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中国で商船三井の船舶が差し押さえられた事件を「戦争賠償」問題と絡めて報じている(騒いでいる)メディアもあるが、事案の経緯に照らせば、「戦争賠償」云々ではなく民事係争に伴う出来事として考えるべきものである。
経緯は次のようなものである(その経緯についての商船三井や日本政府の見解は?)。
現在の商船三井を構成する企業の前身企業が、日中戦争が始まる直前1936年に中国人から2隻の船舶を借りた。その後、それら船舶は日本軍に徴用され、沈没してしまう。このような経緯であったが、借り主である日本企業は、貸し主である中国人(権利承継者)に、賃貸料を支払っておらず、借りた船舶を返還できないことで貸し主に生ずる損害の賠償も行っていないという事案である。
事実そのものには争いがないのなら、争点は時効の扱いになるが、関係中国人が戦後日本の裁判所に訴えたが訴えそのものを認められなかったようだから、戦争や国交断絶という政治的事由も考慮すると、損害賠償請求権の時効を認めず、権利承継企業である商船三井に賠償金の支払いを命じた中国最高人民法院の判断に大きな誤りがあるとは言えない。
借りた船舶が沈没してしまった事由は日本軍の徴用だが、中国人は商船三井の前身企業に貸しているのだから、賠償の責は商船三井にあると言える。商船三井は、中国人に賠償したのち、日本政府に対して賠償を求めることになる。
中国人原告側と商船三井は和解交渉を進めていたようだが、商船三井に甘さがあったことは否めない。
中国では10年の時点でおよそ29億1600万円の賠償支払い義務が確定しているのだから、商船三井は、中国領域で事業活動を行うことにより、今回の差し押さえのようなリスクが発生することを承知していなければならなかった。
話は「戦争賠償」問題に移るが、中国は、先月、戦時中に起きた強制連行労働の問題に関連し、72年の日中共同声明で放棄した戦争賠償の請求について、「民間や個人の請求権は放棄していない」という公式見解を初めて打ち出している。
(それまでは、日本側(最高裁)が日中共同声明でいう戦争賠償の放棄は個人(法人も含む)の有する請求権の放棄を含むものと解したことに対し、「日本側が共同声明を勝手に解釈することに強烈に反対する」というレベルで応じていた)
日中間の「戦争賠償の放棄」は、日韓基本条約とともに締結された「日韓請求権並びに経済協力協定」でいう請求権放棄(日韓両国及び両国民がお互いに請求権を放棄)とは“性格”が違うものと言える。併合国であった韓国との財産・債権をめぐる請求権は戦争とは直接かかわるものではない。
中国は、戦争で生じる直接的被害の賠償は放棄したと言えても、それに強制連行労働でみられた不法行為や賃金不払いの請求権なども含まれるとは言い切れない。
以前も書いたが、建前は「戦争賠償の放棄」ながら、ODAで“実質賠償”を行うという歪んだ手法ではなく、対象を明確にし、きちんと表に出すかたちで賠償すべきだったと考えている。
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中国、商船三井の船を差し押さえ 戦後賠償訴訟で
ばら積み船1隻
2014/4/20 19:03
【上海=菅原透】中国当局は20日までに、海運大手の商船三井が中国で保有する大型の輸送船1隻を差し押さえると発表した。日中戦争が始まる直前に日本の海運会社に2隻を貸し出した中国企業の経営者の親族が、当時、未払いだった賃貸料や損失の賠償を同海運会社の流れをくむ商船三井に求めていた。中国側の裁判では商船三井の敗訴が確定しているが、同社が賠償に応じないため、異例の差し押さえとなった。
上海海事法院(裁判所)が19日、商船三井が中国浙江省の港で保有するばら積み船「バオスティール・エモーション」の差し押さえ執行を発表した。中国の民間が起こした戦後賠償を巡る訴訟で、日本企業の資産が差し押さえられるのは初めてとみられる。
商船三井の広報担当者は20日、船舶の差し押さえに関し「詳細について確認中」とのコメントを出した。
中国メディアによると、中国企業は1936年に2隻の船舶を日本の海運会社に貸し出したが、翌年に日中戦争が始まり、日本軍が徴用して2隻とも沈没したという。
戦後、この中国企業の経営者の親族が日本政府を相手取って日本で訴訟を起こしたこともあるが、訴えは認められなかったという。
このため、親族側は1988年に船舶を借りた日本の海運会社を引き継いだジャパンラインを相手取り、上海海事法院に賠償を求める訴訟を起こしていた。
同法院によると、2007年に親族の訴えを認め、ジャパンラインを引き継いだ商船三井に対し、約29億1600万円の支払いを命じた。10年には中国最高人民法院(最高裁)が商船三井の再審請求を棄却したことで、判決が確定していた。
その後も親族側と商船三井側は和解交渉を進めていたが、折り合わなかったもようだ。今後も商船三井が賠償に応じなければ、船舶は売却される可能性がある。
http://www.nikkei.com/article/DGXNASGM2000J_Q4A420C1000000/
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