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2014年05月12日
筆者の個人的感想だが、日本民族には、欧米型の民主主義や自由主義な思想に基づく社会制度は馴染まないのではないか、と云う疑念の証拠が次々と表れている。ここ数年の記憶を呼び起こすだけでも、その疑念の色は濃くなるばかりだ。 先進諸国中最悪といわれる、基本的人権無視の司法制度にしても、女性の社会進出の自由度にしても、憲法で保証された権利の平等(一票の格差問題)にしても、特定秘密保護法なども、見よう見真似で欧米近代化の張りぼてを作ったに過ぎない国家だと云うことが良くわかる。中国海軍の空母を張り子の虎と揶揄するのも悪くないが、わが国の社会制度こそ、民主主義と自由主義の張り子の虎なのである。
以下の「週刊現代」に掲載された税徴収のシステムにしても、霞が関官僚(お上)が正しいこと(国益に資する)をする前提で、任せる税の徴収体系になっている。“権利は常に腐敗する、政府は常に嘘をつく”を踏まえた監視の目が、自由と民主主義な社会制度には欠かせない構成要件なのである。この自由と民主主義を行う国家の国民の心構えがスッポリ抜け落ちている国に、自由と民主主義の社会制度を持つことは、そのメリットは得られず、デメリットは最大化され、国民に襲い掛かるのである。
自由と民主主義においては、そこにおける政治を任せる連中への国民目線は、常に懐疑的である必要がある。人を疑い、その為政や言動を監視し、時に糾弾する行為には、前提として、常に任せない政治への姿勢が国民に求められている。しかし、政治にせよ、行政にせよ、司法にせよ、任せることで事足りてきた日本固有の歴史や島国の孤立した国家においては、民族的に、その必要性は皆無だったに違いない。この島国は古墳時代から庶民は統治される民族として生きてきたわけで、かたちだけで見ても、1700年間は為政者の心配りを頼りに、支配されるだけの時間を過ごしてきている。
このような歴史を持つ民族が、掛け声ひとつで、自由と民主主義の権利や義務。そして、その制度が有効に作用するための国民の側の心構えなど、自然発生するわけがない。啓蒙教育に力を注げば、そのような国民に育つ保証もない。彼らは、先祖代々の慣わしに従って生活してきただけの国民なのだから、馴染むべき素養を身につけていない。素養のなさが悪いわけではない。誤っているのは、国民に馴染まない制度を“泥縄式”で輸入した明治維新の人々の努力にある、と云うのだから、なんとも虚しい話だ。しかし、おそらく事実だろう。
欧米文化には、欧米の歴史や宗教的背景があったからこそ馴染む社会制度であったわけで、日本に輸入する場合は、日本仕様に作り替える必要があったのだろう。その作り替えが、自由と民主主義制度のメリットの極小化、デメリットの最大化に繋がっているのだろう。統治されることに慣れ親しみ、その間隙を縫うように生きてきた強かな民族性を無視した近代化そのものが錯誤であった事を、先ずは認め、改めて、日本における社会制度は如何にあるべきか、問う時代がが来ているのだと思う。統治されるだけの封建制度ではなく、馴染のない欧米民主主義でもない日本独自の社会制度の思想が生まれないと、いずれにせよ、日本の混沌は永遠化する。
≪ 財務省が隠したがる「徴収漏れ」
安倍政権が法人税減税を進めようと躍起だが、財務省やその息のかかった自民税調は「代替財源」の確保を条件に議論を加速させている。租税特別措置を抜本的に見直すとか、繰越欠損金の制度を見直すなどの案が出ているが、果たしてどうするのが正しいのか。
そもそも法人税減税は、小泉政権や民主党政権時代から再三政策課題としていわれていることだが、なかなか「財務省の壁」をやぶれないという経緯がある。 たとえば経済界が法人税減税の理由として「国際競争力の確保」を主張、法人税率引き下げの代替措置として消費税増税を唱えてきたが、これはまさに財務省の思うつぼである。財務省としては法人税減税というエサを経済界の目の前につるしておけば、経済界が勝手に消費税増税の運動をしてくれる・・・・・・ という形で利用されてきたわけだ。
本来であれば、法人税減税のための正しいロジックとは「二重課税の排除」となる。
これはノーベル経済学賞受賞者のフリードマン教授が主張しているもので、法人は個人の集合体であるため、個人ベースで完全に課税が行われれば、法人 税自体が不要となる。その上で、法人の利益は、株主配当、役員報酬、従業員給与と内部留保になるため、前3者については、株主、役員、従業員の所得税で課 税。内部留保は、企業価値の高まりになるので、株主の資産増となって資産税で課税する。いずれにしても、法人段階の法人税で課税することはないというロ ジックである。
しかし、現実の税務執行では、個人の所得・資産は十分に捕捉できないため、やむを得ず法人課税をしている。各国で法人税の減税をしているのは、個人の所得・資産の捕捉が十分になった=二重課税の排除の結果なのである。
この意味で、日本の法人税率が高いのは、納税者番号が先進国の中では徹底しておらず、個人の資産・所得把握が不十分な結果ともいえる。この観点から 見ると、納税者番号の導入や国税庁と社会保険料徴収機関を統合する歳入庁を作ることが先決といえる。言うまでもなく、これらは税制の問題ではなく、それ以 前の税の執行の問題である。
日本では、納税者番号制はやっと取りかかったばかりだが、歳入庁は手つかずで個人の所得捕捉ができていない。これらを先進国並みに整備した上で、二重課税排除の観点から法人税減税をすべきなのだ。
浅尾慶一郎・みんなの党代表がしばしば国会で質問してきたが、歳入庁がないことによる社会保険料の徴収漏れは「年間10兆円」にものぼるという。政府の答弁はそんなに大きくないというものだが、「徴収漏れ」については否定できていない。ましてそれを改善するために、欧米先進国や旧共産圏の東欧諸国でも当たり前に設けられている歳入庁を作らない理由はない。納税者番号制や歳入庁による代替財源は10兆円以上なので、大幅な法人税減税ができるはずなのだ が。 民主党はかつてマニフェストに歳入庁設置を掲げていたが、政権をとると財務省からの横やりなのか、まったく手をつけずに終わってしまった。財務省は、国税庁を政界工作やマスコミ工作に使っていると噂されており、国税庁に対する影響力が低下する歳入庁は絶対反対のようだ。
安倍政権にしても財務省を崩せないと、租税特別措置や繰越欠損金の見直しに手を付けるだけで、せいぜい3兆円程度のシャビーな法人税減税に終わってしまうだろう。 ≪現代ビジネス:ドクターZは知っている 『週刊現代』2014年5月10・17日号より≫
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