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◇「結論ありき」の危うさ
第2次安倍政権で安全保障政策の取材を担当した。2月下旬に政府関係者が語った一言が心に引っかかっている。「まだ閣議決定してないんだから、議論のしようがないじゃない」。集団的自衛権の行使を可能にする憲法解釈変更を巡り、野党から、政府が閣議決定する前に国会で議論するよう求める声が上がり始めたころだった。国民の代表で構成される国会への遠慮のなさに、私は危うさを感じた。
◇憲法解釈大転換、伝わらぬ重み
国会では今後、集団的自衛権を巡る論戦が本格化する。安倍晋三首相の私的懇談会「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(安保法制懇)が今月中にも報告書を出すのを受け、首相は集団的自衛権の行使を禁じた憲法解釈の変更に踏み切る構えだ。与党内にも慎重論はあるが、閣議決定で解釈変更する首相の方針は揺らいでいない。
気になるのは、首相やその周辺の言動から、憲法解釈を変えるという行為の重みが一向に伝わってこないことだ。国のあり方を変えかねない問題なのだから、結論ありきではなく、そもそも解釈変更が可能かどうかという根本から議論し直す必要がある。
集団的自衛権は、自国が攻撃されていなくても、密接な関係にある国が攻撃を受けた場合に反撃できる権利だ。日本はこの権利を有するが、憲法上行使できないというのが政府の今の解釈だ。首相は中国の海洋進出や北朝鮮の核・ミサイル問題など東アジアの安全保障環境が厳しさを増していることを理由に、行使容認を目指している。
問題はその道筋だ。首相周辺は「過度に課してきた制約を憲法の許す範囲で緩めるだけだ」と解釈変更を正当化する。だが、自国への攻撃に対応する個別的自衛権に加え、集団的自衛権の行使も認めることは、解釈を「緩める」どころか、大きな方針転換にほかならない。首相の意向を踏まえて、内閣法制局も対応を検討しているが、職員の間では「憲法解釈を変えて集団的自衛権を認めるなんて信じがたい暴挙だ」などと抵抗感が根強い。
歴代内閣は憲法解釈の変更に慎重姿勢を保ってきた。小泉内閣が2004年6月に閣議決定した答弁書は、憲法解釈が「諸情勢の変化」や「新たな要請」を考慮すべきなのは当然としながらも、「便宜的、意図的に変更すれば政府の憲法解釈ひいては憲法規範への信頼が損なわれかねない」と指摘した。安倍政権が解釈変更を前提にした議論に終始すれば、戦後の自民党政権の歴史を自己否定するに等しい。
◇安保法制懇に専門家1人のみ
安保法制懇は第1次安倍政権時代から集団的自衛権の議論をけん引してきた。しかし、計6回にわたる会合の議事要旨を点検すると、荒っぽい主張が少なくない。「政府解釈はスタートから誤っている」「(行使容認は)憲法解釈の問題ですらなく、政策的に決定すればいい」。首相は2月20日の衆院予算委員会で「安保法制懇で精緻な議論をしている」と答弁したが、少なくとも憲法解釈を巡って突き詰めた議論が交わされた形跡はうかがえない。
首相決裁で設置された私的諮問機関だから、メンバーは自由に意見を開陳していい。ただ、14人全員が集団的自衛権の行使容認派で、憲法の専門家は1人だけ。あとは国際政治学者や元外交官、首相に近い財界人らという構成では、報告書も反対・慎重派への説得力を持たないだろう。
首相が第1次政権で安保法制懇に深く関わった外務省出身の小松一郎氏を内閣法制局長官に起用したことも不用意だ。小松氏は法制局の勤務経験がなく、憲法の専門知識があるわけでもない。異例の人事は首相の決意の表れとしても、当の小松氏は最近、国会答弁や言動で物議を醸し続けている。首相は2月12日の衆院予算委で「(憲法解釈の)最高責任者は私だ。そのうえで選挙で国民から審判を受ける」と大見えを切った。首相としては「当たり前のことを言っただけ」(政府高官)なのかもしれないが、時の首相が政策判断で自由に解釈変更ができるという趣旨にも取れる。自民党からも批判の声が上がったのは、安保法制懇の運営や法制局長官人事に象徴される首相の前のめりな姿勢と無縁ではないだろう。
昨年7月の参院選で念願の勝利を収め、いよいよ「安倍カラー」を打ち出したいという首相の心情は理解できる。しかし、集団的自衛権に関する憲法解釈を変えるかどうかは国の針路を決める問題だ。最高責任者だからこそ、結論を急ぐことなく、国民の合意を幅広く取り付ける努力を求めたい。
http://mainichi.jp/shimen/news/20140402ddm005070038000c.html
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