02. 2014年4月27日 11:22:31
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メーデーに首相出席 賃上げアピール、働き手は温度差 2014年4月26日21時07分 朝日新聞 連合主催のメーデー中央大会が26日、東京・代々木公園であった。13年ぶりに自民党の首相として出席した安倍晋三首相は「官製春闘」で賃上げした実績をアピールしたが、安倍政権は労働条件の引き下げにつながる見直しを進めるだけに、多くの働き手の反応は冷めていた。押されっぱなしの連合にも、いらだちの声が上がった。 今年で85回目を迎える「労働者の祭典」には約4万人が参加した。来賓として、共産党を除く10政党の代表らが顔をそろえた。 「企業の収益が賃金につながることが大切だ。働くみなさんが景気回復を実感できるように全力をつくす」。安倍首相はあいさつで、引き続き賃上げに取り組む姿勢を強調した。 安倍政権の要請を背景に企業が賃上げを進め、「官製春闘」と言われた今春闘は、大企業を中心に賃金体系全体を底上げする「ベースアップ」(ベア)に踏み切る企業が相次いだ。連合の23日現在の集計では、要求を提出した6869組合の4分の1にあたる1818組合が、ベアに相当する賃上げを獲得した。 プラントメーカーで働く29歳の女性は「2年間で2千円」のベアが認められたといい、「官製春闘といわれても、給料が上がったのはよかった」と話す。 だが、参加者の多くは冷ややか。労働規制の緩和の検討を続々と進めているからだ。 政府の産業競争力会議は、アベノミクスの成長戦略に盛り込むため、労働時間規制を緩和する検討を始めた。一般社員でも同意すれば、法律が定める時間より働いても「残業代ゼロ」になる可能性がある。 連合の古賀伸明会長は「働く者の声を聞かず、労働者保護ルールを改悪しようとしている。働く人の犠牲の上に成長戦略を描くことは許せない」と批判した。 8歳と3歳の子どもを連れて参加した自動車メーカー社員の男性(39)は「会社に多くの派遣社員がいるが、労働条件が改善されるとはとても思えない。連合の姿勢が問われる」と指摘する。給料は月額で550円上がったが、「消費税も物価も上がり、とても足りない」とこぼした。 中小企業に勤める川崎市の男性(44)は「ベアはなかった。労働者ルールを改悪する首相がここにいるのは違和感がある」。 安倍首相のあいさつ中には「『残業代ゼロ』反対」「中小企業はどうなる」などのヤジが相次ぎ上がった。(末崎毅、佐藤秀男) 安倍首相が、自民党の首相として2001年の小泉純一郎元首相以来となるメーデーに参加した狙いについて、政府関係者は「賃上げという実績をアピールするためだ」と語る。 2012年末に発足した安倍政権は当初、民主党政権を支えてきた連合とは一定の距離を置いてきた。 政権交代前の自民党政権では、首相と連合会長が定期的に労働問題を話し合う「政労会見」と呼ばれる場があった。連合は今回の安倍政権発足後、政労会見を行うよう求めたが、首相は応じなかった。 こうした対決路線を修正するきっかけは、8%への消費増税の決断だった。 増税で景気が腰折れすれば、政権の高い支持率も下がる恐れがある。首相は昨年9月から、政府と労働界、経済界の代表による「政労使会議」を開き、労使双方から賃上げに協力する約束を取りつけた。個人消費を支える賃上げで労組に恩を売ることで、経済界が求める労働規制緩和への理解を得る、いわばアメとムチを使い分ける戦略だ。 民主党と連合の間にくさびを打つ狙いも透ける。 民主党は大幅に数を減らしたとはいえ、衆参両院で野党第1党。次期衆院選では、自民党への批判票の受け皿となる可能性はある。政権と接近することによって、民主と連合の関係がギクシャクすることは、与党にとってプラスだ。 民主党は焦りを隠せない。海江田万里代表はあいさつで「生涯ハケンで低賃金を拡大させる。首相の本音は、日本を世界一、企業が活動しやすい国にすることだ」と厳しく批判したが、党内からは「民主党が頼りないままでは、連合が政権にすがりたくなるのも無理はない」(中堅議員)との嘆き節も漏れる。(益満雄一郎) 対決か、協調か。安倍政権に対する連合の腰は定まらない。 この日、会場では「労働者保護ルールの改悪に断固反対する」との特別決議を採択した。ただ、採択は安倍首相や山口那津男・公明党代表らが会場を去ってからだった。 押し込まれる現状に「政権にすり寄ってしまえば、ものが言えなくなる」(連合傘下の産業別労組の幹部)と心配する声もあるが、別の産別幹部は「政労使の枠組みから外されないように、慎重に政権とつきあう必要がある」と話す。 労働規制の緩和を検討する産業競争力会議や規制改革会議には、労組の代表者は参加していない。だが、労働者派遣法改正案の原案をまとめた厚生労働省の労働政策審議会には、連合幹部が加わる。 自ら参加した会議で派遣労働者の待遇改悪につながる案がまとまったことについて、連合は「席を立てば、労使が入って議論する審議会の枠組みそのものを骨抜きにされかねない」(幹部)と説明する。 このためか、連合は派遣法改正案について真正面から廃案を求めず、「修正など」と言葉を濁している。 連合加盟の組合員数は、発足当初の約800万人から減り続け、今は675万人。一方、派遣労働者など非正社員の数は年々増えて約2千万人にのぼるが、連合傘下の労組に加わるのは80万人に過ぎない。 だが、派遣法改正案への対応を誤れば、非正社員を敵に回しかねない。「労組というのは正社員中心の組織。仕方がない」。非正社員からは、そんなあきらめの声も漏れる。(豊岡亮、奈良部健) http://www.asahi.com/articles/ASG4V5FQ0G4VULFA00M.html
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