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TBSが独走する「TPPで日米基本合意」 大型連休中のテレビ報道の「あれれ?」(その2)
http://bylines.news.yahoo.co.jp/mizushimahiroaki/20140506-00035081/
2014年5月6日 20時21分 水島宏明 | 法政大学教授・元日本テレビ「NNNドキュメント」ディレクター
TPPをめぐる日米交渉でTBSが「独自ニュース」を連発している。
独自ニュースというのは、自分の会社だけが報道できるニュース、つまりスクープのことだ。
連休中のテレビニュースで目を引いたなかに、TBSによるスクープがあった。
TBSは5月2日の「ひるおび」の中のニュースでも以下のスクープを放った。
TPP基本合意の全容判明 「豚肉50円」「牛肉9%」(5月2日、TBSニュース)
オバマ大統領来日時に決着したTPP=環太平洋パートナーシップ協定をめぐる日米両政府間の基本合意の全容が、JNNの取材で明らかになりました。焦点だった「豚肉」の関税を現在の最大482円から「50円」に、「牛肉」の税率を「9%」に引き下げるなど、全ての項目で合意しています。 TPPの交渉をめぐっては日米双方とも「重要な進展があった」としているものの、合意したことや内容については明らかにしていません。しかし、焦点となっていた農産品5項目全てと自動車について日米が具体的に合意していたことが、JNNの日米関係筋への取材で明らかになりました。 まず、豚肉は安い豚肉により高い関税をかける「差額関税制度」を維持する一方、現在1キロあたり最大482円の税率を15年程度かけて「50円」に下げることで合意。また、牛肉は現在38.5%の関税を10年程度かけて「9%」にします。 コメ、麦、乳製品については、関税を維持する代わりに特別な輸入枠を拡大したり、新たに設定し、国会が求める「関税維持」に沿った合意内容となりました。 唯一、調整が残っているのは、豚肉の輸入が急増した場合に関税を復活させる「セーフガード」の発動条件についてですが、これによって他の合意内容が変わることはないということです。 さらに、自動車分野も、関税に加えて市場へのアクセス・安全基準といった非関税分野でも対立していたすべての課題で具体的な合意に至りました。 日米両政府は今回、抵抗が予想される生産者団体や議会関係者らへの説得に十分な時間をかけたいという思惑で一致し、基本合意に達した事実を公表していません。 しかし、実際には細かい点まで具体的に合意できたことで、日米双方で慎重に国内調整を進める一方、TPP全体交渉の早期妥結を目指し、取り組むことになります。(02日11
出典:TBS NEWS
実はTBSはTPP をめぐる日米交渉では「独走」と言ってもよいほど他社が報じないニュースを続けている。
4月21日には「ひるおび」や「Nスタ」で、現在1キロあたり400円台の豚肉の関税について日米両政府が大幅に下げることで合意したと報道した。
VTRでは米国産豚肉を使い、格安で人気のとんかつチェーン「かつや」の経営者の声をを交えて伝えた。米国産は品質でも国産に劣らず現在でも国産豚肉に比べて3割程度安いという。消費者の立場ではより安い豚肉を食べることが可能になるが、養豚業者にとって「大幅引き下げ」は痛手だろうとニュースを見て感じた。
さらに4月29日には基本合意の舞台裏として、4月23日の寿司屋での安倍・オバマ会談で関税の話をオバマが切り出したことを報道。
オバマ大統領を招いた24日の宮中晩餐会で”決裂”が回避され、基本合意が出来上がったと報道した。
さらに5月2日には前述のように豚肉の関税はキロ50円、牛肉9%で合意と報道した。
その間、TBSはブレていない。
一貫してオバマ訪日中に「基本合意が成立した」という報道を続けている。
よほど自信があるのだろう。
他方、TBS以外は読売新聞が「実質合意」と報じた他は多くの報道機関は甘利経済産業相を始めとする政府関係者の会見での言葉そのままで「TPPでの大筋合意はなかった」とする。
報道を総合すると、「大筋合意」「基本合意」「実質合意」をしたかどうかは解釈の問題に過ぎない。
TPPに関する日米の交渉事項はかなり煮詰まっていることは事実といえると思われる。
それを「実質合意」と解釈するか、「合意にいたらず」とするかの問題だ。
TPPは米国主導の枠組だが、米国と基本合意しても他の国々との交渉はまだあるので、両国政府は「基本合意」とはいえないし、またそれぞれの国に影響を受ける業者がいる。豚肉の関税大幅引き下げならば打撃を受ける日本の養豚業者がそれにあたる。
今の段階では政府も自民党も関税の大幅引き下げで合意したとは口が裂けてもいえない。
こうしたなかで政府もTBSなどTPP交渉の中身を報じたマスコミに対して異例の要請を行っている。
環太平洋連携協定(TPP)交渉に関する報道をめぐって、TPP政府対策本部の渋谷和久内閣審議官は21日緊急の記者会見を開き、新聞、通信、テレビ各社に報道を見直すよう異例の要請を行った。 内閣審議官は農産物重要5項目の関税や自動車の貿易問題に関する日米の協議実態が「少なくとも日本の報道と違う」と指摘。こうした報道によって、米国が不信感を抱き協議に支障をきたしているとの認識を示した。 内閣審議官は報道機関3社を名指しした上で、「積み重ねたガラス細工が報道で壊れた」と批判。「日米が牛肉関税9%以上で折り合った」などとの報道を念頭に、「日米とも何一つ合意していない」と強調した。(2014/04/21-18
出典:時事ドットコム
しかし、こうした政府の要請にもかかわらず、TBSはその後も報道を続けている。
国民の利益に直結する問題だから、という理由で自分たちで結論を出した末のことだろう。
TPPは交渉途中の情報開示がほとんどないため、どの品目がどうなりつつあるのかさっぱり分からない。
実際に影響を受ける関係者からすれば、ある日、突然、関税がこうなった、という結果だけを通告されることになる。
情報がなければ賛成も反対もすることができない。
今回、TBSの報道で「豚肉」や「牛肉」の関税引き下げ交渉のプロセスが少し明らかになった。
このことは報道機関として評価すべきことだ。
報道機関は政府ではなく、国民の利益のために報道を行う。
その原点をTBSは貫こうとしている。
それにしてもNHKを始めとして、他のテレビ局は「日米合意」を知っていてニュースとして書かないのか、それとも大臣らの言う通りに「まだ合意とは言えない」と考えているのか。
能力があるのか。能力がないのか。確信犯で書かないのか。
そのうちはっきりさせてほしい。
一社だけ突出しているTPPの「日米基本合意」という報道は、テレビ報道の役割について考えさせられる。
水島宏明
法政大学教授・元日本テレビ「NNNドキュメント」ディレクター
1957年生まれ。東大卒。札幌テレビで生活保護の矛盾を突くドキュメンタリー 『母さんが死んだ』や准看護婦制度の問題点を問う『天使の矛盾』を制作。ロン ドン、ベルリン特派員を歴任。日本テレビで「NNNドキュメント」ディレク ターと「ズームイン!」解説キャスターを兼務。『ネットカフェ難民』の名づけ 親として貧困問題や環境・原子力のドキュメンタリーを制作。芸術選奨・文部科 学大臣賞受賞。2012年から法政大学社会学部教授。
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