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[風見鶏]日本の右傾化は本当か
編集委員 佐藤賢
日本は右傾化しているのだろうか。中国や韓国のメディアには右傾化と断じた日本批判が目立ち、欧米メディアにも同じような論調が見える。
中韓の政府関係者と会うと議論になる。中国の経済官庁の官僚は「過去の歴史を正当化する論調が出ているじゃないですか」と息巻いた。こちらの想定通り、対日批判の宣伝戦が徹底している。韓国の外交官に聞くと「右傾化は事実だが、韓国メディアが指摘するほど傾いていない」と本音を漏らす知日派もいた。
右傾化とは何だろう。広辞苑で調べると「国粋主義・ファシズムなど右翼的思想に傾くこと」という。国粋主義は「民族性の優秀さを主張」、ファシズムは「国粋的思想を宣伝」などと書いてある。
特定の民族への憎しみをあらわにするヘイトスピーチは右傾化に当てはまるだろう。では安倍政権はどうかというと、日本民族の優秀さを唱えているわけではないので、ちょっと違う。
中韓メディアは右傾化を辞書の定義より広い意味でとらえている。右傾化の表現を使うのは(1)2012年12月の衆院選と昨年7月の参院選の自民党圧勝(2)昨年12月の安倍晋三首相の靖国神社参拝(3)集団的自衛権の行使容認や憲法改正に向けた動き――などが対象だ。
保守系議員の増加や首相の歴史問題への対応、防衛力強化が物差しになっているようだ。この定義なら、安倍政権が歴代の政権と比べて「右」を志向していると言うことはできる。
自民党の国会議員を見ると、ハト派のリベラル勢力の存在感が薄い半面、首相に近いタカ派の強硬発言が目に付く。安全保障政策の論客でもある石破茂幹事長は周囲に「俺は昔は右翼と言われたが、今は自民党の一部からは左翼と見られている」と漏らす。
首相の認識はどうか。1月30日の参院本会議で自民党議員から「最近、自民党が右傾化しているという批判を受ける」と聞かれて「右傾化などでは決してない。国民を取り巻く現実を直視した責任ある政治にほかならない」と強調した。
首相と親しい保守系の国会議員や有識者に聞くと、異口同音に「右傾化していない」との答えが返ってきた。岡崎久彦元駐タイ大使が世界の研究機関による世論調査を見せてくれた。
「もし戦争が起こったら国のために戦うか」との問いに「はい」と答えた割合は05年前後で日本15%、韓国72%、中国76%。岡崎氏は「今の日本は割合が増えていても中韓と比べたら少ないだろう。日本は少し正常化した程度で、中道化までも至ってない」と語る。
保守派の目には、戦後日本が「左」に傾いていたので、現在は「右」ではなく「真ん中」に近づいていると映る。集団的自衛権の行使容認や憲法改正は、国際基準では当たり前の「普通の国」になるにすぎない、との認識だ。
内閣府の世論調査によると、国を愛する気持ちが「強い」と答えた人の割合は昨年は58.0%で過去最高だったが、今年は55.3%。ここ数年は上がったり下がったりで愛国心が急に広がっているわけではない。20年余り前に戻った水準とも言える。
東大の菅原琢・准教授は「近隣諸国に抱く感情が領土問題で悪い数字に振れることはあるが、これは中国漁船衝突事件など出来事への反応にすぎない。日本人の意識が以前より右傾化しているという明確なデータはない」と分析する。
日本の実態を伝える外交力の重要性は増している。誤解されないためにも首相周辺の強硬論や不用意な発言は控えた方がいい。
(編集委員 佐藤賢)
[日経新聞3月30日朝刊P.2]
- 野党「保守系」が動く 現実路線/政権に接近/信条で共鳴 安保政策・政界再編のカギ あっしら 2014/4/06 03:46:12
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