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2014年4月18日
このタイトルに出てくる「新自由主義」「セーフティネット」「蹉跌(さてつ)」という3つの言葉を簡単に説明しておく。
○新自由主義という言葉
1980年代に入ってイギリスのサッチャー政権、アメリカのレーガン政権を皮切りに、減税、規制緩和、民営化などを軸とする小さな政府への動きである。世界の一部富裕者層はこの思想の台頭によって暴利や搾取体制を手に入れ始めた。
1973年、南米チリのアウグスト・ピノチェト将軍らの軍部による軍事クーデターで首都のサンティアゴは瞬く間に制圧され、3年間続いた南米初のジェンデ左翼連立政権は打倒された。このクーデターの背景にはミルトン・フリードマンの弟子たちである新自由主義経済のシカゴ学派(あるいはシカゴ・ボーイズともいう)が深く関与していた。この革命が、その後に猛威を振るうことになる超富裕層たちによる世界の新自由主義潮流(グローバリゼーション)のきっかけになっていることは否めない。
日本では公共事業や規制にかんして既得権を持つ官僚組織、利益団体、族議員が、小さな政府の徹底に反対してきた。つまり、政官業トライアングルという鉄のスクラム構造が一致結束して、徹底して小さな政府への動きを敵視し、それを阻止してきた歴史がある。その結果、政官業癒着構造は「鉄のトライアングル」と称され、日本の既得権益存在の代名詞となってしまった。
1990年代は戦後経済史の中でも特筆すべき重要な時期であり、日本人全体が政官業トライアングルという既得権益構造に反感を募らせ、何とかこれを切り崩せないものかという内圧が高まっていた時代でもあった。アメリカは日本の水面下で起きていたこの潮流を上手く利用し、巧妙な内政干渉によって日本の市場構造の改変に乗り出している。
それが年次改革要望書であり、その初期の露見的な経済事象が日本の金融市場の激変的改造である『金融ビッグバン』だった。これは日本人自身がフリー、フェア―、グローバルの気合を入れて一気にやってしまったように思われているが、実際はアメリカによる対日改造プログラム初期計画の遂行だった。この下敷きによって、2000年代には外国資本による邦人企業への参入が一気に加速している。
原価会計制度から時価会計制度への転向などは、無防備な外資呼び込み体制を準備する典型的なできごとだった。
1990年代からの米国による対日構造改変要求は、鉄のトライアングルに対する国内からの反撃機運が高まっていたことを米国政府は非常にタイミングよく利用しているのである。55年体制下の自民党の中では、党内に常に小さな政府派と大きな政府派が拮抗状態にあり、政策がなかなか決定されないという宿痾(しゅくあ)を抱えていた。
ここではケインズ政策をとる大きな政府派が、官僚や族議員による既得権益体制の温床として徹底的に敵視されるという大きなトレンドが起きている。1990年代から猛威をふるった、米国による新自由主義圧力を全体的、小史的に説明するには自分にはきつすぎる。だが、以上のような潮流の中で小泉政権という新自由主義の申し子のような政権が誕生した。
この新自由主義政権の実質的なかじ取りを行ったのが、現在『国家戦略特区』を設計して、その実質的な執行機関である「諮問会議」の中心メンバーになっている竹中平蔵氏なのである。竹中平蔵氏は小泉政権時代、小泉首相とともに「官から民へ」というスローガンを掲げ、前述したケインズ的要素を保っていた大きな政府派、つまりは政官業トライアングルを軸心とする勢力を不倶戴天の敵として憎悪した。
小泉氏や竹中氏は「官から民へ」体制へ転換するにあたって、これに反逆する者たちを強く憎悪、彼らを“抵抗勢力”と名付けて徹底排除の構えを採った。この悪の抵抗勢力と呼ばれた代表格が亀井静香議員だった。だが郵政民営化に抵抗し、庶民の暮らしを守ることに尽力している亀井静香議員を“悪の抵抗勢力”と位置付ける竹中平蔵氏とはいったい何者なのであろうか。
気づいてほしいが、我々がかつて悪のトライアングルと思っていた旧田中派型の政治スタイルは、日本型の修正資本主義構造だったのである。これを死守していた橋本経世会を小泉政権が完全に駆逐したことにより、日本は新自由主義型の国政体制に構造転換されてしまった。彼らが既得権益構造を打破すると言って、それをやった結果が、外資を含めた新たな既得権益構造の創設に繋がったことを植草一秀氏はかなり早い段階で指摘していた。巨大な規模の利権の付け替えが起こったのであり、その結果は桁違いに国民の権利や生活を侵害するものになったというわけである。
多くの日本人が竹中平蔵氏の巨大な詐術に騙されていることに気づいていない。新自由主義の要素はたくさんあるが、その中には必ず『規制緩和』の要素がある。この規制緩和こそ、大企業の利潤を最大化する方向性を与えることによって、庶民の暮らしを逼迫させる大元凶である。規制緩和を規制改革というネーミングに騙されて良いイメージでとらえてはならない。我々の日本を襲っている規制緩和の嵐は、世界の超富裕層1%が用いる収奪手段の1形態なのであって、これを黙って受け入れれば庶民の暮らしは破壊される。
その意味で、前大田区議会議員の奈須りえさんが国家戦略特区に精力的に斬りこんでいることは瞠目に値する。一人でも多くの人が彼女の声に耳を傾け、国家戦略特区が大企業とグローバル企業の日本再構築であり、庶民の暮らしを保護するあらゆるセーフティネットが分解されることを知ってほしい。
奈須りえさんは竹中平蔵氏らが既得権益派と呼んでいる者の正体が、実は悪辣な経済勢力派ではなく国民そのものだとおっしゃっている。この見解は重要であり、規制で守られている国民が、利潤の最大化を目論む連中からすれば悪であるという、逆説的な構造になっていることを知ってほしい。日本の社会資本の収奪を企む連中から見れば、国民や社会秩序を守る『規制』は邪魔者、障壁だから取り外すすべきものとして位置付けているのだ。
彼らが敵視する既得権益体制とは、実は国民を守っているセーフティネットを敷いている日本の内国制度であり、それに守られている全ての国民なのである。言葉を変えて言えば、彼ら規制緩和派が悪魔化している対象は、日本が今まで長い時間をかけて築き上げていた諸々の規制や内国制度であり、日本人の幸福原理を担保する最低限度のガードシステムなのである。この観点から奈須りえさんの国家戦略特区に対する危機意識をくみとってほしいわけである。
○セーフティネットという言葉
新自由主義の説明を簡略にしたかったができなかったので長めになった。まだほんの少ししか語っていない。日本人の暮らしが窮乏し、庶民のささやかな幸福感が潰えているのは、根底に竹中平蔵氏らの新自由主義体制づくりがあるからだ。だから日本人は真剣に新自由主義に向き合う必要がある。これを脱却しなければ日本人は絶対に幸福を勝ち取れずに、負け犬と奴隷化の道しかない。
さて、社会的セーフティーネットは一般には、病気・事故や失業などで困窮した場合に、憲法第25条の「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を保障する制度のこと。同条第2項には、「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」とある。具体的には、健康保険、年金、失業保険、生活保護などの社会保障制度を指す。
神州の泉が奈須りえさんに注目してほしいと強く願っているのは、彼女がこれを守ろうとして必死に活動されているからだ。「国家戦略特区」の実態を知れば知るほど、これが大企業(主にグローバル企業)の利潤の最大化と庶民の暮らしのトレードオフ構造になっていることが分かる。竹中平蔵氏ら規制緩和派が規制緩和をやればやるほど、庶民の暮らしは地獄に突き進むのである。奈須りえさんは非凡な洞察力でその構造に気づき、国家戦略特区に斬りこんでいる。
今の日本では規制緩和がセーフティネットの破壊と同義であることは間違いない。
詳しくは下記を参照にしてほしい。
○蹉跌(さてつ)という言葉
蹉跌(さてつ)という言葉は、今の若い人たちには耳慣れない言葉かと思う。1970年代や80年代を通り過ぎてきた我々の年代には耳慣れた言葉である。石川達三の「青春の蹉跌」などが知られていた。蹉跌とはつまづきという意味である。
さて、以上のようにタイトルに使った言葉を説明しているうちに、長くなりすぎて肝心の本文に入れなくなってしまったがブログだから仕方がない。もうすでに、『新自由主義による日本セーフティネットの蹉跌(さてつ)』という上記タイトルの意味はお分かりかと思う。
言いたいことは新自由主義の台頭によって、日本の庶民を守っていたセーフティネットはどんどんつまずいてしまった、大事な生活防塁がそんどん外されていく傾向にあるということがこのタイトルなのである。
本当は、不安定・低賃金・無権利の非正規労働に焦点を当て、都合のよい時に企業が労働者を切り捨てる「派遣」の構造的本質を本文で書く予定だったが、また別の機会にする。
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