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日本で政権交代が難しい理由 自民党が「政党ではない」から
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140430-00000008-pseven-soci
週刊ポスト 2014年5月9・16日号
みんなの党・前代表である渡辺喜美衆議院議員が8億円もの大金を借りていたことが発覚して以来、政治の世界がにぎやかだ。政党がどのように再編されるのかといった方向へ興味が移りつつある。しかし大前研一氏は、戦後日本の自民党政治について問題提起している。
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みんなの党の渡辺喜美前代表が化粧品会社ディーエイチシー(DHC)の吉田嘉明会長から8億円もの巨額の借入金をしていた問題は、浅尾慶一郎新代表の下での同党の帰趨(きすう)と野党再編の動きに焦点が移りつつある。だが、私がいま問題にしたいのは、今回の一件から見えてくる戦後日本の自民党政治の救いがたい宿痾(しゅくあ)についてだ。
振り返れば、2009年に歴史的な政権交代で民主党政権が誕生した。1955年の保守合同から半世紀以上にわたる期間のほとんどで事実上の一党独裁を続けてきた自民党に対し、国民が制裁を下したのである。
しかし、そこでリーダー不在によって頓挫した“アラブの春”現象が起こり、民主党はオウンゴールで失点を重ねて政権担当能力がなかったことを露呈した。それに失望した国民は、二度と民主党には任せられないということで、自民党が政権に復帰したわけである。
なぜ、日本は政権交代が難しいのか? 端的に言えば、自民党が「政党ではない」からだ。自民党には政党としての筋の通った政策がないのである。
たとえば、アメリカの場合、共和党は小さな政府で経営者寄り、民主党は大きな政府で労働者寄りと政策の対立軸がはっきりしている。イギリスやオーストラリアの保守党と労働党も同様の構図である。
一方、自民党はどちらかというと経営者寄りと言いながら、実際にやってきたことは「大きな政府」で、北欧にもないような高度福祉社会の実現と弱者・敗者の救済だ。そういう矛盾した状況になったのは、もともと自民党が自由党と日本民主党の寄り合い所帯の根拠薄弱な政党で、アメリカで言えば共和党に近い派閥も民主党に近い派閥も丸ごと抱えているからだ。これは他の国にはない政党のキャラクターである。
つまり、自民党というのは、いわば商業ビルの「109」スタイルで、右から左まで何でもござれの“よろず陳情受付所”“すべての票を取り込むための総合デパート”なのである。
各議員は自民党という商業ビルの中にスペースを借りて営業しているテナントのようなもので、個々が我田引水で自分の地元に利益を誘導し、清濁併せ飲みながら声の大きい少数派(ノイジー・マイノリティ)に手厚く財源(税金)を使っていくことによって政権を維持してきたのである。
だから、世界で最も競争力のない農業が守られ、日本中の海岸と山肌がコンクリートで固められ、ありとあらゆる分野でカネのかかる大きな政府になってしまったのである。
これに対抗するには、「小さな政府」しかない。財政均衡を目指し、国民に自助努力を求めるという対立軸だ。
しかし日本人は、財政均衡の必要性は知りながら、おらが村への地方交付税交付金や補助金が減るのは嫌がる。年金問題も、デモグラフィー(人口統計学)によって、このままでは2035年に国民の3人に1人、60年に2.5人に1人が65歳以上の高齢者になると推計されているのだから、どう考えても国が破綻してしまうということは、小学生が学ぶ「鶴亀算」「旅人算」でもわかることだ。
にもかかわらず、国民は政府が受給開始年齢を引き上げ、次世代の負担を重くして問題の根本的な解決を先送りしていることを容認している。
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