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集団的自衛権の行使を限定的に容認する基本的方向性を表明する安倍晋三首相=15日夕、首相官邸(撮影・三尾郁恵)
http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20140518/plt1405181558002-n1.htm
2014.05.18
先行きがおぼつかないから、いかにもとっぴな打開策がささやかれる。集団的自衛権の行使容認に向けた憲法解釈の変更をめぐり、20日から行われる自民、公明両党の協議は、双方の見解が食い違うため、心許ない見立てばかりが取り沙汰されている。こんな袋小路に光明を差し入れるため、衆院解散・総選挙の可能性に言及する向きも出始めた。
中国の野心的な海洋進出や北朝鮮の核・ミサイル問題など、日本を取り巻く安全保障環境は厳しさを増しており、政府の有識者会議「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(安保法制懇)が15日、行使容認を提唱する報告書を取りまとめたのは、実に当たり前のことであり、安倍晋三首相も記者会見で積極姿勢を見せたのは、「自国を自分の手で守る」という覚悟がにじみ出ていて、一国のリーダーたる風格が漂っていた。
これを受けた自公協議では、漁民に偽装した武装集団による離島占拠など、武力攻撃に至らない「グレーゾーン事態」への対応を先行して議論する運びだ。公明党も憲法問題が生じにくいことから、これには理解を示しており、うまくいけば自衛隊法改正は今秋の臨時国会で処理できるかもしれない。
ところが、言われているように、公海上で攻撃を受けた米艦の防護やシーレーン(海上交通路)における戦闘下での掃海活動など、肝心の集団的自衛権に絡む議論になると、今にも地割れが始まりそうだ雰囲気だから、気をもんでしまう。
「日米防衛協力の指針(ガイドライン)の年内改定を控えており、それとない落とし所が自公両党で了解されていなくてはならなかった。けれども、落とし所を詰め切れないまま協議が始まることになった」
政府関係者は協議の見通しに関し、「見切り発車」であることを認める。自民党は、昭和34年の最高裁砂川判決を踏まえ「限定容認論」を提唱し、これらの事例に対応できるとしている。これに対し、公明党はいずれも個別的自衛権や警察権で対応可能としており、解釈変更の必要などさらさらない−との立場を貫いている。対立はこの上なく底深いわけだ。
公明党とすれば、「平和の党」としての存在意義が問われている面もある。自民党との連立後、イラクの非戦闘地域での人道支援や多国籍軍への支援を可能にするイラク復興支援特別措置法などに賛成したが、憲法の平和主義はしたたかに党体質に刻まれている。ところが、行使容認は、支援組織である創価学会の婦人部などに「海外での武力活動につながる」などと慎重論が強いだけに、妥協は容易ではない。
となれば、折り合うのはかなりの難事であり、事の次第によっては、連立政権に重大なきしみが生じかねない。そこで、どうとも動けなくなるような事態を回避するカードとして唱えられているのが衆院解散論で、いわば民意を追い風に解釈変更に弾みをつけようというわけだ。当然ながら、自公両党の与党で過半数を獲得できるとの読みがある。
「(集団的自衛権の解釈変更は)衆院選や参院選での国民との約束を実行に移すものだ」
首相は15日、安保法制懇の報告書を受け取った後、記者会見に臨み、改めて国政選挙で信を問うことは考えていないとの姿勢を示した。しかし、その可能性に早くから触れていたのは誰あろう、首相本人である。2月の衆院予算委で「政府答弁に責任を持って、その上で私たちは選挙で国民の審判を受ける」と明言し、公明党の反発を買った。
自民党幹部は「解散を持ち出すことで公明党を牽(けん)制(せい)し、歩み寄りを促す思惑があったのだろう。けれども、今では公明党に配慮することで譲歩を引き出そうとしている」と説明する。首相が会見で与党協議の結果に基づき解釈変更の閣議決定をする考えを示したのも、そうした思惑が透ける。
ただ、党内には、内閣支持率が高く、「アベノミクス」効果で経済が好調な今秋あたりに衆院解散を打てば、確実に自公両党で過半数を獲得できると見て、「衆院解散に踏み切り、世論の支持を大義にして解釈変更を実現させた方が得策」(中堅)との意見がある。「慎重論が根強い創価学会の説得材料にもなり得る」(同)という期待感もうかがえる。
政府・自民党とすれば、解釈変更がかなうもかなわないも、公明党の出方次第なため、目配り、気配りにぬかりがあってはならない。けれども、公明党に歩み寄りの気配がいささかもみられないとき、果たしてもつれをほどく有効な一打はあるのか。協議の底流に衆院解散論が渦巻いていることは知っておいていい。
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