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2014年04月24日 板垣 英憲(いたがき えいけん)「マスコミに出ない政治経済の裏話」
◆韓国の大型旅客船「セウォル号」沈没事故(4月24日現在、死者計157人、安否不明者145人)は、船長はじめ乗組員の無責任な行動ぶりが大問題になっている。勤め先の会社に対する「忠誠心」の有る無し、強弱が、大きな影響を及ぼしていたのではないかという重大な問題を投げかけているのだ。
朝日新聞4月23日付け朝刊「社会面」(39面)で、韓国南西部・珍島の体育館入り口に張り出されたメッセージに「『何百人の命がかかった仕事に非正規職員を雇う無責任な社会』などと、朴槿恵大統領を批判する張り紙が掲示されている」という記述があった。
大型旅客船「セウォル号」の船長はじめ乗組員は、ほとんどが旅客船運航会社の正社員ではなかったらしい。船長は契約船長で契約は後1年で切れるところで、給料は普通の旅客船運航会社の6割〜7割という低賃金だった。旅客船運航会社経営者は、安全より利益優先、従業員の給料も、他所の会社に比べてかなり低いという。積荷は過積載、広告に年間2000万円費やしても、安全教育には年間わずか5万円しか支出していない。これでは万全を期すための安全教育ができるはずはない。ましてや従業員が旅客船運航会社に忠誠を誓うわけがない。いざという時に、無責任にも逃げ出すのが、関の山だ。
◆安倍晋三首相が議長を務める政府の産業競争力会議は4月22日、労働時間にかかわらず賃金が一定になる働き方を一般社員に広げることを検討するという。朝日新聞デジタルが4月22日午前8時01分、「『残業代ゼロ』一般社員も 産業競争力会議が提言へ」という見出しをつけて、以下のように配信している。
「政府の産業競争力会議(議長・安倍晋三首相)は、労働時間にかかわらず賃金が一定になる働き方を一般社員に広げることを検討する。仕事の成果などで賃金が決まる一方、法律で定める労働時間より働いても『残業代ゼロ』になったり、長時間労働の温床になったりするおそれがある」
安倍晋三首相は、6月に改訂する安倍政権の成長戦略に盛り込むことを検討することにしているという。日本の国際競争力を高めるのに、雇用のあり方について「規制緩和」したり、「規制撤廃」に踏み切ったりして、労働者の性能を高め、成果を上げさせるというのは、基本的には間違いないだろう。
だが、物の価値や労働の対価が、マルクス経済学的に「投下労働時間」で決められるというのは、非現実的であり、営業職と事務職を同列には扱えないけれども営業マンのなかには、一見するとブラブラ遊んでいるようであっても、短時間で大きな成果を上げてくる者もあれば、長時間かけても成果を上げられない者もいる。さりとて、事務職が役立たずなのかと言えば、さに非ずである。支援部隊がいるからこそ、営業職が思う存分活躍できる。会社というのは、出来る者と出来ない者、利口者と馬鹿者とが、ピラミッド構造を形成して成り立つものである。出来る者だけの会社というのは、どこか歪である。
◆構造改革の名の下で、米国流の合理主義、新自由主義による市場原理主義、激烈な競争主義、徹底した規制緩和などが、ドッと日本社会に入ってきて、契約社員、派遣社員、アルバイトが増えたことから、どうなったかと問えば、ただ一言「忠誠心」を持った従業員が急減してしまい、無責任な従業員ばかりが目立つようになった。
熟練した職人芸を極めるような従業員も少なくなっている。さらに、成果主義一本槍の役員、管理職、幹部社員まで、責任感が希薄になってきている結果、「危機管理」が疎かになり、安全管理が不十分となってきている。これらは、目に見える形での「成果」を評価できないので、なかなか給料に反映できない。大事故が現実に発生して大損害を被って初めて、その重要に気づくのである。これからの会社は、強い「忠誠心」を持った正社員を育成することに注力することが求められる。「人材」は、「人財」なのである。
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