http://www.asyura2.com/14/senkyo165/msg/733.html
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「配偶者控除」の見直しについては、思わせぶりだけが先行し、具体的にどうするつもりなのか安倍内閣・与党・財務省の意向がなかなか見えてこない。
転載するNHKの記事は、自民党の「提言案では、女性の活躍は経済の再生に不可欠だとして、女性の就労意欲を抑制しているという指摘もある所得税を軽減する「配偶者控除」について、夫が妻を扶養している世帯の場合、妻の給与収入にかかわらず、夫婦で受けられる控除額を同じにするなど、仕組みの見直しを求めています」と報じているが、それだけでは具体的にどうするつもりなのかわからないはずだ。
自民党は、昨年7月の参議院選挙で「配偶者控除の維持」を公約の一つとして掲げており、配偶者控除のストレートな廃止には動きにくい。
夫婦が揃ってばりばり働きいずれもが扶養対象となっていない世帯が「配偶者控除」制度に抱く不公平感は理解できるが、「配偶者控除」制度に“女性の就労意欲を抑制しているという指摘もある”といったところで、就労意欲抑制の原因が、配偶者控除そのものにあるのか、はたまた、配偶者控除適用条件の厳しさにあるのか明確にされていない。
より多く稼いでもこれまでと同等の「配偶者控除」の適用や非課税措置が受けられるのならもっと働くというひともいれば、「配偶者控除」をなくなるのは増税だから嫌だが、そうなったら家計のために否応なくもっと働くしかないというひともいるだろう。
家事や子育ての負担が女性に傾いている現実はともかく、問題は、純粋に働きたいという思いだけではなく、主たる稼ぎ手の収入が減少しているなかで家計を支えるために大変だけど働かなければならないという人が多いという現実である。
政府やメディアは、98年を境に、共稼ぎ世帯が専業主婦世帯を上回るようになったことを「配偶者控除」見直しの根拠にしているが、そうなった主たる原因は、97年の消費税増税を機にデフレ不況に陥り給与水準が引き下げられたことにある。
扶養対象者の給与所得については、「103万円の壁」(給与所得に対する課税開始と配偶者控除の適用除外)、「130万円の壁」(第3号被保険者から社会保険の自立的被保険者への転換)、「141万円の壁」(配偶者特別控除の最終的な適用除外)があると言われている。
徐々に減額される配偶者特別控除に関わる「141万円の壁」は低いが、世帯の可処分所得の増減と言う視点で考えると、「103万円の壁」と「130万円の壁」は実に高いものがある。
「103万円の壁」は、超えた額に5%の所得税が課されるのも痛いが、より高い税率が課されるケースが多い扶養主の所得控除がなくなることがより痛い。仮に扶養主の所得税が15%の税率であれば、控除額38万円×15%で5万7千円も可処分所得が少なくなる。(控除額の減少で適用される所得税税率が一段階高くなる可能性もある)
さらに、伝統的大企業が採用している例が多い扶養家族手当の支給基準も103万円を採用していることが多い。仮に、扶養配偶者手当が月1万5千円だとすれば、年間18万円の減収になる(所得税や社会保険料がその分減るが、15万円近い可処分所得の減少にはなるだろう)
「130万円の壁」も、社会保険料を年間24万円ほど負担しなければならなくなるので、130万円ぎりぎりのときと同じ世帯可処分所得にしたいのなら、働く時間を長くして給与総額を158万円に達するほど多くしなければならない。
社会保険については、雇用者と被雇用者の折半なので「130万円の壁」を超えると企業の負担増にもつながる。企業と被雇用者がともに忌避したいのが「130万円の壁」なのである。
(社会保険の自立的保険者になる給与額の基準は16年度から106万円になる予定)
このような“壁”を考えると、女性(扶養配偶者)の就労意欲を高める配偶者控除制度の見直しがどれほどの難題であるかわかるはずだ。
パートの場合時給が千円未満という就労条件が多いから、それまでと同額の世帯可処分所得額にするため「130万円の壁」を乗り越えて158万円の給与総額にしようと思ったら、時給千円でも年間280時間(月23時間:一日約1時間)も多く働かなければならない。子育てや家事を考えるとけっこう過酷な超過労働を強いられると言えるだろう。
このように、所得税ではなく社会保険制度がかかわる「130万円の壁」もあることから、配偶者控除をなくしたからといって就労時間が大きく増加するとは考えにくい。
たんなる「配偶者控除の廃止」は、結局のところ、家計所得を補うための就労から得られる最終可処分所得を減らす増税という側面だけが際立つ悲劇となって終わるだろう。
このように「配偶者控除」問題をざっと考えると、「配偶者控除」という制度に無理があることがわかる。
夫婦共稼ぎが少数派だった導入当時は世帯を持つ給与所得者に対する特殊な減税ということで歓迎されたが、是非はともかく生活スタイルの変化から現状ではちぐはぐな減税制度になっている。
配偶者控除は所得控除なので控除される税額は「38万円×適用所得税率」となり、世帯の主たる稼ぎ手の所得が多いほど減税額が多くなる。
夫婦間に所得差がそれほどなければ、「38万円×5%=1万9千円」しか減税にならない一方、一方が高額所得者であれば、「38万円×25%=9万5千円」の減税になる。
このようなちぐはぐを解消する手段としては、
1)主たる稼ぎ手の所得額に応じて配偶者控除の適用内容を変える
2)世帯単位で課税最低限の所得額を設定する
3)配偶者控除に変えて給付付き税額控除を新設する
が、考えられる。
1)主たる稼ぎ手の所得額に応じて配偶者控除の適用内容を変える
たとえば、主たる稼ぎ手の所得額が800万円を超えたら配偶者控除の額を少しずつ減少させ、1千万円を超えたら配偶者控除をゼロにするといった見直しである。
2)世帯単位で課税最低限の所得額を設定する
源泉徴収制度なので配偶者の所得を勤務先にさらす問題もあるから課税そのものは個人別で行うが、世帯単位の課税最低限所得を360万円とし、夫婦の所得合計が最低所得額を下回った場合、確定申告を行うことで源泉徴収された主たる稼ぎ手の税金が還付されるといったものである。
※ 政府やメディアは、間違っているデタラメな説明だが、消費税制度について最終消費者が負担するとしつこく言っているのだから、消費税増税に見合うかたちで所得税を減税をしていくのは当然だとも言える(笑。
3)配偶者控除に変えて給付付き税額控除を新設する
これは、2)の拡充ともいえる見直しである。所得税の課税最低限に達しないため所得税を納めていない世帯について、確定申告に基づき、課税最低限に達するようマイナスの税金を支給する。
これは、低所得のため生活保護基準との差額について受給資格がありながら申請せず、生活保護受給者未満の生活で苦しんでいる低所得者の救済にもつながる。
むろん、確定申告ができない身体的条件の人もいるので、生活保護制度も継続される。
個人的には、2)から始めて3)に移行するのが望ましいと思っている。
※ 参照投稿
「首相、配偶者控除見直し指示 女性就労拡大めざす:肝心な控除拡大なのか控除縮小(廃止)なのかが不明」
http://www.asyura2.com/14/senkyo163/msg/133.html
「安倍政権は、“共稼ぎ”世帯の「配偶者控除」を縮小ないし廃止するとは言っていない」
http://www.asyura2.com/14/senkyo164/msg/743.html
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自民 配偶者控除の見直しなど提言へ
5月21日 4時16分
自民党は、政府の新たな成長戦略に党の意見を反映させようと提言案をまとめ、女性の就労意欲を抑制しているという指摘もある、所得税を軽減する「配偶者控除」の見直しなどを求めています。
提言案では、女性の活躍は経済の再生に不可欠だとして、女性の就労意欲を抑制しているという指摘もある所得税を軽減する「配偶者控除」について、夫が妻を扶養している世帯の場合、妻の給与収入にかかわらず、夫婦で受けられる控除額を同じにするなど、仕組みの見直しを求めています。
また、公的年金の積立金を運用しているGPIF=年金積立金管理運用独立行政法人が、より機動的な運用ができるようにすべきだとして、体制を見直すため、法改正の必要性も含めた検討を求めています。
さらに、金融市場の活性化のため、株式に加えて金や穀物などの商品も売買できる「総合取引所」を速やかに実現すべきだとしています。
自民党はこうした内容を、政府が来月をめどに取りまとめる新たな成長戦略に反映させたいとして、近く提言することにしています。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140521/k10014598041000.html
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