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中国・韓国と日本の緊張関係に雪解けの兆し[英エコノミスト:日経新聞]
2014/5/9 7:00
日本と東アジアの近隣諸国との冷え切った関係が改善する兆しは、表面的にはほとんどない。4月22日、約150人の超党派の国会議員が、春季例大祭が行われている東京・九段の靖国神社に参拝した。靖国神社には戦没者だけでなくA級戦犯も合祀(ごうし)されている。当然ながらこの報道に、韓国と中国は怒りをあらわにした。
こうした中、バラク・オバマ米大統領は日本に公式訪問するに際して、尖閣諸島は「日米安全保障条約に基づく防衛義務の対象である」と明言した。米国の大統領として初めてことである。この無人の島々に対し、中国も領有権を主張している。オバマ大統領は4月23日に来日、24日に開かれる公式会談に先立って、東京・銀座の有名すし店で安倍晋三首相と非公式に会談した。
日本と近隣諸国との関係改善を阻む出来事は、靖国参拝のほかにもある。1つは自衛隊が日本最西端の島、与那国島でレーダー基地の建設に着手したこと、もう1つは中国の裁判所が中国の港に停泊していた商船三井所有の輸送船を差し押さえたことだ※。1930年代に商船三井の前身の企業が中国企業から借り受けた船が、日中戦争中に沈没した問題を巡り、原告は賠償請求を続けていた。
しかしながら、このところ外交活動が活発化している。こうしたとげとげしさとは裏腹に、遠からず日本と近隣諸国の関係が、より建設的なものになる可能性がある。最近まで韓国と中国の指導者たちは、戦時中の侵攻について日本は十分に謝罪したと考える国家主義者の安倍首相とは交渉できないと断言していた。ところが両国とも、日本との関係修復の道を探るべく、担当者を送り込み始めた。安倍政権も、近隣諸国との関係をこじらせたままでいることのコストを認識しつつある。
※=中国の裁判所は4月24日、差し押さえを解除したと発表した。商船三井が中国側に約40億円を支払った。
■日韓国交正常化50周年をてこに
日本と韓国の間には、理屈の上では共通点が多い。両国とも繁栄した民主主義国家であり、緊張をはらむ地域における米国との同盟国だ。だが、昨年の安倍首相の靖国神社参拝や、過去に対して謝罪する必要はないとする同首相の信念が足かせとなって、関係を修復することができないでいる。行き過ぎた国家主義的報道を繰り返す韓国メディアも足を引っ張る。
ところが3月末に朴槿恵大統領は、オランダ・ハーグでオバマ大統領を仲介に安倍首相と会談することに同意した。朴大統領は、日本が日韓関係の修復を望むなら、歴史認識問題を蒸し返さないことを明言するとともに、従軍慰安婦問題で誠意を見せなければならないと述べた。従軍慰安婦とは、第2次大戦中に、日本軍向けに性的サービスを強制された、もしくはだまされてそうしたサービスに就いた人々のことをいう。
朴大統領が示したこの2つの条件のいずれにも、日本は合格したように見える。安倍首相は先ごろ、戦争と従軍慰安婦への遺憾の意を表明した河野談話などを継承する考えを明らかにした。4月16日には、従軍慰安婦問題の解決に向けて日韓外務省局長級協議がソウルで開かれた。現在もおよそ55人の韓国人元従軍慰安婦が生存している。協議の争点は、彼女たちへの謝罪と補償だ(いずれについても日本政府は既に実施している)。
今や月次定例協議の開催が計画されている。双方が冷静さを失わないため、日本は韓国政府が反日活動家をあからさまに支持したり、中国などの第3国による扇動的な反日行動を支持して事態をあおったりすることのないよう求め、韓国はこれを受け入れた。両国はまた、領土問題――韓国が支配している独島(日本名は竹島)――を棚上げするための糸口を見出したいと考えている。
日韓両国には関係修復に向けて協力すべき理由がある。2015年6月に日韓基本条約締結50周年を迎えるのだ。両国が一切の式典を行わないという状況にでもなれば外交的な大失態となる。とりわけ朴大統領にとってはそう言える。日韓基本条約を締結したのは、朴正熙元大統領だからである。韓国で独裁体制を敷いた同元大統領は、朴槿恵大統領の父親だ。今後数カ月の間、すべてが順調に運べば、朴槿恵大統領が天皇に訪韓の招待状を送ることすら考えられる。
■胡耀邦元総書記の息子と安倍首相が極秘会談
これに対し、日本と中国との対立にはほとんど解決の手がかりがないように見える。尖閣諸島(中国名は釣魚島)は100年以上前から日本の領土の一部だったにもかかわらず、中国は領有権を主張している。中国が昨年11月、東シナ海に「防空識別圏」の設定を宣言したことは、同地域の現状を変更しようと中国が躍起になっていることの表れと捉えることができる。
しかしながら最近になり、中国の首脳陣はひそかに、よりソフトな路線に転換した。日本政府関係者によれば、ここ数週間、中国の巡視船が領海侵犯する頻度が目立って減っているという。外交面では、胡徳平氏が4月初め、非公式に東京を訪れた。胡徳平氏は、中国の改革派指導者だった胡耀邦・中国共産党元総書記(故人)の長男で、習近平・中国共産党総書記の親友でもある。胡徳平氏は日本の元首相や岸田文雄外相らと会談しただけでなく、安倍首相とも極秘に会談した。
5月には超党派の日中友好議員連盟が北京を訪れる予定で、その際に中国側から決定的なシグナルが発せられそうだ。昨年、中国共産党の高官が同議員連盟と会談することはないとの通知を受けて、訪中を取りやめた経緯がある。だが議員連盟の1人で元外相の岡田克也氏は、今年の訪中を楽観視している。岡田氏によれば、中国の王毅外交部長(外相)か、もしかすると李克強首相にさえ会える可能性がある。会談相手が誰になるにせよ、中国側は意向を明確に示すと岡田氏は見ている。
■財政難の北朝鮮は日本に秋波
北朝鮮との困難な問題については、モンゴル政府が先ごろ、日本と北朝鮮の政府間協議の橋渡しをした。日朝政府間の公式協議は数年にわたって中断されていた。北朝鮮が日本との距離を縮めたいと考えている原因の1つは、彼らの後ろ盾となっている中国が、韓国との関係改善に動いていると見られることにある。だが最大の理由は、北朝鮮が資金を欲しているからだ。
協議の最大の議題は、1970年代から1980年代にかけて、このならず者国家によって拉致された日本人の安否である。日本政府は公式に認定した拉致被害者17人のうち、かなりの人がまだ存命していると考えている。日本側はこれらの拉致被害者の正確な安否情報を求めている。もしそうした情報が得られれば、その見返りに経済制裁を緩和することがあるかもしれない。
北朝鮮との関係改善を模索していると見られることは、日本では政治的なリスクをはらむ。ところが安倍首相の場合、これまで取ってきたタカ派的姿勢が幸いするかもしれない。安倍首相は拉致問題に突破口を開くことをかねて念願している。したがって、北朝鮮が4度目の核実験を行っても、拉致問題の進展を探ることがあり得る。
外交関係が改善に向かっているとの診断は、他の国についても当てはまる。韓国で行われた世論調査では、回答者の半数以上が日本との関係改善を望んでいる。韓国政府や中国政府がそうした道筋を追求できるか、その成否の一端は安倍首相にかかっている。
個人としての安倍氏は、日本の過去について奇妙な修正主義的歴史観を抱く国家主義者だ。だが首相としての安倍氏は、国際的な視野を持つ実務家で、個人的なイデオロギーを押し出すことは、必ずしも日本の国益にかなわないことを理解している。
安倍首相は今年の春季例大祭に靖国神社を参拝しなかった。安倍首相が個人の信条よりも首相としての立場を優先する限り、近隣諸国との雪解けが続くだろう。
*一部に、異なる見解がある表現がありますが、原文の趣旨のまま訳してあります。
(c)2014 The Economist Newspaper Limited. Apr 26th 2014 All rights reserved.
英エコノミスト誌の記事は、日経ビジネスがライセンス契約に基づき翻訳したものです。英語の原文記事はwww.economist.comで読むことができます。
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK0801C_Y4A500C1000000/
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