中が進んできたが、米国ほどの大きさではなかった。現在、日本の高所得層の上位1%が占める国民所得シェアは約9%に上り、1980年代の7%から2ポイント拡大。フランスやドイツ、スウェーデンは日本とほぼ同じペースでシェアが拡大したが、米国ではこれが10-15ポイント上昇した。高所得層の上位0.1%が占める国民所得のシェアは今の日本では2.5%ほどで、1980年代初めの1.5%から拡大したが、またしても拡大ペースは米国に追いつかなかった。 今後は日本も安穏としていられない。ピケティ教授は、日本と欧州を取り巻く潮流を無視することはできないと警告。教授によると「それどころか(日本と欧州が持つ)軌道はいくつかの点で米国と似通っており、10年から20年遅れている」という。「この現象が、米国の懸念するマクロ経済面での重大事となって表面化するまで待つべきではない」と教授は指摘する。 ピケティ教授の著作を読んだ数少ない日本人の中に、経済学者でブロガーの池田信夫氏がいる。池田氏は人気の高い言論プラットフォーム「アゴラ」を運営。同氏は最近、5月7日から全4回にわたる『21世紀の資本論』読書セミナーの広告を掲載した。受講料は2万円(女性と学生は1万円)。定員は20名だったが早くも35人が登録して、現在は応募を締め切っている。 池田氏は「すごい勢いで申し込みがきたのでびっくりした。これはきわめてアカデミックで難しい本なのに」と話す。出席者の多数が30代から40代のビジネスマンだという。 池田氏は、企業がキャッシュをため込んで賃上げを抑制していることを理由の一つに挙げ、ピケティ教授の著作が次第に日本との関連性を増してくると指摘。「もしかしたらこれから日本でも、普通の労働者と企業との間で階層間の格差が広がってくるかもしれない。ピケティは日本でも受けると思う」と話した。 原文(英語): Piketty on Japan: Wealth Gap Likely to Rise http://blogs.wsj.com/japanrealtime/2014/05/13/piketty-on-japan-wealth-gap-likely-to-rise/ トマ・ピケティ, 賃上げ, 安倍晋三首相, 格差拡大 |