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閣僚会見でヒマネタを質問する”おバカ記者” 田中投手初黒星への官房長官の感想を記事にした朝日新聞
水島宏明 | 法政大学教授・元日本テレビ「NNNドキュメント」ディレクター
http://bylines.news.yahoo.co.jp/mizushimahiroaki/20140522-00035562/
朝日新聞の記事(デジタル版)を昨日(5月21日)の夕方、読んで、思わずのけぞってしまった。
ヤンキースの田中投手が初黒星で連勝ストップ。それについて菅義偉官房長官が語った感想が「記事」になっているのだ。
田中投手の連勝ストップ「これからに期待」 菅官房長官(朝日新聞)
2014年5月21日19時14分 ■菅義偉官房長官 (大リーグ・ヤンキースの田中将大投手のレギュラーシーズン日米通算連勝記録が止まったことについて)私も実は気になっていた。34の連勝がストップしたことは大変残念だ。しかし、大リーグでも6連勝し、これだけ話題になるということは、実力が大リーグでもしっかりと認知された結果だろう。ある意味でこれからが正念場。きっと期待通り、粘り強い活躍をしてくれるだろうと期待している。(記者会見で)
出典:朝日新聞デジタル
このニュースを伝えたのは、朝日新聞だけではない。
時事通信も配信している。
田中投手の連勝ストップ「残念」=菅官房長官(時事通信)
菅義偉官房長官は21日午後の記者会見で、米大リーグ、ヤンキースの田中将大投手のレギュラーシーズンの日米通算連勝記録が34でストップしたことについて、「大変残念」と述べた。その上で、「話題になるということは田中選手そのものの実力が大リーグでもしっかり認知された結果だ」と指摘。「これから粘り強い、期待通りの活躍をしてくれるだろうと期待している」とエールを送った。 (2014/05/21-17
出典:時事ドットコム
ちなみに昨日(5月21日)は、福島第一原発の事故の後で、原発の稼働をめぐる「初めての判決」があった日だ。
再稼働のぜひが問われている関西電力大飯原発について、裁判所は運転を認めなかった。
国の原発政策にも根本的な影響を与えかねない重大局面だ。
他にもこの日は、厚木の基地訴訟でも自衛隊機の夜間飛行差し止めを国に命じる判決があった。
つまり、現在の政府の方針に司法の「NO!」が相次いだ一日だった。
そのさなかに行われた菅官房長官の記者会見。
この日に記者会見を行った政府首脳の中のトップである官房長官(政権ナンバー2)の菅氏には記者たちが聞くべき、たくさんの内容があったはずだ。
合意発表が近づいている感触のTPP問題もある。
そんなに時間が余ったのだろうか?
それとも野球好き(?)の菅さんにヨイショしようという、意図がある質問だったのだろうか?
私は菅氏が野球好きなのか、ヤンキースの田中投手のファンなのかどうかは知らない。
はっきりしていることは、冒頭の朝日新聞や時事通信の記事は、記者会見場にいた誰かが質問したから官房長官が答えたものだ。
答えた官房長官に罪はない。
だが、質問したのは誰だ? 重大な局面なのに政権ナンバー2に、そんなノンビリした質問をした記者は?
誰でも答えられるような回答をしてもらいたいならば、夜の新橋で酔っているおじさんたちに片っ端から訊いてみれば済むことだ。
事実、官房長官の答えも、いきなりつかまえた酔っ払いのおじさんが答えたものと中身に変わりはない。
もし、質問したのが朝日新聞の記者ならば、私は今後、同社に対する見方を改めなければならない。
また、それを載せたのはなぜなのか。そこはクォリティーペーパーの責任として明らかにしてもらいたい。
朝日新聞だけではない。
このところ、記者たちが「ヒマネタ」を閣僚たちに記者会見の場で聞く、という行為が平然と行われている。
「ヒマネタ」というのはマスコミの業界用語だが、芸能人ネタ、スポーツや話題など、どちらかというとニュースの本質ではなく、番組枠や新聞紙面の余ったところを埋めるためのニュースを指す。つまり、どうでもよい話題だ。
そんなヒマネタを政府がマスコミの記者向けに実施している記者会見の限られた時間で各社を代表する記者たちが聞いている。
閣僚の記者会見は、それぞれの記者たちが「国民に成り代わって質問をぶつける」という絶好の機会だ。
総理官邸で行われる首相や官房長官の記者会見は、原則として予め登録されている各メディアの政治部(たまに社会部もいるが)の記者しかその場で質問することはできない。
政治部の記者が、国民を代弁して聞きたいのは「田中投手の連勝ストップへの感想」なのだろうか。
もっとも優秀な人材が集まるはずの朝日新聞の政治部の記者も、これは大事だと感じるのだろうか?
閣僚の記者会見で政治部の記者たちが「ヒマネタ」をぶつけるのは、今回が初めてではない。
今、話題になっている漫画「美味しんぼ」の鼻血などの記述について、環境大臣らの記者会見で「質問」して、あえて火をつけてあおっているようなのは、こうした記者たちだ。
彼らはSTAP細胞でも佐村河内でも「明日ママ」でも、今マスコミで話題になっている問題が少しでもその大臣の管轄と関連があると見るやいなや質問していく。
閣僚たち(政治家)はヒマネタを質問されれば、言葉の選び方が難しいデリケート問題である場合は少ないので、嬉々として答える。
記者たちはその回答を記事にする。
それに対して、地元などが反応する。
こうして、「問題」が盛り上がっていく。
官房長官の会見だけでも「総理公邸に幽霊が出るかどうかの質問」など、よくよく注目すると、ヒマネタは多い。
菅官房長官も代表にエール「夢と感動与えて」
2014.5.12 17菅義偉官房長官は12日の記者会見で、サッカーのワールドカップ(W杯)ブラジル大会の日本代表登録23選手が発表されたことに関し「チームの一員としてベストの力を発揮して、日本中に夢と感動を与えてほしい」と期待を寄せた。 同時に「W杯のピッチに立つことはサッカーを愛する人たちにとって大きな夢だ。選ばれた選手に心からおめでとうと申し上げたい」と祝意を述べた。(共同)
出典:サンスポ・コム
「官房長官はテレビのコメンテーターかよ」
と思ってしまう。
テレビのコメンテーターは、そこに出続けることが一種の人気商売であり、そのことそのものに彼らにとっての価値がある。
政治家にヒマネタをコメントさせることは、彼らの露出機会を増やし、彼らの人気獲得に手を貸す、ということだ。
ということは、一連の質問は記者たちの官房長官へのヨイショなのか。一種の愛情なのか。
いずれにしても、こういうニュースが日々流されてしまうのは、最近の若い記者たちが自分の判断に自信を喪失しているからだろう。
政府要人が何と言っているのか、聞いてみたい、と思わず特に自覚もなく質問するのだろう。
それから記者会見で質問するという行為が、国民を代弁する貴重な役割だという緊張感もなくなっているのだろう。
政治の劣化、メディアの劣化、国民の劣化と言われるが、今の「みんながあまり深く物事を考えない社会」を作っている責任の一端はメディアにある。
朝日新聞を始めとして、メディアは、もうこういう「おバカな質問」を記者にさせたり、それを記事として載せたりするのはもうやめませんか?
そうでなければ、次回の官房長官の記者会見で必ずこんな質問が出ると、私は予言しておきたい。
「ASKA容疑者が逮捕されましたが、蔓延する麻薬の問題に政府としてどう取り組んでいくのでしょうか?」
ま、麻薬政策も、広い意味で国の政策の中なので、まったくのヒマネタとは言えない体裁の質問だけど。
過去にはこんな記事もある。
芸能界薬物汚染、河村官房長官が根絶明言
2009年8月9日 押尾学容疑者の逮捕に続き、酒井法子容疑者(38=本名・高相法子)も逮捕され、芸能界が薬物に汚染されている現状があぶり出された。80年代は事件化されるのは1〜2件程度だったが、ここ数年5〜8件に増加している。 警察庁によると、国内の薬物犯罪の摘発は大麻が増加傾向にある一方、覚せい剤は減っている。覚せい剤の摘発人数は過去最多だった84年(約2万4000人)に比べ、昨年は半数以下となる約1万1000人。だが、芸能界に限っては、覚せい剤、大麻、合成麻薬MDMAなど薬物汚染は後を絶たない。 薬物事情に詳しい関係者によると、最近は芸能関係者も多く利用する都内のクラブのVIPルームなどで簡単に入手できる状態になっているという。酒井容疑者も高相容疑者と東京・港区内のクラブでハイテンションで騒ぐ姿が目撃されている。さらに、国内における覚せい剤は“品薄”状態で、取引価格は年々上昇。売れっ子となれば、若いうちからけた違いの収入を得る芸能人が、販売元となる暴力団などのターゲットになりやすいという。 そんな状況に、河村建夫官房長官(66)は、政府が麻薬・覚せい剤撲滅に全力を挙げる姿勢を強調した。「芸能界での薬物まん延がかねて指摘されており、それが明るみに出つつあるということ。徹底的に洗って根を絶つことが必要だ」と述べた。警察庁幹部も「芸能人の薬物汚染は社会的な影響も大きく、厳しい姿勢で臨まなくてはならない」と語っている。 酒井容疑者が目撃されたこのクラブは、ほかにも多くの芸能人が通っているとされている。捜査関係者からは、薬物使用が疑われる芸能人の名前が複数挙がることもあり、押尾容疑者や酒井容疑者の供述によって、芸能界に“激震”が起こる可能性もありそうだ。
出典:アサヒ・コム
確かに官房長官がなんらか形でかかわる守備範囲は広い。首相と同じように政策全般だ。
だからと言って何でもかんでも質問するのか。
その分、集団的自衛権や特定秘密保護法などの問題についての質問や回答の時間が削られていく。
そっちはちゃんと記事にしているのか。
そう突っ込みたくもなる。
一連の質問を見ると、
「官房長官は学校の先生かよ」
とも思ってしまう。
私のように大学の教員をやっていると、「先生」に細かいことを質問してくる小心者の学生が少なくない。
「今日は用事があるのですが、絶対にゼミに出席した方が良いでしょうか?」とか。
「昨日送ったレポートで、学生番号を間違って記入しませんでした。問題ないでしょうか?」とか。
「いわゆるブラック企業問題で就活を悩んでいるんですが、どうすればいいか分かりません。先生の意見を聞かせてください」とか。
自分の頭で考えられず、すぐに他人の意見を聞かないと気が済まない自信喪失人間が増えている。
社会でそうした人間が増えているのは時代の流れかもしれない。
でも「記者」という仕事であるならば、それでは困る。本当に困る。
「田中投手の連敗ストップをどう思いますか?」
そんな質問を官房長官にぶつける記者が自分と同じ組織にいたら、私ならば、即刻、取材の現場からは退場してもらいたいけれど。
[Yahoo!ニュース 2014/05/22]
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