06. 2014年5月07日 22:30:38
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焦点:大阪カジノ構想に影落とす地元政界の混乱とギャンブル依存症 2014年 05月 7日 20:28 JST ◐http://jp.reuters.com/news/pictures/articleslideshow?articleId=JPKBN0DN0RF20140507&channelName=topNews#a=1 1 of 1[Full Size][大阪市 7日 ロイター] - 大阪再生への経済効果に期待が集まるカジノ構想には、クリアすべきハードルも少なくない。IR推進派が描くバラ色のシナリオの半面、地元にはカジノの存在が助長しかねないギャンブル依存症への懸念が根強くある。地元議会での不協和音が誘致実現への足かせとなる可能性も消えていない。 <実態みえず> 「大阪にカジノはいりまへん」。4月6日、大阪市内で市民団が開いたカジノ誘致の反対集会で、参加者はこう書いたチラシを手に、学識経験者らの講演に耳を傾けた。 集会の運営には、多重債務問題を生み出すギャンブル依存症などの問題に取り組む「依存症問題対策全国会議」も参画した。事務局長を務める吉田哲也弁護士(兵庫県弁護士会)は「発症させないということが病気の対策であるべきなのに、(ギャンブル)依存症を発生させておいてから、(事業者が)入店を禁止するとか、そこでの利益を治療に使うという発想自体が道徳的に間違っている」と話す。 90年代以降、パチンコに熱中した大人が子どもを駐車場の車内に放置し、熱中症で死なせてしまうといった事件が全国各地で表面化し、次第にギャンブル依存症が社会問題化することとなった。カジノ反対派の懸念の矛先は、治安悪化に加え、この依存症の問題にも向かっている。だが、パチンコ産業や公営ギャンブルが各地に広がる日本国内において、ギャンブル依存症の実態について、統計データが不十分な状況にあるのも事実だ。 大阪府の松井一郎知事は「やるべきことはこれまでもやってきている。これからも行政が対応していくのは当たり前のこと。IRができるから、できないからという話ではない」と行政側の立場を釈明する。すでに相談窓口を設けるなど必要な対策を講じているとの考えだ。 また、誘致に積極的な姿勢を示す関西経済同友会は「カジノ依存症という問題があるならば、その問題をミニマムにする努力をするべき」(斉藤行巨・常任幹事事務局長)と、海外の事例を参考に対策を講じることが有益だとの認識を示している。 大阪府市が20─60代の府民合計2000人に対しインターネットを通じ3月に実施したアンケート調査によると、日本でのIR整備について「賛成」と答えた割合は18%、「条件付きで賛成」は38%、「反対」が21%、「わからない」との回答が23%となっている。肯定派が過半数を占めているとはいえ、条件付きで容認とする声が最多となった。カジノの持つリスクとその対策を見極めたいとする住民の総意が透けて見えると言えそうだ。 IR推進派からも「データがなければ病気がないと思ったら大間違い。見て見ぬふりをするのが一番いけない」(ギャンブル社会学を専門とする大阪商業大学の谷岡一郎学長)と、研究データの蓄積を求める声があがっている。 <泉北鉄道の影> 地元議会のも不透明要因が横たわる。IR推進法案が成立した場合、大阪府市は誘致活動を加速させるため、補正予算を組む方向だ。ただ、足元では昨年末に起こった府議会の混乱の余韻が漂っている。 府南部を走る泉北高速鉄道。財政悪化に苦しむ大阪府は昨年、筆頭株主として保有する同鉄道運営会社株の売却に動き、入札の結果、米投資会社ローンスターが優先交渉権を得た。しかし入札にあたり同社が提案した他社線への乗り継ぎ運賃の割引幅が、次点となった南海電気鉄道(9044.T: 株価, ニュース, レポート)の提案内容に比べ小さく設定されていたことが後に判明。沿線住民の反発を招いた。 こうした流れを受け、昨年12月の府議会の採決の場では、大阪維新の会(当時、今年5月1日にみんなの党府民会議と統一会派結成)の一部議員が造反。結果、府議会での維新の会の議員数は過半数を割ることとなり、自民・公明など他党が対維新の姿勢をさらに強めることとなった。さらに今年4月に入り自民党大阪府連と公明党大阪府本部は、来春の統一地方選挙に向け協力に乗り出す方針を決めている。 <公明の動向> これまで自民党大阪府連はカジノ誘致を巡り態度を明確にしていなかったが、関係者によると、条件付きでの賛成との立場を近く内部で決める構えという。 今国会でIR推進法案を提出したのは自民・維新・生活の党の3党。カジノ解禁において国政レベルでは自民と維新は足並みをそろえている。IR議連は超党派の議員で構成されていることもあり「数の論理でいけばこのまま成立する」(松井府知事)とみる向きがある一方で、公明党の支持母体の創価学会に慎重論があるとされている。 同党は大阪府議会におけて維新に次ぐ議席数を占める第2会派だ。「中小企業の経営者以外に、女性や文教関係者の支持が多い」(府議関係者)。自民党府連と公明党府本部の関係は選挙協定にとどまっており、政策面まで踏み込んだものではないものの、統一地方選の結果次第では、IR誘致を巡る流れが変わる可能性もはらむ。 大阪維新の会側もIRに関して決して楽観視をしているわけではない。府市によるIR誘致に向けた準備活動は「松井─橋下体制だからこそ可能となった話」(幹部)。首長が変われば元の木阿弥となる恐れある。もっとも、先の市長選で大阪都構想の議論を巡る姿勢について「人の道に反する」(橋下市長)と批判した公明党と維新の間には、すき間風が吹いた状態にある。 カジノを解禁への動きに地元議会は一枚岩となれるのか。関係者の声には楽観論と悲観論が混じりあう。「2020年にはぜひ一部オープンをしたい」。府知事が訴えるオリンピック開催時期のIR開業を果たすには、地元住民の十分な理解と政財界の協調がカギを握る。 (長田善行 取材協力:ネイサン・レイン、江本恵美)
◐http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0DN0RF20140507?feedType=RSS&feedName=topNews&utm_source=feedburner&utm_medium=feed&utm_campaign=Feed%3A+reuters%2FJPTopNews+%28News+%2F+JP+%2F+Top+News%29&sp=true 焦点:大阪カジノ構想で目指す関西復権、海外も食指 2014年 05月 7日 20:14 JST ◐http://jp.reuters.com/news/pictures/articleslideshow?articleId=JPKBN0DN0Q320140507&channelName=topNews#a=1 1 of 1[Full Size] [大阪市 7日 ロイター] - カジノ誘致をめざし大阪が気炎を吐いている。カジノ解禁に向けた法案整備をにらみ、府・市は統合型リゾート(IR)立地に向けた準備委員会を設置。橋下徹市長らの誘致キャンペーンにも力が入ってきた。だが、カジノ振興を大阪再生の起爆剤にしようという熱い期待の一方で、地元政界の混乱やギャンブル推進への反発など、向かい風も吹きつつある。 <海外カジノ事業者の来訪相次ぐ> 「完全に東洋のベニスになります」──。4月7日、大阪市内で開かれた「大阪都構想シンポジウム」で、橋下徹市長はこう宣言した。臨海部の人工島「夢洲(ゆめしま)」にIRを誘致し、海を隔てて都心側にあるユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ、大阪市此花区)とつながる鉄道網を新設。かつて宣教師が大阪・堺をなぞらえたように、一帯をイタリアのベネチアのような魅力のある一大観光地に整備するという構想だ。 その気炎にはわけがある。最大のライバルと目される東京の存在だ。ところが、都構想シンポジウムの2日後、東京都は臨海部に所有する「青海K区画」を10年間賃借する暫定事業者の公募を開始すると公表した。同地区は、人気の商業施設「ヴィーナスフォート」もある「お台場」の一角で、フジ・メディア・ホールディングス(4676.T: 株価, ニュース, レポート)などが東京版IRの候補地と想定している地区だ。 都はK区画において、国際会議や見本市など海外からの集客力を見込める展示・文化施設とすることを応募条件としている。とすれば、東京五輪と同時期に同区画でカジノを開業するのは不可能となる。 東京都はさらに同月、IR整備の是非を判断するため、コンサルティング会社と契約、海外の実態調査を委託した。石原慎太郎・元都知事の時代からカジノ誘致の検討が進められてきたにもかかわらず、なぜ改めて調査が必要なのか、都の動きに首をかしげる関係者も少なくない。 「カジノオペレーターはこのわずかの間に、こちら(大阪)への興味を強くしたはずだ」と、大阪の政財界にはこの動きを歓迎する声もある。 証券会社CLSAの試算によると、大阪にIRが立地した場合、カジノ事業の売上は年45億─50億米ドルとなる潜在性があるという。実際、大阪には、メルコ・クラウン・エンターテインメント(6883.HK: 株価, 企業情報, レポート)やゲンティン・グループ(GENS.SI: 株価, 企業情報, レポート)、米ラスベガス・サンズ(LVS.N: 株価, 企業情報, レポート)といった海外カジノ事業者の来訪が相次いでいる。「(府を訪問するのは)全部経営のトップだ。本気度というものを感じている」(松井一郎府知事)。 <地盤沈下食い止める切り札に> 事業者のラブコールに手ごたえを感じた府・市は4月22日、IRの候補地として、夢洲を軸としたベイエリアとする方針を決定した。夢洲の土地価格は東京・有明に比べ「4分の1程度」(市関係者)とされており、事業者にとって早期の投資回収が期待できる。 こうした流れを踏まえ、地元の主要経済団体で誘致に積極的な関西経済同友会は、夢洲でのIRの実現に向けた提言を策定中だ。「大阪らしいIRを考えないといけない」(斉藤行巨・常任幹事事務局長)と、関西が発祥とされる和食や伝統文化、地元企業の先端技術に触れられるミュージアムのような施設を併設することなどを提案する構えだ。 夢洲はかつて大阪オリンピックの招致活動が行われていた時代に、選手村とする構想があった。だが招致に失敗して以降、市の財政悪化も加わり、物流関連施設を除き半ば塩漬け状態が続いている。しかし、IRにつながる交通インフラ整備をカジノ事業者が負担するようになれば、長年の課題だった臨海部の鉄道網などが整備でき、水都・大阪の姿が大きく変わる。 カジノ誘致でもっとも期待されるのは、地元経済の再生を促す大きな触媒効果だ。首都圏に次ぐ経済圏を持ちながら、関西のプレゼンスは低迷の一途をたどっている。近畿経済産業局によると、70年代に国内GDPの22%弱を占めていた近畿2府5県のシェアは、10年度の時点で16%台まで低下した。 京都・奈良をはじめ、世界遺産を数多く抱える関西にカジノを立地し、海外観光客をさらに増やすことができれば、地元経済は活性化し、東京と並ぶ「二極」の一つとしての大阪の復権にもつながる。 「大阪にIRを誘致した場合、関西に1兆円以上の経済効果が生まれる」。松井府知事と橋下市長が所属する大阪維新の会を支援するため、経済人らが結成した政治団体「経済人・維新の会」の試算だ。同政治団体の会長を務める衛生用品メーカーのサラヤ(大阪市東住吉区)社長・更家悠介氏は「その経済的な波及効果は、東京への誘致よりも大きい」と強調する。 <カジノに期待するオセロ効果> 日本初のカジノ解禁に向けたIR推進法案は、昨年12月、超党派の国会議員で構成する「国際観光産業振興議員連盟」(IR議連)」を通じ国会に提出された。カジノ候補地には、東京と大阪のほか、沖縄や長崎、宮崎といった地方都市の名も挙がっている。 「雰囲気がパッと変わっていた」。長年、カジノの必要性を地元経済界で訴え続けてきたユアサM&B(同中央区)の松田憲二社長は、10年1月にシンガポール視察旅行から帰国した橋下府知事(当時)の印象をこう表現した。地元経済の立て直しに向けた「決意のようなものを感じた」からだ。 シンガポールは日本に先駆けてカジノ解禁に踏み切り、観光産業を大きく成長させた成功例だ。当時、橋下氏は現地で開業前の2つのIRの経営トップと相次いで会談した。 「何から何までマイナスだったものが全部オセロのようにIRが来ることでひっくりかえって、プラスに活用できるような、そんな話になっている」。そう語る橋下市長が、「シンガポールの繁栄」を大阪カジノの将来像と重ね合わせているとしても不思議はなさそうだ。 (長田善行、取材協力:ネイサン・レイン、江本恵美)
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