http://www.asyura2.com/14/senkyo164/msg/313.html
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『ニューズウィーク日本版』2014−4・22は、「弱腰オバマとアジアの失望」という特集で、ミニチュアの星条旗取り付けた爪楊枝を持つ手の写真とともに、「頼りない超大国 同盟国を失望させ世界秩序の前提を覆すアメリカの軟弱外交」という表現を表紙に使っている。
転載する記事は、「弱腰オバマとアジアの失望」特集の一つであり、安倍首相が昨年2月の訪米で講演した戦略国際問題研究所(CSIS)の研究員が書いたものである。
まず、米国のアジア戦略について私が思うところを簡単に説明したい。
米国には朝鮮半島を中国の勢力圏とする意向が垣間見られることから、15年以降も戦時指揮権を米軍に委ねたいと考えている“保護国”根性剥き出しの韓国ではあるが、米韓関係はこれまでと違って緩やかなものになるとみている。
そのため、米国が中国を牽制するために活用できる国は、日本を除くと、フィリピンとインドネシアくらいとなる。(台湾については、中台関係の流れと台湾の自由な意志で中国との関係性を決めればいいと考えている。ベトナムは、自立的な外交で中国との関係をコントロールしようとしている)
インドネシアはかつてと違いフィリピンほどの領有権問題がない一方で経済発展を志向していることから、オーストラリアの政治力に負うかたちになっているが、米国の期待にどれほど応えるか疑問である。
米国は、スパイの対象としない“真の同盟国”であるオーストラリアと連携しながら、南西諸島を含む日本列島・フィリピン諸島・ボルネオ(カリマンタン)島・インドネシア諸島を結ぶラインで中国の海洋進出を抑制しようと考えているようだ。
そうなると、米国の“アジア戦略”にとって、経済力にも富み従米意識が染みついている日本がどこよりも重要な存在となる。
中国にしても、米国抜きで日本と直接対峙する事態は重荷だから、日本が米国のコントロール下にある方が望ましい。
これからの日本は、そのような米国と中国に挟まれながら“国益”を追求していかなければならないのである。
記事のなかで書かれている「今月下旬に中国で開催される西太平洋海軍シンポジウムの国際観艦式に、艦船を派遣することは見送った(日本が招待されなかったためだ)」という件だが、中国は、インド洋におけるMH370便の捜索に艦船を運用していることを理由に国際観艦式を中止することに決めたとされる。
勝手な推測だが、国際観艦式の中止は、日中関係が改善に向かうなかで、日本外しのイベントを挙行することを回避したかったという思いもあったのではないだろうか。
※ 参照投稿
「桝添東京都知事訪中の真意は“安倍訪中の露払い”:日中関係悪化の理由に関する石原氏の説明と教科書検定で改善に向かう日中関係」
http://www.asyura2.com/14/senkyo164/msg/312.html
「戦後レジームからの脱却」という発言や米国政権の抑制をものともせず靖国神社参拝を敢行したと思われていることから、安倍首相が、自らの意志で様々な安全保障政策を繰り出していると誤解している向きもあるやにみえる。しかし、従米政治家の代表である安倍氏が、米国支配層の意向を飛び越えて外交や軍事に関わる政策を打ち出すことはないのである。
それを示唆するように、記事には、「安倍は12年12月の首相就任以来、国家安全保障戦略の策定、国家安全保障会議の創設、防衛計画大網の見直し、特定秘密保護法の成立、武器輸出三原則の見直し、集団的自衛権行使に向けての体制づくりなど、重要な改革を推し進めている。
これらの改革はどれも、現在の日本の安全保障に欠かせないだけでなく、日米同盟においてアメリカが以前から求めてきたものだ。アメリカは現場レベルでは安倍の改革を歓迎している」という一節がある。
しかも、「政治的には中国への挑発と取られたり、「安倍に自由裁量権を与える」ことになるのを恐れており、ホワイトハウスの反応は鈍い」というオマケの一文まで付いている。
「安倍に自由裁量権を与える」(安倍氏に限らず日本支配層すべてについてだが)究極の政策は憲法改正であろう。
そう、米国支配層は、日本国憲法をないがしろにするような対米従属政策を求めても、日本が自立して対外政策を決められるようになる憲法改正を求める(認める)ことはないのである。
米軍の日本駐留と占領中に押し付けた日本国憲法が、日本を従属状態に置く必要条件だと考えているわけである。
別に“危険な”米国と喧嘩してほしいとは思わない。しかし、従米政策を継続するにしろ、米国が日本のためを思って外交政策を決めるわけではないことくらいは抑えていてほしいと思う。
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『ニューズウィーク日本版』2014−4・22
P.30〜32
「ためらうオバマ、揺らぐ日米同盟
アジア:アメリカの曖昧な姿勢が中国と対立する同盟国を不安に陥れている
J・バークシャー・ミラー(米戦略国際問題研究所太平洋フォーラム研究員)
昨年11月、スーザン・ライス米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)がジョージタウン大学で行った演説は、日本だけでなく韓国やベトナム、フィリピンの要人をも驚愕させた。
ライスは「アメリカが中国に屈服すること」を恐れる同盟国をなだめるどころか、こう言い放った。「中国について言えば、私たちは大国関係の新しいモデルの構築を模索している。競争すべきところは競争するが、アジアおよびその他の地域において、双方の利害が一致する分野では協力関係を深めたい」
バラク・オバマ大統領がもうすぐ日本を訪れるが、ライス発言の曖昧さや、ホワイトハウスの「場当たり的」に見える中国政策は新時代における日米同盟強化の障害となっている。
ライスだけではない。オバマ政権は総じて、強硬姿勢を強める中国との衝突が起きた場合は必ず日本を助ける、と明言するのを避けてきた。
しかもアメリカの国防予算は減る一方だから、東アジアでの戦略的柔軟性も損なわれる。
「外交戦略のアジア重視への転換」など口先だけではないかという懸念が高まるのは当然だ。そもそもイラクとアフガニスタンの戦争で疲弊した今のアメリカに、世界のリーダーであろうとする意欲はない。
顧みれば、米中の「大国関係」が初めて語られたのは、昨年6月にカリフォルニア州で開かれたオバマと中国の習近平国家主席の首脳会談だった。
しかし、この「大国関係」には2つの問題がある。第1に、中国はこれで、アメリカが米中二極体制を認めたと思い込んだ。アメリカ同様、中国にも「大国の利害」があり、アメリカはその事実を受け入れることを暗に認めた、というわけだ。
中国側のこの誤解のせいで、第2の問題が生まれた。各国との領土問題にまつわる中国の挑発をアメリカは黙認し、米中の「大国関係」を優先させるのではという不安が、日本などアジア諸国の問で強まったのだ。
過去1年のシリア内戦やウクライナ紛争に対するオバマ政権の消極的な姿勢も、本質は違うものの、この懸念を膨らませるだけだった。日本が安心できない最大の理由は、現場レベルの戦術的関与への不信ではない。むしろ問題は、首脳レベルの戦略的関与が薄れているという「印象」にある。
安倍の改革は貴重だが
現に戦術レベルでは、アメリカは一貫して、尖閣諸島(中国名・釣魚島)には日米安保条約が適用されると明言している。中国が一方的に設定した東シナ海の防空識別圏(ADIZ)にも強く抗議した(ただし民間機の飛行計画提出は認めた)。
さらに日本にイージス艦2隻を追加配備することを表明。今月下旬に中国で開催される西太平洋海軍シンポジウムの国際観艦式に、艦船を派遣することは見送った(日本が招待されなかったためだ)。
これらは今月初め、チャック・ヘーゲル国防長官の日本訪問時に発表された。月末のオバマ訪日前に、両国の認識のギャップを埋めておくためだ。
ヘーゲルの発言は日本で好感された。次の訪問先の中国でも、ヘーゲルは同様な発言を繰り返した。しかし一方で、この確固たるメッセージを曇らせるような出来事もあつた。
安倍晋三首相の靖国参拝そのものは、それほど大きな問題ではない。アメリカ政府は歴代首相の靖国参拝を黙認してきた。だが昨年末の安倍の参拝に「失望した」という米政府の反応は、安倍とオバマの距離が遠のきつつあるという事実を浮き彫りにした点で重要だった。
日本政府は安倍の靖国参拝が「地域の緊張の高まり」に結び付けられたことに驚き、アメリカは「参拝するな」というジョー・バイデン副大統領の進言が無視されたことにいら立った。
一方で安倍政権は日米同盟への関与を深める政策を次々に打ち出しているのに、ホワイトハウスはこれをきちんと評価していない。
安倍は12年12月の首相就任以来、国家安全保障戦略の策定、国家安全保障会議の創設、防衛計画大網の見直し、特定秘密保護法の成立、武器輸出三原則の見直し、集団的自衛権行使に向けての体制づくりなど、重要な改革を推し進めている。
これらの改革はどれも、現在の日本の安全保障に欠かせないだけでなく、日米同盟においてアメリカが以前から求めてきたものだ。アメリカは現場レベルでは安倍の改革を歓迎している。しかし政治的には中国への挑発と取られたり、「安倍に自由裁量権を与える」ことになるのを恐れており、ホワイトハウスの反応は鈍い。
安倍とオバマの間に信頼関係が確立されていないこともあって、アメリカに同盟国を守る決意はあるのか、中国と「大国関係」を目指すと表明した過ちを改める気があるのか、という疑念が日本で広がっている。
日米同盟に抑止力を持たせる上で「見掛け」が大事なのは事実だが、それだけでは足りない。いざとなれば武力の行使(あるいは武力を行使するとの警告)も必要だ。果たしてアメリカには、いざというとき中国に立ち向かう覚悟があるのだろうか?
小刻みに進む中国の戦略
もちろん、中国が直接的にアメリカの国益を大きく損なうようなことをすれば、アメリカは激しく反応するだろう。だが近い将来、そのような状況が起こる可能性は低い。中国は狭滑にも「グレーゾーン」での小競り合いを通じて、アメリカが中国に対する抑止力の行使に消極的なことを暴露できると計算しているからだ。グレーゾーンにおける紛争は唆昧で段階的なもので、越えてはならない一線がどこにあるのか分かりにくい。
東シナ海のグレーゾーンにおける領土争いが分かりやすい例であり、例えば、中国は沿岸警備隊の船を使って軍事的な活動を行っている。
同様に、南シナ海をはじめあらゆる場所で、中国は領土紛争のある区域の現状を少しずつ変えようとしている。そしてアメリカとその同盟国を中国の行動に対抗する口実を見つけにくい曖昧なグレーゾーンに誘い込んでいる。
尖閣諸島をめぐる日中の衝突はこうした曖昧な状況で起きる可能性が高い。そのためアメリカには介入回避の逃げ道を与えることになる。
グレーゾーンで衝突した場合、どの時点でアメリカは介入するのか。いくらアメリカが同盟国の安全を守ると確約しても、答えにはならない。この点は、海洋の領有権奪取を小刻みに進めたい中国に有利だ。
アメリカはアジアの同盟国を守るために、時代遅れの戦略を使い続けるつもりのようだ。それは10年前の中国を相手にした戦略で、その後にこの地域で起きた急速な変化に対応できていない。
このことを理解するために、15年前にアメリカが旧ユーゴスラビアの中国大使館を誤爆し、中国人3人が死亡した事件を振り返ろう。事件の影響は、中国に対するアメリカの優位によって最小限に抑えられた。しかし今、同様の事態が起きれば大きな危機に発展する可能性が高い。
アメリカの軍事力だけで中国を抑制しょうとする戦略は、もはや通用しない。アメリカは今後も、質・量共に中国に勝る軍事力を維持するだろうが、それを行使する気はないと中国が考えている限り、脅威とはならない。このことは日米同盟と、尖閣諸島の防衛に対する懸念に直接結び付く。
同盟国の償頼が揺らぐ
アジアの同盟国はアメリカ以外の選択肢を検討したい気持ちが強まっている
核兵器もその1つだ
中国が設定した防空識別圏に関しても、アメリカは日本との共同戦線を張ることができなかつた。そのため、識別圏内に爆撃機を飛ばせて「脅し」をかけても効果は弱かった。
ハーバード大学の研究者エージン・コーガンは最近、ナショナル・インタレスト誌にこう書いた。「中国の防空識別圏の設定を米政府が結果的に容認したことにより、アジアの同盟国の問では、アメリカは安全保障のパートナーとして頼りないという認識が深まった。同盟国にとっては、安全確保のために別の選択肢を検討したいという気持ちが強くなっている。それには核兵器の保有も含まれる」
もし、アメリカが中国に対して抑止力を行使することに二の足を踏んでいるのならば、3年後にオバマがホワイトハウスを去ってからは状況が変わると期待していいのだろうか。手短に言えば、答えはイエスだ。
日米同盟はこれまで、現場レベルでも首脳レベルでも幾多の困難を乗り越えてきた。安倍政権の大胆な国防政策は、将来に向けてよりバランスの取れた、稔合的な同盟関係を構築する下地をつくったといえる。北朝鮮に対する抑止政策の強化や、韓国を含めた3国関係の強化など、同盟の中でさらに信頼を醸成できる分野もいくつかある。
アメリカが民主党政権のままであったとしても、大統領が交代すれば、周辺海域の支配権をめぐる中国の戦術に対する見方は変わるかもしれない。
だが過大な期待は禁物だ。今のアメリカは国外での戦争に疲れ果て、内向きになつている。オバマ以後の大統領が誰であろうと、アジアまで出掛けていって「グレーゾーン」の紛争に首を突っ込もうとはしないだろう。
たとえ同盟国を助けるためであっても。」
- 迫るアジア歴訪 オバマ外交は失地回復できるか あっしら 2014/4/18 02:58:34
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