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特集ワイド:安倍首相の「反米度」測ると 歴史修正主義的発言次々、近い支持者の極論に同調、信頼回復狙い親米的政策
毎日新聞 2014年04月23日 東京夕刊
http://mainichi.jp/shimen/news/20140423dde012010002000c.html
今夜、オバマ米大統領が来日する。昨年末の安倍晋三首相の靖国神社参拝以来ぎくしゃくしていた日米両首
脳だが、胸襟を開いて語り合えば、信頼関係を取り戻せるのでは……。甘い期待を持ちたくなるが、そう簡単にはいきそうにない。安倍さんの言動からは「反
米」のにおいが漂ってくるからだ。【吉井理記】
微笑する安倍首相のアップに「愛国者」の文字。19日発売の米タイム誌(アジア版)の表紙だ。特集記事のサブタイトルには「なぜ多くの人を不快にさせるのか」とある。
米大統領の「国賓」としての来日は18年ぶり。尖閣問題を巡り中国との対立が深まる中、安倍首相はオバ
マ大統領来日を機に日米結束をアピールして対抗するつもりだろう。沖縄・辺野古への米軍基地移設を進め、集団的自衛権の行使容認に力をそそぎ、米国の影響
が強い環太平洋パートナーシップ協定(TPP)加盟にも積極的な安倍政権だが……米国の世論は冷たい。
「親米・反米という軸を安倍さんが意識しているかは分かりません。ですが行動は極めて反米的に見えま
す」と指摘するのは、政治学が専門の三浦まり上智大学教授だ。「小泉純一郎氏は首相在任中に6回も靖国参拝したのに、米政府は反応しませんでした。しかし
昨年末の安倍首相の参拝では異例の『失望』が表明された。なぜか。小泉さんは靖国神社と関係の深い日本遺族会の支持票を獲得するため、という政治的な動機
が明らかでした。でも安倍さんは違う。思想に基づく参拝と見られています」
小泉元首相は、靖国神社に合祀(ごうし)されているA級戦犯について「戦争犯罪人」と国会答弁した。安
倍首相は著書「新しい国へ」(2013年)で「東京裁判は事後法で人を裁いた。国内的には犯罪者ではない」と主張し、東京裁判を否定する意見も紹介してい
る。これは単なる「見解の相違」では片付けられない。三浦さんは続ける。
「安倍さんは東京裁判で認定された事実を否定するなどの歴史修正主義的な思想を信じている、と見られています。政治的打算で動いているなら説得できるが、『信じている』なら合理的な説明は通用しない。米国から見たら『理解できない人物』なのです」
歴史修正主義とは、例えばドイツ極右勢力がナチスのユダヤ人大虐殺を否定するなど、自国や自説に都合が
良いように歴史を焼き直すことだ。「もしユダヤ人大虐殺はなかったと主張する国があれば、国際社会でつまはじきにされる。歴史修正主義だと批判されること
は、国家の死活に直結するほどの問題なんです」と警告する。
萩生田光一自民党総裁特別補佐は「(靖国参拝について)共和党ならこんな揚げ足は取らない。民主党政権だから、オバマ氏だから言っている」と発言。三浦さんは「民主党だろうが共和党だろうが、歴史修正主義が米国で許容されることは決してない」と断言する。
さすがに大統領訪日直前の春季例大祭(21〜23日)では参拝は見送られたが、信頼回復は容易ではない。
米タイム誌は特集記事の中で、安倍首相を「歴史修正主義者のコレクター」と呼んでいる。作家、百田尚樹
氏もその取り巻きの一人と考えられている。百田氏は、安倍首相との対談本「日本よ、世界の真ん中で咲き誇れ」で、「南京大虐殺は米軍の原爆投下などの戦争
犯罪をごまかすためにでっち上げた」「(広島の原爆慰霊碑に)本当は『アメリカ許すまじ』と書きたい」と記している。その百田氏、安倍内閣の肝煎りで
NHK経営委員に就任している。
こうした「反米」の根はどこにあるのだろうか。「親米と反米−−戦後日本の政治的無意識」などの著書が
ある吉見俊哉東大教授(社会学)は「戦中・戦前的な思考と完全に決別できなかったことが大きい」と見る。戦中、日本は天皇をいただく大日本帝国臣民という
「特権意識」でアジアを侵略した。戦後は覇権国・米国と最も親しい国という「特権意識」で、アジアへの優越感を抱き続けた。
だが冷戦後、米国の存在感が薄くなると日本はアジア諸国と正面から向き合わねばならなくなる。1990
年代「日本は戦争を本当に反省しているか」という声が上がり始めた。「米国の傘の下にいたからこそ、日本は過去を直視せずに済んできた。それが認識できな
い人たちは、アジア諸国に批判されると『米国だって東京大空襲をしたり原爆を落としたりした』『東京裁判で日本がいわれのない悪行をしたことにされた』と
逆上する。百田氏はその一例でしょう」と吉見さんは話す。
戦後のタカ派といえば中曽根康弘元首相だ。現憲法を「マック憲法」(マッカーサー憲法)と呼んで改憲に意欲を燃やしたが、首相在任中は「改憲発言」を封印。ロナルド・レーガン米大統領(当時)とは「ロン」「ヤス」と呼び合う信頼関係を築き上げた。
米国の反対を押し切ってまで靖国参拝した安倍首相。「中曽根氏までは米国に依存していれば大丈夫という感覚だったが冷戦後は違う。米国は信用できないかもしれないが、他に頼れるすべもない。それで身近な支持者の極論に同調してしまった」と見る。
とはいえ、少なくとも政策的には安倍内閣は極めて親米的に映る。これについて内田樹・神戸女学院大名誉教授は「のれん分けの発想です」と解説する。のれん分け?
「商人や職人、武将が親方や殿様に忠義を尽くすと、いずれ独立させてもらえる。戦後の自民党はずっとそ
う信じてきました。吉田茂や安倍首相の祖父、岸信介といった戦争当事者は、対米従属して懸命にゴマをすり、地力がついたら対米自立する、という戦略を採用
したんです」。もっとも米国にとっての日本は「自国の利益になる使い勝手のいい国との認識しかない。永久に『よく忠義を尽くした、本日から独立してよろし
い』などと言いません」と内田さんは見る。
「安倍首相らは『昔から続けてきた』との理由で親米政策を採用していますが、そもそもの狙いが分かって
いないから時折、反米意識が表に出て米国の不信感を招いてしまう。その不信感を払拭(ふっしょく)しようと、例えばオスプレイの飛行を許したり、集団的自
衛権行使を認めようとしたりと、さらに親米政策に走る。次は日本にとって不利な条件でのTPP加盟でしょうか。結果として米国の国益にしかなっていない」
09年に来日し、天皇陛下と握手したオバマ大統領は実にいい笑顔だった。今回、安倍首相にはどうか。
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<参照>
「TIME」4月28日号
THE PATRIOT
SHINZO ABE dreams of a more powerful, assertive Japan. Why that makes many peple uncomfortable?
「愛国者」
安倍晋三はより力強く、はっきりとした日本の夢を描いている。それがなぜ多くの人を不快にするのだろう。
http://blog.livedoor.jp/gataroclone/archives/37638345.html
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