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2014年4月30日
今の20代、30代のお父さん、お母さんが小学生のお子さんに「特区ってなあに?」と聞かれたときは何と答えるのだろうか。若いお父さん、お母さんも一瞬戸惑って、「ちょっと待ってね」と言いながらスマホなどで「特区」を検索する。
すると、特区の説明には『実態に合わなくなった国の規制が、民間事業者の経済活動や地方公共団体の事業を妨げています。』などと書いていあった。そこで、たとえばお母さんは自分でもしめしめと思いながら、お子さんに分かるように説明するかもしれない。
お母さん:「あのね、日本には古いルールがたくさんあって、お父さんたちが働いている会社などはこのルールが強すぎて、仕事やほかの会社とのお付き合いがやりにくくなってるんだよ。だから、やりやすくするためにね、ルールを変えるんだよ。そのために“特区”をつくってなるべくはやくやろうとしているんだよ。」
それでもこのとき、頭のよいお子さんが次のように突っ込んで来たら、若いお母さんはどう答えるのだろうか。
あたまのよいお子さん:「お母さん、それなら今特区を作らないで、最初から日本全部を特区でやればよかったんじゃないの?」
そこでお母さんは深く考えずに「それが一番よかったんだけどね。多くのおとなたちは、今のようなものがよかったんだろうね。」というかもしれない。だが、“あたまのよい”お子さんはそれでは納得しないだろう。
この話には前提としてこういう暗黙の了解がある。それは規制でがんじがらめの既存体制には、規制利権に群がる官僚や族議員、ステークホルダーたちが頑強に巣食っていて、企業や人々の自由を極度に束縛し、全体として息苦しくなっている。だから人々の首を絞めている規制を思いっきりゆるめるか、とっぱずしてしまおうという文脈に直行する。
厄介なことは、この話もじつはかなりの部分で真実であるということだ。だが、あたまのよいお子さんはもっと根本的な疑問をお母さんに問いかけている。つまり最初から世の中全体をルール(規制)のない状態で出発したらどうなのか、なぜルールがあるのかと問いかけているのだ。
つまり、あたまのよいお子さんは「そもそも規制は何で出ていたの?」と、規制の目的を存在論的に問いかけているわけだ。この問いかけに対して、規制が人や企業を苦しめているとか、もっと縛りを緩めるなどという説明は全く見当外れなのである。お母さんは歴史的に規制がなぜ必要だったのかをきちんと説明しなければならない。
つまり、規制(ルール)のない社会は、その始まりからして腕力の強いものや財力の強いものが一人勝ちし、腕力のない者や財力のない者は底辺に追いやられ、搾取され酷使されて地獄の苦しみをなめてしまう。そのような弱肉強食社会は国民のためにルールを設けて防ぐ必要があったんだよという説明から入るべきだった。
強い者が当たり前のように独り勝ちして、他の人々を搾取(さくしゅ)したり睥睨(へいげい)したりする社会とは、日本国憲法第14条の『法の下の平等』におもいっきり反しているという説明から入って、規制の存在論的な目的をお子さんに説明する必要がある。お子さんがもっと大きくなったら“レッセフェール(自由放任主義)はヤバいのだ”という説明もできるわけだが。
お子さんに説明する場合、規制は必要だが時代遅れのところや行き過ぎた足かせの部分もあるので、それを直していくんだよというのならまだましである。だが、規制の発生的な要因を全く説明しないで、規制がよからぬものだ、足かせ手かせだという規制悪玉論から入ってしまうと、ことの本質を見誤ってしまうことになる。
じつは今の日本人が、安倍政権が唱道する規制緩和によって企業活動を賦活化させ、企業利益を上げてやれば、それはとりもなおさず国民にもよい形で跳ね返ってくると言われて、なるほどなと思っているのであれば、実際そう思っているのだが、大多数の国民は先の頭のよいお子さんが投げかけた素朴な疑問のレベルにさえ達していないという話になる。
安倍成長戦略には本質的に二つの巨大なごまかしがある。
その一つで最大のものは、規制の存在論的な必要性をわざとスルーして、企業優遇だけのための規制緩和を善とする発想だ。これは規制の本来の目的、国民の生存権や法の下の平等を担保する非常に大事な制度であるという視点が欠落しているのだ。
この本質と、規制が既得権益者たちに悪く利用されているのは別個の問題であるのだが、規制緩和推進論者たちは、規制そのものが健全な経済社会にとって悪であるという、じつにお粗末かつ乱暴な論法に持って行く。しかも国民はその乱暴なロジックにすっかり取り込まれているのだ。
もう1つは、規制を緩めて企業の活動を促進してやれば、利潤を得た企業はそのおこぼれを国民にも分け与えてやることができるのだという、いわゆるトリクルダウンセオリーである。この効果は歴史的に見て確認されたとは言えない。特に小泉政権以降は企業が利益を内部留保や投資、株主配当に回し、外にはほとんどこぼれていない。第一、人間さまが企業のおこぼれを預かるなどという考え方が馬鹿にしているではないか。
今回のテーマは、構造改革特区であれ、総合特区であれ、国家戦略特区であれ、日本における“特区(特別区域)”計画とは、せんじ詰めていうならば既存体制を迅速(じんそく)に破壊するための最短戦略として用いられているというのが、素直な感想である。
これは米国でよく使われるファストトラックの概念に近い。ファストトラックとは目的を迅速に達成するために審査等を優先的に実施したり、各種手続きを簡素化する制度。原義は優先、急行、出世、追い越し車線、といった意味があるそうだ。
イメージとしては、時間をかけて慎重にクリアーしなければならない諸手続きを追い越して、最短距離(ショートカット)で目的地に到達することである。妙な言い方だが、これは池波正太郎の「鬼平犯科帳」に出てくる、盗賊の“急ぎ働き(いそぎばたらき)”とそっくりだ。
ぐずぐずしていると気付かれてお上の御用になってしまうから、迅速に盗人(ぬすっと)の仕事をやってしまおうということである。小泉政権、菅政権、安倍政権がやっているそれぞれの「特区」も全く同じで、人々の目を欺いているうちに一気にやってしまおうという魂胆である。だから菅政権時の総合特区(アジアヘッドクォーター特区も含めて)は3・11のショックドクトリンを使っているのだ。
だからこそ、国家戦略特区も国民に目をつけられる前に「急ぎ働き」でやってしまおうということである。これは特区計画の本音がファストトラックであること示している。この観点から国民をペテンにかけている最中の権力筋は奈須りえさんの存在を非常に疎ましく思っているはずである。奈須さんは政府による詐欺構造を見抜いて人々に警告を発しているわけだから、権力の上にいる人たちは頭からめらめらと怒りの蒸気を立ち昇らせている。
つまり、神州の泉は先進国における特区計画自体が詐欺の構造で出発しているとみている。その理由は、行政改革を進めるうえで、狭い日本にわざわざ特区を設けなくても、国会で議論して現行の制度体系を変えて行くことこそが順当な流れだと思っているからだ。
そこで、さきほどのあたまのよいお子さんの素朴な疑念に戻るが、なぜ限定的なエリアを特別エリアとして囲い込み、そこだけを治外法権的な政治特区として規制緩和や税制改革のモデルにし、それが上手く行ったら、同じことを他地域にも拡大して全体を変えて行こうとするのだろうか。
一番腑に落ちないのは、現今のさまざまな規制や制度群は一朝一夕にできたものではなく、長い時間と試行錯誤を経てできているという事実があるのに、そこを無視してわざわ迅速にショートカット手法で一気に変えなければならない理由があるのかということだ。
ここから、安倍首相や竹中平蔵氏が、ことあるごとに“スピーディ(迅速)に”という言葉を濫発する理由が見えてくる。それは規制緩和詐欺という「急ぎ働き」を突貫工事でやるためなのだ。
規制ができあがるまでは、然るべき理由と試行錯誤、それ相応の時間を費やしている。それだけのエネルギーを費やしてできあがっているものには、それがなければならなかった強い理由があったということになる。その理由を充分に吟味せずに、たんに経済成長の阻害要因となるから、拙速に規制を緩和するというのは絶対に筋がとおらない。
規制緩和を見直す場合は、それができあがった時間に匹敵する時間をかけて慎重に行うべきだ。ここに“迅速緩和”という考えを入れたら、それは強盗か詐欺の発想以外にないのだ。
政権が打ち出している規制緩和には、非常に危険なロジックが潜んでいる。レッセフェール(自由放任主義)による弱肉強食社会の阿鼻叫喚を防ぐために規制が考えられ、それは国家機能の重要な属性となっている。この部分を完全に捨象し、企業絶対優遇の規制緩和論で進めている現行成長戦略は国民に対する、政府による戦争行為とみなすしかない。
これに対して奈須りえさんたち、ほんの一握りにもならない方々が最前線で戦っているというのが現状なのだ。だが、前にも述べたとおり、国民全体が先述のあたまのよいお子さんよりもはるかに知的認識レベルが低いために、最前線にいる国民防衛軍は不利な状況になっている。
何度でも言い続けるが、奈須りえさんの警告に1人でも多くの国民が耳を傾けないと、気付いたときには身動きができなくなる。そうなってしまえば、国民生活が逼迫(ひっぱく)するなどというレベルにはなく、富裕者層以外の99%の国民がホームレスに近い難民状態か、究極的な貧窮状態に移行する。
↓市民政策アナリストで国家戦略特区を追求されている前大田区議会議員 奈須りえさんのオフィシャル・ブログ
http://ameblo.jp/nasurie/
↓奈須りえさんの記事一覧
http://blogos.com/blogger/nasurie/article/
(国家戦略特区による「規制緩和」についても、市民の立場で専門的に発言されているが、市民有識者では類例がないのでは?)
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