http://www.asyura2.com/14/senkyo164/msg/671.html
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今回の米中首脳会談を受けて、オバマ政権は日本の頭越しに中国と手を結ぶだろうといった主張が行われているが、それは間違っている。アメリカは表面的には中国と仲良くするだろうが、完全に手を結ぶことはない。
もちろん、アメリカが完全に日本側に立つこともないだろう。アメリカはアメリカの国益に基づいて、日本とも中国とも付き合っていく。ただそれだけの話である。
それ故、ことさら「アメリカと中国が野合している」などと喚くのは、あまりにも国際社会の常識が見えていないと言わざるを得ない。感情的な反米論は感情的な反中論と同じくらい、日本の国益を毀損するものである。
ここでは、地政学者の奥山真司氏のインタビューを紹介したい。リアリズムの観点から米中関係を分析しており、非常に参考になる。
『月刊日本』編集部ブログより
http://ameblo.jp/gekkannippon/entry-11834239114.html
それでも米中は必ず衝突する
―― アメリカの対中政策に対する不満から、日本では「アメリカは中国の言いなりだ」、「アメリカと中国は野合している」といった議論も行われています。
【奥山】 それは当たっている部分もあると思いますが、必ずしもそうとは言い切れません。というのも、大国同士は必ず衝突するものだからです。
この点については、アメリカのリアリスト、ジョン・ミアシャイマーの『大国政治の悲劇』の議論が参考になります。ミアシャイマーの議論で重要なポイントは、「大国は必ず地域覇権を目指す」という点です。どういうことか。以下、手短に説明します。
国際社会はアナーキーであり、国家は常に他国の潜在的脅威にさらされています。それ故、国家は自国の生き残りを図るべく、他国よりも国力をつけようと努力します。しかし、ライバル国に比べてどれほど力をつければ安全であるかを正確に計算することはできません。他国の2倍の力を持てば安全というわけではないからです。
それ故、国家は国際社会における唯一の大国になること、すなわち覇権を達成しようとします。他の全ての国家を支配できるほどの大国になって初めて、国家は安心することができるのです。
もっとも、現実には他の全ての国家を支配する「グローバル覇権」を達成することは不可能です。そこで大国は、ある特定の地理的領域を支配する「地域覇権」を目指すことになります。
地域覇権国というものは、他の大国が地域覇権を目指すことを許しません。他にも地域覇権国が存在すれば、自国が安全だとは言えないからです。それ故、大国は他の大国が地域覇権を握ろうとする時、必ずそれを潰そうとします。
実際、かつて大日本帝国が東アジアで覇権を握ろうとした際、アメリカはそれを潰しにかかりました。現在中国が同じように東アジアで覇権を握ろうとしていますが、アメリカは必ずこれも抑えにかかります。ただ、アメリカは自ら抑え込むのではなく、代わりに日本を中国にぶつけるといった方法をとるでしょう。
こうしたところからもわかるように、大国政治は基本的にゼロサム・ゲームです。バランス・オブ・パワーを自国にとって有利な方向へ変化させようと争っている以上、ウィン・ウィンの関係はあり得ません。
「米中は経済的に互恵関係にあるから衝突することはない」といった議論もありますが、それは間違いです。大国政治においては、安全保障の方が経済よりも圧倒的に重要です。経済的に親密な関係にあるからといって衝突が起きないとは言えません。もちろんこれは現在のドイツとロシアについても言えることです。
これがミアシャイマーの重視する国際社会の「構造」です。いかなる国家であろうとも、この構造から逃れることはできません。
中国が覇権を目指すのも、それは中国が「大国」だからであって、中国が「悪い国」だからではありません。米中衝突が避けられないのも、それは米中が「大国」だからであって、オバマ大統領と習近平主席が個人的にどのような意図を持っているかとは関係ありません。もし仮に二人の間に強い信頼関係があったとしても、米中衝突は起こる時には起こってしまうのです。だからミアシャイマーは大国政治を「悲劇」だと言っているわけです。
もちろん、現実の国際政治を見れば、国家のリーダーの意図が大きな影響を与えていることは否定できません。そうした観点を無視するわけにはいかないのです。
しかし、日本ではとかく国際社会の「構造」という側面が見落とされがちなので、この点は強調しておいた方がいいと思います。
―― 近い内に米中軍事衝突が起こるということですか。
【奥山】 そうではありません。ミアシャイマーの言っている米中衝突とは、必ず米中戦争が起こるということではありません。大国が覇権を求める存在である以上、常に衝突の可能性があるということです。これはあくまでも可能性の話であって、実際に戦争が起こるかどうかはまた別の問題です。
もし仮に米中衝突が起こったとしても、米中は核兵器を持っているので全面戦争に至ることはないでしょう。しかし、尖閣諸島や南シナ海、台湾、あるいは朝鮮半島をめぐる制限戦争の可能性は十分にあります。少なくとも米中間で激しい安全保障競争が行われることは間違いありません。
ある人が面白い表現をしていましたが、米中はテーブルの下で手を結ぼうとしているが、その手の中には画鋲がある。これが現在の米中をめぐる状況です。(以下略)
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