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[グローバルオピニオン]新通商秩序は日米欧で
ビジネス・ヨーロッパ事務局長 マルクス・ バイレル氏
通商問題といえば、日本で環太平洋経済連携協定(TPP)ばかりが話題になるように、欧州では欧州連合(EU)と米国との環大西洋貿易投資協定(TTIP)に関心が集中している。日本とEUも経済連携協定(EPA)の交渉を進めているが、その重要性は見落とされがちだ。
世界の約150カ国・地域が参加する世界貿易機関(WTO)の通商交渉で貿易や投資の自由化を推進することは実際には難しい。主役である日米欧の3極が互いに整合性を保ちながら枠組み作りを進めることが、新しい経済秩序を築くうえで重要になる。
日本は米国の同盟国であり米国が中心のTPPを重視するのは当然だろう。だが、我々は次世代の通商ルールづくりに関してTPPで実現できることは限定的だと考える。
なぜならTPPの交渉には北米と日本のほかに様々な経済発展の段階、政治体制の国々が加わっているからだ。米国は同時に11カ国を相手にしなければならない。域内の制度統一も視野に入れた高い水準の成果は期待できない。
その点、米欧間のTTIPで米国の交渉相手はEUに限られる。同様に日・EUのEPAで日本政府の直接的な交渉相手は欧州委員会だけだ。米欧、日欧という2つの協定はTPPよりはるかに意欲的で濃い中身にしたい。少なくとも欧州はそう考えている。
日・EUのEPA交渉は5月に重大な局面を迎える。過去5回の協議結果を踏まえ、欧州委が報告書をまとめる。そのうえでEU加盟各国が交渉継続か否かを判断する。我々の予想では欧州委は前向きな報告書を作るだろう。欧州産業界としても、交渉の加速と早期締結を提言する。
ただ、日欧の認識が微妙にズレているのが気になる。日本では、EUが工業製品の関税を下げる代わりに、日本が農産品の関税を下げるという交渉だと考えられてはいないだろうか。自動車とワインの関税の取引という構図だ。
これは間違いだ。EUには自動車などの関税を引き下げる用意がある。見返りとして日本に求めているのは非関税障壁の撤廃だ。公共調達、サービス、投資など、まさにルールづくりの分野である。
そのなかで我々は、公平な調達制度や技術の基準・認証がとりわけ重要な鉄道分野に焦点を当てている。欧州の高速鉄道が日本の新幹線より安全ではないと、なぜ言えるのだろうか。航空機のタービンと同様に共通の安全基準があってもよいはずだ。
日本郵政の市場独占に関してもEUは当初から問題視し、改善を求めている。郵便制度は欧州を王室が支配していた時代に始まり、権力と支配の象徴だった。だが、いまは民営化が先進国の潮流であるのは明らかだ。
(談)
Markus Beyrer氏の略歴
Markus Beyrer ビジネス・ヨーロッパはEUの経済団体で日本の経団連に相当。事実上の最高責任者として財界をまとめる。オーストリア出身。48歳。
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中ロには微妙な配慮
競争力の強弱が混在するEU産業界の意見集約は容易でない。日本とのEPAには欧州になお異論が残るが、バイレル氏からは締結を目指す財界の強い意志が伝わってきた。日米欧の責務を語る一方、中国とロシアとの関係では微妙な配慮がにじむ。ウクライナ問題を憂慮するが、EU経済に悪影響が出るとして対ロ制裁には反対。知的財産権の保護など中国にも言いたいことは多いが、いまは実利優先で対中投資を伸ばす立場だ。EUの煮え切らない対中ロ外交の背景が透けて見えた。
(編集委員 太田泰彦)
[日経新聞4月28日朝刊P.4]
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