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田原総一朗:独「シュレーダー改革」を見習うべきだ
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140423-00000003-fukkou-bus_all
nikkei BPnet 4月23日(水)10時22分配信
ドイツの元首相、ゲアハルト・シュレーダー氏について、私が詳しく知りたいと意識するようになったのは2012年夏ごろのことである。
■「欧州の病人」と呼ばれていたドイツ
消費増税関連法案に小沢一郎氏をはじめ衆参50人の議員が反対票を投じ、民主党に離党届を提出したのが2012年の7月。8月に入ると、韓国の李明博(イ・ミョンバク)大統領(当時)が突然、竹島に上陸し、さらに香港の活動家5人が尖閣諸島に上陸して沖縄県警に逮捕されている。
民主党政権は、党内から瓦解する動きが見られ始め、外交でもとくに近隣の国々との間で摩擦が強まり、まるで羅針盤を失ったかのように迷走していたころだ。
シュレーダー氏(1944年生まれ)はドイツ社会民主党(SPD)の党首を1999年から2004年にかけて務め、98年から2005年にはドイツの首相になった人物である。SPDは日本の政党でいえば民主党と社民党の中間くらいの政党と理解すればよいかもしれない。中道左派と位置付けられる。
今でこそドイツは欧州連合(EU)の盟主と呼ばれ、EU最強の経済大国としてリードしているが、20年ほど前は「欧州の病人」と呼ばれていた。理由は二つある。
■ドイツ統一で経済が低迷、国民に自己責任・負担増を求める
一つは東西冷戦が終わり、1989年11月にベルリンの壁が崩壊、経済的に停滞していた旧東ドイツを吸収する形で統一して支えなければならなかったことだ。旧西ドイツと旧東ドイツの経済格差は歴然としており、旧東ドイツへの投資が莫大な額に膨らんでドイツ全体の経済が低迷する原因となった。ドイツ統一は「政治的には成功したが、経済的には失敗だった」といわれたほどである。
もう一つは、欧州全体にいえることだが、手厚い社会保障によりそのコストが国家財政や企業経営に重くのしかかっていたことだ。
90年代に入るとドイツは低い経済成長率に苦しみ、企業経営者は雇用を増やせないでいた。投資も消費も伸び悩み、ドイツ株は大幅に下落して、それまで築かれたドイツの富は失われていった。
シュレーダー首相は2003年3月、「こうした状況の中では、国民の社会への信頼を回復するために、政府が指導力を発揮しなくてはならない」と連邦議会で演説する。そして、成長と雇用確保のための枠組みを改善しなければならないこと、企業経営者、勤労者、自営業者から年金生活者まで全ての市民が貢献しなければならないことなどを訴えた。
つまり、国民一人ひとりに自己責任を促し、すべての国民の負担を引き上げなければならない、という厳しい内容を示したのである。
■痛みを伴う構造改革「アゲンダ2010」
こうした主張は中道左派であるSPDとは思えないものである。まるで保守派、米国なら共和党、英国なら保守党の主張のようだ。
シュレーダー氏が演説で語った改革は「アゲンダ2010」という構造改革プログラムだった。2010年に向けての課題を示したのである。その柱は五つあり、雇用市場と失業保険制度の改革、公的年金保険制度の改革、公的健康保険制度の改革、そして減税である。
戦後ドイツで最も野心的な改革といわれる「アゲンダ2010」だが、派遣労働の規制緩和、人件費の抑制、保険の給付水準の引き下げといった「痛みを伴う構造改革」だったため、最後は大きな批判を浴びて地方議会選挙、総選挙で負け、2005年11月に首相の座から降りた。
その後、キリスト教民主同盟(CDU)党首のアンゲラ・メルケル氏が首相となる。シュレーダー氏が行った構造改革は、彼が首相を辞めた後に実を結び始めた。ドイツは強さを取り戻し、シュレーダー構造改革の成果をメルケル首相が受け継ぐという皮肉な結果になった。
私がシュレーダー氏について詳しく知りたいと思っていたところに出合ったのが、フリージャーナリスト熊谷徹氏の著書『ドイツ中興の祖 ゲルハルト・シュレーダー』(日経BP社)である。
■自らが犠牲になりながらドイツ再生をめざす
同書を読むと、シュレーダー氏が貧しい家に生まれ、努力して弁護士の資格を取り、いかにSPD党首になったか、そしてまるで新自由主義のような思い切った構造改革をどのように断行していったかがよくわかる。
自らが犠牲になりながらドイツの再生をめざす。この本にはそうした姿勢が見事に書かれており、シュレーダー氏を知るには格好の資料である。
安倍政権はいまシュレーダー氏の構造改革を見習うべきだと私は思う。アベノミクスの「第1の矢」「第2の矢」は成功したが、「第3の矢」である成長戦略が思うようにいかず、企業の競争力を促すまでにはいたっていない。
日本の社会保障費は毎年1兆円ずつ増えていき、国の借金は対GDP比で世界一の水準にある。社会保障費にメスを入れる必要があると指摘されながらも、その「痛みを伴う構造改革」にはなかなか着手できない。
社会保障改革と同時に、「岩盤規制」の撤廃により企業の競争力を高める改革を行う必要がある。安倍政権はシュレーダー氏の「アゲンダ2010」をぜひ学んでほしい。
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