04. 2014年5月20日 10:27:21
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〖IWJブログ〗「真犯人メールは片山氏の自作自演」を断定する検察とメディア 〜いまだ全容不明の「真犯人像」、複数犯の可能性も!? 特集 PC遠隔操作事件 ※20日午前9時53分、NHKが速報で「遠隔操作事件 片山被告『私が真犯人』と認める」との見出しで、片山祐輔被告から19日夜に弁護団へ連絡があり、関係者によると、片山被告は「私が真犯人だ」と認め、「真犯人」を名乗るメールを自分が送ったと話したという内容を伝えている。 「あ。真犯人です。お久しぶりですね^^」――。 5月16日金曜日午前11時37分、不敵な挨拶で始まる一通のメールが、落合洋司弁護士をはじめマスコミ関係者など複数の識者の下に届いた。「小保方銃蔵」を名乗るメールの差出人は、自身がPC遠隔事件の「真犯人」であり、片山祐輔被告は「無実」であることを示唆した。 メールを送付された落合洋司弁護士が、メールのほぼ全文を自身のサイトにアップしたことで、「真犯人」を名乗る人物からのメールの内容を、誰もが閲覧できるようになったのは16日の14時34分のことだ。 〖落合弁護士ブログ〗http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20140516#1400218482 「片山氏が報道ステーションやレイバーネットに出てるのを見てかわいそうになったから」と語る自称「真犯人」は、メール文中で片山被告のPCに遠隔操作ウィルスを感染させた手口や、片山氏を犯人に仕立て上げた理由、片山被告の犯人性を高める工夫などを、詳細に説明。そして「雲取山ビニール袋の正体」や「ネコのセロテープから検出されたDNA」について、さらに「秘密の暴露」と称し、2012年に首相官邸と部落解放同盟に送った脅迫メールの内容など、「真犯人しか知り得ない未公開情報」を記載していた。
□「これをもって、この裁判を終わりにしてほしい」片山被告が身の潔白を訴え 同日、17時30分から、司法記者クラブで記者会見を行った片山被告は、メール送信時刻の自身のアリバイを説明し、自称「真犯人」が自分の自作自演ではないことを訴えた。 「真犯人」を名乗る人物からメールが送信された16日午前11時37分、片山被告は第8回公判の真っ最中であり、法廷内にいたのである。 さらに現在使用しているPCは、弁護人の管理下にある、自作や改造を施していない1台のノートPCだけであることを説明。さらにその中には通信を記録する「パケット警察」を入れており、パスワードは特別弁護人の野間英樹氏が管理していて、片山被告自身では解除できないようになっていることも明かし、身の潔白を訴えた。 (※)通信記録やソフトウェアの起動記録を監視するソフト 会見に同席した佐藤博史弁護士は、「真犯人」を名乗る人物からのメールが弁護団も知らなかった情報を含んでいることを明かし、「秘密の暴露」と称する内容については、「これが秘密の暴露にあたるかどうか、捜査当局は十分わかるはず」と語った。 佐藤弁護士は、「先の4人の誤認逮捕事件と同様、この件についても公訴の取り消しをすべきだ」とし、週明けの19日月曜日正午、検察に対し「公訴取り下げ」の書面を提出し、その後記者会見を行うことを発表した。 ※この16日金曜日17時30分からの記者会見の模様は、IWJのサイトで読むことができる。動画全編も会員向けにいったんは格納したが、事件が急展開をみせている今、公共性を考慮し、再度フルオープンで公開することにした。→ http://iwj.co.jp/wj/open/archives/140127 □「真犯人」は片山被告自身だった!? マスコミが一斉にリーク報道 週末が静かに過ぎて、明けた19日月曜日。「真犯人」を名乗る人物からのメールで、裁判の行方は、被告側に圧倒的に有利に傾いたと思われた矢先、事態は急転した。 「『真犯人』のメール、片山被告が自ら送信か」 19日午前、大手メディアに一斉に同じ見出しが躍った。記事はどれも横並びで同じ内容を報じている。情報の出どころは「捜査関係者によると」となっており、このPC遠隔操作事件において、これまで再三にわたって行われてきたいわゆる「リーク報道」である。情報の出処が警察か検察であることは間違いない。 記事の内容はこうだ。「捜査関係者によると」、メールが届いた16日より前に、「片山被告が東京都内の河川敷で不審な行動をしているのを警視庁の捜査員が目撃」、後に捜査員がその場所を掘り返したところ、「片山被告がいた場所にスマートフォンが埋められているのが見つかった」というもの。 さらに、「このスマートフォンを解析したところ、真犯人を名乗るメールのアドレスの痕跡があった」という。そしていずれの記事も「タイマー機能を使うなどして、片山被告が自身の公判中に送信されるようにし、真犯人を装うメールを送ったとみられている」と捜査当局の見立てを解説し、「東京地検は東京地裁への保釈取り消し請求を検討するとみられる」と、結んでいた。東京地検の「逆転への意志」の事実上の代弁だった。 ・「真犯人」メール 元会社員自身が送信か(NHK) ・「真犯人」メール、片山被告が自ら送信か(日本テレビ) ・河川敷から携帯 メール送信の痕跡(NHK) ・遠隔操作「真犯人」名乗るメール 片山被告が送信か(テレビ朝日) ・真犯人メール、片山被告本人か 保釈中に不審な行動、タイマー機能で偽装の疑い(産経新聞) ・「真犯人」メール、被告がタイマー使い送信か 遠隔操作事件(日経新聞) ・警視庁、携帯を発見 片山被告が送信の見方(東京新聞) ・PC遠隔操作「真犯人」メール、被告自身送信か(読売新聞) □「片山氏にこのメールを書く理由はない」佐藤弁護士が片山氏の無実を訴え この大手メディアの一斉報道を受けて、19日午後2時、佐藤弁護士は当初午後3時か3時半から予定していた記者会見を、約1時間繰り上げて開いた。この会見の場に片山被告の姿はなく、佐藤弁護士によれば、午前10時22分に電話で連絡を取ったのを最後に、連絡が取れなくなっているという。 ・2014/05/19 PC遠隔操作事件で急展開 片山祐輔被告と連絡取れず 佐藤博史弁護士「彼が無実なのは確か」 佐藤弁護士は会見で、「真犯人」を名乗るメールの送り主が片山被告ではないことを繰り返し強調し、「なぜ片山さんが河川敷の土の中にスマホを埋めなきゃいけないのか理解できない。荒唐無稽な話だ。江ノ島の猫の件よりも出来が悪いエピソードじゃないかと思う」と訴えた。 さらに、佐藤弁護士と片山被告は、こうした「真犯人からのコンタクト」に備え、PCやスマートフォンを提出する準備をしていたにも関わらず、「土日に警察からの問い合わせはなかった」と述べた。 そして、「片山さんに、今の時期にこんなメールを書く理由がありませんよ。裁判が不利に展開しているなら別ですよ。このタイミングでこんな大げさなことになることはあり得ません」と、裁判が片山被告側に有利に展開していることを根拠として、あえて危険を冒してまで「真犯人」を名乗るメールを送る合理的な動機が見当たらないと、重ねて、片山被告の無実を訴えた。 事態が二転したところで、さらに三転する報せが飛び込んできたのは、この記者会見後の囲み取材の最中だった。先週末に謎のメールを受け取った落合洋司弁護士が、差出人不明のレターパックを受け取ったことをTwitterで公表したのだ。あて名は「泉岳寺前法律事務所 片山祐輔様」となっていた。メールに続き、何者かが(同一人物とは限らないが)アクションを起こし、新たな手がかりを示したことになる。 レターパックの中身は3つのハードディスクだった。その日、落合洋司弁護士の事務所は、個別取材を求める取材陣が列をなした。ようやく我々IWJの番が回ってきた時には、21時にさしかかっていた頃だった。 ・2014/05/19 PC遠隔操作事件 ハードディスクが届いた落合洋司弁護士を岩上安身が直撃 「複数犯の可能性も」 落合弁護士は、私のインタビューに対し、第3者の冷静な目から見たこの一連の事件の分析を披露した。自称「真犯人」のメールの送り主は、1.文字通り「真犯人」、2.片山被告、3.警察関係者、4.第3者の4つの可能性があるとして、その中でも可能性が高いのは1と3と見ていたが、「スマホを埋めた」とのリーク報道でわからなくなった。そこへさらに送られてきたのがこのハードディスクである。 消印は17日、大阪の「浪速郵便局」で受け付けた郵便物で、ハードディスクの中身は開いていない。佐藤弁護士ら、片山被告の弁護人立ち会いのもと、警察に任意提出し、その際、中身をコピーして弁護人側にも渡し、アンフェアにならないようにしようと思う、と語った。ハードディスクの中に、「真犯人」に近づく重要な手がかりが収まっているのか、それとも空騒ぎを引き起こすだけのジャンク情報しか入っていないのか、それは開けてみなければ誰もわからない。 インタビューの最中、スタッフがタブレットにメモ代わりに差し入れた。そこには、片山被告が「真犯人」を名乗るメールを送り、証拠の隠滅を図った疑いがあるとして、東京地検が21時過ぎに、同被告の保釈取り消しを東京地裁に請求した、との速報が表示されていた。さらに東京地検と警視庁は、「メール文中に特定の団体などを脅す内容が記されている」として、脅迫容疑で、容疑者を特定しないまま「関係先として」片山被告の自宅を家宅捜索した。 19日深夜になると今度は、「河川敷のスマートフォンの付着物から片山被告の『DNA型』が検出された」という記事が、同じく「捜査関係者によると」というリーク報道で流れた。 20日午前2時現在、片山氏の行方は分かっていない。 □今回も「嘘のリーク」の可能性はないか 大手メディアは当初から、捜査当局のリークを鵜呑みにし、片山被告を「真犯人」と断定する報道を大々的に続けてきた。しかしその後の公判で、片山被告が犯人である「証拠」とされていた「江ノ島の防犯カメラの映像」に様々な疑問点が見つかったり、犯人が雲取山山頂にUSBメモリを埋めた件についても、検察が「片山氏が埋めた証拠はない」と告白するなど、その杜撰な捜査内容が浮き彫りとなってきたことについては、あまり大きく報じていない。 さらに検察が最後の切り札として出してきたFBI情報も、蓋を開けてみたら、「遠隔操作ウィルスがファイル共有サービス『Dropbox』内に見つかった」というだけのものに過ぎず、検察も「片山さんが犯人であることの立証のためのものではない」と認めていることに至っては、ほとんど知られていないのではないか、と思う。 警察・検察のリークとメディアのスクラムによる、これまでの捜査と報道の経緯については、片山氏への単独インタビューをご覧頂きたい。 ・2014/03/07 「メディアは嘘のリークに騙されないで」 PC遠隔操作事件の片山祐輔被告と佐藤博史弁護士に岩上安身が緊急生インタビュー 今回の「真犯人」を名乗るメールについて、我々は冷静に、かつ客観的に考える必要がある。 □本当に「真犯人」は単独犯なのか? 現時点で言えることは、そう多くはない。論点を整理してみよう。 まず、「メールを送ったのが本当に片山被告か否か」という点。そして、このメールの送り主が「本当に一連の事件の『真犯人』なのか」という点。この2点はそれぞれ分けて考える必要がある。もし片山被告が16日のメールを送った張本人だとしても、それだけでは片山氏が一連のPC遠隔操作事件の犯人であると断定できるわけではない。一刻も早く裁判を終わらせたいと考えて、この件に限って「合理的」とは言えない行動を取った可能性も否定できないからだ。 その2点につけ加えて、もうひとつ考えてみるべき点がある。「本当に『真犯人』は単独犯なのか」という点だ。 これは、落合洋司弁護士が提示した考慮すべき仮説のひとつである。捜査当局は片山被告の単独犯行と断定しており、メディアもそれに従って報道しているため、片山氏を「真犯人」と見なすにせよ、他に「真犯人」が存在し、片山氏は無実だと主張するにせよ、「真犯人」は単独犯であると思い込んでしまっているところがある。 しかし、これだけ大掛かりな犯行を、短期間にやってのけるのは、単独犯では難しいのではないか、と落合弁護士は述べる。「捜査当局のこれまでの調べでは、複数犯の可能性を完全に否定するような証拠は示されていない」。 この場合、片山氏を含む複数犯のグループ(つまり片山氏に共犯がいる)という場合と、片山氏は無関係で別に複数犯おグループが存在するという場合と、二通り考えられるが、と私がたずねると、「そのどちらもまだ可能性は残されていると思う」と落合弁護士はこたえた。複数犯であれば、メールを送ることも、大阪から郵便物を送ることも簡単にできる。たしかにこれまで十分に検討されてこなかったが、改めて検討されて然るべき仮説ではないだろうか。 片山氏は行方不明のままだが、元検事でもある落合弁護士は、「警察は行動確認(尾行)も行っているばず。もし自殺しそうであればすぐ保護するだろうし、保釈取り消しの決定が下れば身柄を確保するだろうと思う」と語る。 果たして、片山氏は今、どこにいて、何をしているのか。メールを送りつけ、スマホを河川敷に埋めたのは彼なのだろうか。そもそも「真犯人」は彼なのか、別人なのか。単独犯なのか複数犯なのか。 明日以降の展開は、まだ誰にもわからない。(岩上安身) ・http://iwj.co.jp/wj/open/archives/140808 |