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「アベノミクス2.0」への進化を占う人口減対策:法人税率半減・公的年金株式投資拡大・“移民受け入れ”の旗を振る竹中平蔵氏
http://www.asyura2.com/14/senkyo165/msg/199.html
投稿者 あっしら 日時 2014 年 5 月 06 日 16:39:10: Mo7ApAlflbQ6s
 


「アベノミクス2.0」への進化を占う人口減対策
編集委員 清水真人
2014/5/6 7:00

 円安株高の頭打ち感が否めず、岐路に立つアベノミクス。首相の安倍晋三は成長戦略の改定と日銀の追加金融緩和への「期待」で足元の株価テコ入れを狙うが、持続可能性はおぼつかない。目線を上げ、中長期を見据える「第4の矢」として政府内で浮上するのが人口減少問題への取り組みだ。「アベノミクス2.0」への進化のカギを握る。


■株価と綱引きの政権運営

 「896」と「523」。前岩手県知事で東大客員教授の増田寛也らが8日に記者会見し、こんなキーナンバーを提示する。人口の減少と東京など大都市圏への集中が続けば、2040年に全国の市区町村の約半分に上る896で出産を中心的に担う20〜39歳の女性人口が半分以下に減るという。896のうち523では人口が1万人未満に落ち込み、「消滅可能性」が高いと予測する。自治体の具体名もあえて公表し、危機感を訴える。

 崩れかける国力の土台。それを横目に、株価が一時1万4000円割れした4月中旬以降、安倍や首相官邸スタッフが何より神経をとがらせるのは足元の日経平均株価だ。
 「アベノミクスは前進中だ。法人税の改革を一層進める。7300億ポンドの運用資産を持つ年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は先を読んだ改革を進めている。運用委員会も一新された。規制や慣習を破るドリルの刃は最大速度で回転している」
 1日、ロンドンの金融街シティ。安倍は講演で、成長戦略の加速にこう力を込めた。投資家の視線を強く意識した内容だが、どこかデジャビュ(既視感)もつきまとった。

 「外国の投資家は細かな成長戦略など理解しない。日本が変わる、と印象づけるには法人税率の半減、公的年金の株式投資拡大、移民受け入れの3つだ」
 慶大教授の竹中平蔵が官房長官の菅義偉にこう耳打ちしたのはかれこれ1年前だ。以来、成長戦略への失望が広がりかけ、株価が揺れ動くたびに似た現象が起きる。法人税率の引き下げ論やGPIFによる年金積立金の国内債券中心の運用見直し論が政権中枢から小出しに流布するパターンだ。

 日銀総裁に黒田東彦を据え、異次元緩和で円安株高を演出させた安倍。自民党が求めた公共投資中心の大型財政出動で実体経済を下支えし、この2本の矢で時間を稼ぐ。その間に潜在成長率を向上させる「第3の矢」成長戦略も推進するので「アベノミクスは買い」だと「期待」に訴える。このように政権運営の生命線と見定めた株価との綱引きから、もはや宿命的に逃れられない。
 4月15日。株価下落の中で安倍は黒田を首相官邸に招いて懇談した。終了後、黒田は記者団に「2%の物価安定目標の達成に支障を来す恐れがあれば、ちゅうちょなく金融政策の調整をする」と安倍との緊密な連携に胸を張った。そのカゲで「株価連動政権」に薄氷を踏む思いを吐露した場面は知られていない。

 「2020年度にプライマリーバランス(基礎的財政収支)を黒字化する財政健全化目標の達成を期待する。内閣府の試算では国内総生産(GDP)比で2%の赤字が残る。この下での法人税改革の実現には社会保障制度や税制全体の見直しが必要だ」
 2月20日の経済財政諮問会議。民間議員がアベノミクスによる税収増を還元する法人税率下げを唱えると、黒田は副総理・財務相の麻生太郎に続いて厳しくクギを刺した。安倍が成長戦略に傾きすぎて財政規律を脇に置けば、追加緩和どころか、日銀の今の国債大量購入への市場の信認も崩れかねないからだ。
 潜在成長率の向上は行政改革によるムダ根絶と似て、不断の努力が不可欠。言い換えれば、市場は安倍の取り組みはまだまだ、といくらでも催促できる。ある日銀OBは顔をしかめる。
 「外資系投機筋はアベノミクスの賞味期限を見切っている。日経平均株価をもう一段、つり上げたら売り抜ける思惑で『日本買い』の材料を求めている。それが成長戦略と追加緩和だ」


■起爆剤となった増田論文

 こんな株価との終わりなき神経戦を危ぶみ、13年9月に東京五輪の20年開催が決まった後、側近や有識者から長期政権を見据えたビジョン作りの進言が安倍に相次いだ。だが、宰相は慎重に構えた。財政や社会保障で明るい展望が描けないからだ。

 1月、安倍は首相直結の有識者懇談会の新設案は退け、諮問会議の下に専門調査会を置いた。会長を引き受けた日本商工会議所会頭の三村明夫は「選択する未来」委員会を名乗った。長期ビジョンの起爆剤となったのは、第1次安倍改造内閣の総務相でもあった増田寛也らが「中央公論」13年12月号に寄せた論文「2040年、地方消滅。『極点社会』が到来する」だ。
 「深刻なのは人口減少だ。地方から若者、特に女性が東京圏にブラックホールのように吸い寄せられている。過疎の町村から消滅し始め、やがて東京圏に何もかも集中する『極点社会』が待つ。大都市ほど出生率が低いから、国の存立さえ危うい」
 人口減少と国家の危機にこう警鐘を鳴らす増田。働き方や社会保障の改革を訴える東大教授の吉川洋。社会構造の変化に見合う成長・発展を探る日本経済研究センター理事長の岩田一政。三村が3つの作業部会の主査に選んだ顔ぶれだ。麻生内閣で消費税増税を柱とする社会保障・税一体改革への流れを創った有識者の面々が再び集まった形。元財務次官で内閣官房参与(当時)の丹呉泰健も霞が関とのつなぎ役として参画した。

 三村は15日には50年後の経済社会を展望する中間整理を公表する。合計特殊出生率の回復を目指し、少子化対策予算の飛躍的な増額を宣言。人口減でも付加価値生産性の向上や外国人受け入れで「経済を世界に開き、成長し続ける」姿勢を訴える。働き方の改革で女性や高齢者の活力を最大限生かす。財政や社会保障制度の持続可能性を確保する改革にも取り組む。
 第1次安倍内閣から首相が毎年交代する政治の混迷で置き去りにされてきた長期的な政策運営の指針がほの見えた。素早く呼応するのは霞が関だ。国土交通省は3月末に2050年を見据えた「国土のグランドデザイン」骨子を公表。財政制度審議会(財務相の諮問機関)も4月28日、2060年度までの長期財政推計を初めて発表した。20年度に財政健全化目標を達成しても、その後も高齢化で医療・介護費の膨張が続くため、財政破綻を防ぐにはさらに厳しい歳出抑制や増税が避けられないとの見通しを示した。


■石破、細野、小泉進次郎氏 動く

 「増田氏の論考は実に示唆に富む。ご一読をお勧めする」
 13年11月15日。増田らが公表した論文を間髪入れず自らのブログでこう評価して見せたのは、ポスト安倍をうかがう自民党幹事長の石破茂(57)だった。増田を党国家戦略本部の会合に招くなど人口減少改革の旗を振る。民主党で真っ先に動いたのは前幹事長の細野豪志(42)。独自の議員グループ「自誓会」旗揚げに際し、最初の勉強会には増田を講師にとこだわった。
 三村任せの安倍を横目に、内閣で際立って意欲的なのは復興政務官の小泉進次郎(33)だ。
 「東日本大震災の被災地を見れば現在進行形だ。できる施設などはピカピカでも、若い人は減る、産業は育たないでは真の復興なのか、と危機感を持つ」
 東北の深刻な人口減少予測と巨額の国費を投じて進む復興事業のミスマッチのリスクを見て取った小泉。作業部会の委員に宮城県女川町長の須田善明を推薦し、自らも出席して有識者と意見を戦わせる。日々の株価を追うアベノミクスの裏側で、安倍の次、次の次、その先をにらむ50歳代、40歳代、30歳代それぞれの旗手が動き出している。=敬称略


http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK2500C_V20C14A4000000/?n_cid=DSTPCS001


 

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