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2014.05.19
集団的自衛権とはアメリカの戦争に加わることを意味する。そのアメリカがEUを支配し、戦争を遂行する組織としているNATO。この軍事同盟をアメリカは現在、世界展開しようとしている。つまり、日本は拡大版NATOに組み込まれる。日本国憲法は交戦権を認めず、自衛隊に裁判権はない。そこで軍隊としては不完全なのだが、憲法など意に介していないのが安倍晋三政権である。
アメリカの支配層がNATOを拡大している目的は、「唯一の超大国」としてアメリカが全世界を支配する「新秩序」を建設することにある。そのアメリカを「オリガルヒ」として支配しようとしているのが「国境なき巨大資本」であり、巨大資本が全世界を支配する仕組みが作られようとしている。その作業に日本も参加するということだ。アメリカ資本の思い通りにならないロシア、中国、イランを封じ込め、窒息させるのが基本戦略だが、一気に軍事侵攻で破壊しようという動きも見せている。
強硬路線の中心にはネオコン(親イスラエル派)がいるのだが、そうした方向へ進もうとする大きな原因はアメリカの経済的な衰退が著しいことにある。現在、アメリカを中心とする支配システムは経済的にBRIC(ブラジル、ロシア、インド、中国)やSCO(上海協力機構、または上海合作組織/中国、ロシア、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、ウズベキスタン)に押されている。
SCOにはインド、イラン、パキスタン、モンゴルがオブザーバーとして参加、関係を強めているほか、ラテン・アメリカのベネズエラなどアメリカ資本からの独立を目指している国々とも友好的な関係を築いてきた。アメリカなど「西側」はリビアを破壊し、自立を目指していたアフリカを再支配しようとしているが、このまま再植民地化できるかどうかは不明だ。
日本が拡大版NATOに加わるということは、グラディオのような「秘密部隊」を組織する可能性が高いということでもある。その下には暴力グループが編成される。アメリカはシチリアを支配するためにマフィアを使い、イタリアを含むNATO各国では「右翼」を暴力装置として保護してきた。ウクライナのネオ・ナチにもそうしたグループが含まれている可能性が高い。(これは本ブログでも何度か書いている。)
日本でも似たようなことが試みられている。日本が降伏してから6年後、朝鮮戦争が勃発した翌年にあたる1951年に当時の法務総裁(後の法務大臣)、木村篤太郎が左翼/労働運動を押さえ込むことを目的に、「反共抜刀隊」という構想を打ち出して博徒やテキ屋を組織化していったのである。この構想は挫折してしまうが、広域暴力団、いわゆる「ヤクザ」を生み出すことになった。日本の「右翼」が暴力団とつながっている理由のひとつはここにある。
その当時、支配層が最も恐れたのは物流が止まること。海運の比重が圧倒的に大きかったため、港でストライキが起こって物資の流れが滞ることをどうしても防ぎたかった。そして1952年に「港湾荷役協議会」が創設され、会長に就任したのが山口組の田岡一雄組長だ。その後、山口組が神戸港の荷役を管理することになる。東の重要港、横浜港を担当することになったのが藤木企業の藤木幸太郎だ。
後に広域暴力団と警察の関係は深まり、溝口敦によると、「山口組最高幹部」は「関東勢は警察と深いらしいですわ」と前置きしたうえで、「警視庁の十七階に何があるか知らしまへんけど、よく行くいうてました。月に一回くらいは刑事部長や四課長と会うようなこと大っぴらにいいますな」と語ったという。(溝口敦著『ドキュメント 五代目山口組』三一書房、1990年)
アンダーグラウンドの世界の秩序を維持するために警察が広域暴力団を利用してきたことも否定できない。この本を出した後、溝口は襲われて負傷する。ある暴力団関係者によると、溝口は暴力団を取材していながら、暴力団から金を受け取らないジャーナリスト。信用できると言っていた。
1980年代になると暴力団の世界も変化、経済活動が重視されるようになり、「指を詰める」というようなことは流行らなくなる。マスコミにも「企業舎弟」という名称が登場するようになった。
おそらく、巨大企業と暴力団との関係を近づけた一因は「地上げ」にある。巨大企業では「財テク」がはやり、銀行も生産活動から投機へ融資をシフトしていった時代で、欧米企業の日本進出でオフィスが不足するということが語られていたが、不動産投機としての側面があった。
地上げでは居住者を追い出すという作業が必要になるが、短期間で買い上げようとすれば暴力的な手法を使うことになる。手を汚さずに儲けたい大企業は暴力団、あるいはそれに準ずるグループを使うことなる。資金は事情を知っている銀行が出す。いわば「カネ儲けの三角関係」だ。この仕組みを伊丹十三は自身が監督した映画「マルサの女2」(1988年公開)に取り入れている。
その後、伊丹は暴力団に揺すられるホテルを舞台にした映画「ミンボーの女」を監督、1992年5月16日に公開されたが、その6日後に山口組系後藤組の組員に襲撃されて負傷した。
日本の犯罪集団は昔から芸能の世界と関係が深いが、それだけでなく、ベンチャー・キャピタルの分野に進出しているようだ。正体を隠して成長を見込める新興企業などへ投資、「表世界」を浸食しているという。東電福島第一原発事故の処理に絡んでさらに暴力団と大企業の癒着が進んだとも言われている。「裏」と「表」が渾然一体となってきている。今後、拡大版NATOに日本が組み込まれたなら、こうした暴力集団が「秘密部隊」の実働部隊を提供することになる可能性が高いだろう。
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