http://www.asyura2.com/14/senkyo164/msg/910.html
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※ 参照記事
「日米首脳会談 その1:「TPP日米市場アクセス交渉」は宮中晩餐会前に基本合意:内容公表の先延ばしでしのごうとする安倍政権」
http://www.asyura2.com/14/senkyo164/msg/637.html
「米「豚肉関税50円・牛肉9%」要求 TPP、日本は慎重:豚肉関税の話に特異な価格ゾーンを持ち出す怪」
http://www.asyura2.com/14/senkyo164/msg/856.html
「TPP日米合意を探る:国内養豚事業者保護の要である「差額関税」制度がTPP加盟国に対し実質的に撤廃される可能性」
http://www.asyura2.com/14/senkyo164/msg/653.html
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日米、妥協の解探る
農産品関税率×下げへの期間×輸入制限 TPP、条件三つどもえ
環太平洋経済連携協定(TPP)を巡る日米協議で最大の焦点となる牛肉と豚肉は、関税率と関税の引き下げ期間、輸入が急増した際に輸入を制限するセーフガードと呼ばれる輸入制限措置(きょうのことば)を組み合わせて妥協点を探っていることがわかった。双方の主張になお隔たりはあるものの、条件を巡る焦点は、絞られつつある。
日米は4月下旬の閣僚級協議で農産品の輸入関税について話し合ったが、合意には届かなかった。だが、TPP担当の甘利明経済財政・再生相は直後に「こっちが高くなるとこっちが低くなる。その方程式を日米で共有した」と語っていた。
たとえば、牛肉の輸入関税を大幅に下げる代わりに、関税の引き下げ期間を長くしたり、セーフガードを発動しやすくしたりして国内市場への影響を抑える案だ。
日本の政府関係者によれば、米国は牛肉の関税を原則撤廃から9%以下まで認める譲歩案を示してきたという。豚肉関税は1キログラム約65円以下の安い肉に対する482円を当初はゼロにするように求めていたが、ここにきて50円以下まで容認する案を提示してきた。
一方、日本は、牛肉関税は4月にオーストラリアと経済連携協定(EPA)で合意した20%前後に、豚肉関税は100円への下げを検討すると伝えているという。
牛肉で「9%と20%前後」、豚肉で「50円と100円」といった具合に、関税率を巡る日米の隔たりはまだ大きい。それでも、関税維持、関税撤廃という原則論に終始した当初より歩み寄ってきた。さらに、日米は関税率と、輸入制限措置の発動条件、関税率下げのスピードを組み合わせ、妥協点を探る方向で合意の道を探り出した。
これが甘利氏の指摘する「日米で方程式を共有した」という発言の真意とみられる。
衆参農林水産委員会は農産品の関税撤廃に反対する決議をしており、政府は少しでも牛肉・豚肉の関税率を高く維持したい。代わりにセーフガードの発動基準を厳しくして、米国の理解を求める考えだ。
日豪EPAでは豪州産牛肉の輸入量が毎年の平均量より増えると、関税を現行水準まで戻すセーフガードを入れている。対米交渉では米国産牛肉の輸入が例年より大幅に上回った場合にのみ、セーフガードを発動する案を検討しているようだ。
日米は5月の連休明けから大江博首席交渉官代理とカトラー米通商代表部(USTR)次席代表代行で事務レベルの話し合いを再開する。5月19、20両日にはTPP交渉参加12カ国で閣僚会合を開く方向。甘利氏はそれまでにフロマンUSTR代表と会談し、大筋合意をめざす。
日本はコメ、砂糖、乳製品、牛肉・豚肉、麦を重要5項目として関税を守る交渉をしてきた。コメや麦などは関税ゼロの輸入枠の拡大などで着地点がみえている。
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全体交渉 主導する責任
TPP交渉の焦点は、日米が2国間協議の進展をテコに、12カ国全体の交渉に弾みをつけられるかどうかに移る。5月半ばにベトナムで開く首席交渉官会合と、その後のシンガポールの閣僚会合が大きな山となる。日米の責任は重い。
「次の会合から交渉の加速が期待できるでしょう」。先週の日米首脳会談の直後、日本のTPP交渉チームの幹部は他の主な交渉国に日米協議の結果について、丹念に説明して回った。これを受け、あるアジアの外交官はこう感想を語った。「日米の足並みがそろえば、TPPのエンジンが再始動するかもしれない」。諦めムードが漂っていた交渉国の間に、新たな緊張感が芽生えつつある。
これまでの全体会合が不調に終わったのは、域内経済の約8割を占める日米の協議が平行線をたどり続けたからだ。他の交渉国は、模様眺めに徹していた面がある。
日米が「けんか別れ」するかもしれないとき、他国は懐に温めているカードを切れない。その冷めた空気を打ち破る馬力を日米は生み出せるのか。答えが出るのが、これからの1カ月間だ。
道は平たんではない。日米共同声明は「前進する道筋を特定した」と宣言したが、他国は具体的な説明を求めるだろう。どこまで合意済みで、何が残っているのか。明確に言えなければ、日米の指導力に貼られた疑問符は、はがれない。
たとえば日米が安全基準の見直しなどで対立している自動車の扱いはどうだろう。農産品5項目と並んで自動車についても交渉しているはずだが、実際には協議時間のほとんどは農産品に費やしている。自動車をめぐり丁々発止とやり合っている形跡はない。対立した状態のまま、机の上に載せてあるのが実態ではないか。日本に対し強く改善を要求している形に見えることが、米政府にとって好都合だからだ。
いま決着すれば対立点が解消してしまい、米自動車業界と議会は、新たに無理難題を持ち出してくる。そうなれば再び交渉は迷走するだろう。
日米は交渉全体に弾みをつけたいのに、自国内の政治力学に足を引っぱられて2国間協議を決着できないジレンマに陥っているのではないか。TPPの行方は、ガラス細工の合意を築く日米の呼吸にかかっている。
(編集委員 太田泰彦)
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[きょうのことば]輸入制限措置(セーフガード) 自国産業保護へ発動
▽…国内産業に大きな損害を及ぼすほどに、農産物や鉱工業品などの輸入量が増えすぎた場合、その輸入量を一定以下に抑えるしくみ。輸入する数量を制限したり、関税を引き上げたりする方法がある。自国の産業を守るために、特にインドやインドネシアなど新興国がよく使っている。日本や米国などの先進国も導入している。
▽…たとえば日本では、国産より安い豚肉を輸入する場合、国産肉の価格をもとに決めた「基準価格」との差額が上乗せされる。直近3年間の平均と比べて119%を超える量を輸入すれば、基準価格がいまの1キロ546円53銭から681円8銭に140円近く跳ね上がる。牛肉は輸入量が前年度と比べて117%を超えれば、関税率がいまの38.5%から50%に引き上げられる。コメも過去の輸入実績をもとに決めた基準数量を超えて輸入すれば、通常の関税の3分の1が自動的に上乗せされる。
▽…輸入業者はセーフガードが自動的に発動する前に輸入量を減らすことが多く、発動しない場合でも事実上の輸入制限になる。環太平洋経済連携協定(TPP)交渉の日米協議では、日本が米国産の農産品にセーフガードの導入を模索する一方、米国も輸入する日本車に同じ措置をとれるよう検討している。
[日経新聞5月3日朝刊P.3]
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