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「大飯」勝訴でも不安…上級審では国側が勝つこの国の裁判
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2014年5月24日 日刊ゲンダイ
地裁判決はアリバイ作りか/(C)日刊ゲンダイ
本当に原発は止まるのか。
関西電力大飯原発の再稼働差し止めを求めた民事訴訟が住民側の勝訴となったことで、反原発派は勢いづいているが、関電は翌日控訴。菅官房長官も安全な原発を再稼働させる政府方針は「全く変わらない」と言い切った。今度の判決は「(耐震性に問題がある原発は)生命を守り生活を維持する人格権の根底を具体的に侵害する恐れがある」(樋口英明裁判長)とし、原発から半径250キロ圏内の住民の人格権を認めた画期的判決といわれる。
原告弁護団事務局長の笠原一浩弁護士は「原発のように科学的見解に複数の知見が存在するテーマだからこそ、万一の事故もあってはならないという、最高裁の判断も踏まえた判決だと理解しています」と言い、控訴審に自信を示したが、不安がよぎる。過去を振り返れば、この国では「司法の独立」なんて絵に描いたモチで、住民側が苦汁をなめる判決が多いからだ。
米軍基地に立ち入った学生7人が安保条約に伴う刑事特別法違反に問われた砂川事件(1957年)は、1審は米軍駐留そのものが違憲だとして全員無罪となったが、米政府などから圧力を加えられた最高裁では国が逆転勝訴した。
1票の格差訴訟でもそうだ。高裁判決は「違憲」「無効」の判断が相次いだのに、2013年11月の最高裁判決は玉虫色の「違憲状態」に後退した。
原発がらみでは、高速増殖炉「もんじゅ」の設置許可を取り消した2003年の名古屋高裁金沢支部判決と、北陸電力敦賀原発の運転を差し止めた06年の金沢地裁判決がある。住民側は喜んだが、いずれも最高裁で住民側敗訴が確定した。結局、下級審は国民のガス抜きの場に過ぎなかった。
■ピラミッド組織
明大教授の西川伸一氏(政治学)はこう指摘する。
「司法の世界は厳然たるピラミッド組織です。高裁の裁判長は地裁や家裁の裁判長を経て出世するポジションなので、下級審に対しては上から目線になりがち。高裁の裁判長はもっと上の最高裁を目指すので、保守的、行政サイド寄りになる傾向は否めません。大飯原発の控訴審は名古屋高裁で争われることになりますが、高裁でひっくり返されてしまう嫌な予感がします。それでは最高裁はどうかというと、裁判官15人のうち裁判長経験者は6人しかいない。9人は元官僚などだし、長官も法務官僚の経験が長かった。高裁の判決を維持する傾向が見えます。『画期的な判決』にヌカ喜びは禁物です」
同じように画期的といわれる厚木基地の夜間・早朝飛行を差し止めた判決も話題になったが、こちらはアリバイ作りの色が濃い。判決は毎日午後10時から翌朝6時まで自衛隊機の飛行差し止めを命じたが、そもそも海難救助などの緊急時以外、自衛隊は夜間・早朝の飛行を自主規制している。原告住民が求めた米軍機の差し止めについては、「国の支配の及ばない第三者の行為」として退けた。
憲法学者の奥平康弘氏はかつて東京新聞で「明治以来、司法の立場は弱い。行政の裁量処分でも、乱用がないかくらいしかいえない」と解説していた。やすやすと変われるはずがないのだ。
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