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2014.03.30 大阪出直し市長選は来年4月の統一地方選の前奏曲だった、大阪維新は来年4月の府議選・市 議選で没落し一掃されることだろう(リベラル21)
〜関西から(135)〜
広原盛明(都市計画・まちづくり研究者)
http://lib21.blog96.fc2.com/blog-entry-2738.html
久方ぶりに橋下維新のニュースが全国版で流れたのでもう繰り返さないが、今回の大阪出直し市長選の特徴を一口で言えば、橋下氏は「選挙に勝って、民意を失った」の結果に終わったと言える。それは何よりも当選した橋下市長が記者会見に現れず、代理の松井知事がたった1人で苦し紛れの会見に応じたことにも象徴される。橋下氏は公職選挙法にもとづき当選したものの、史上空前の“白票”に象徴されるように、実態は“不信任投票”と言う有権者の手荒い洗礼を受け、市民から総スカンを食って民意を失ったのである。
3月23日の開票終了後、さすがの橋下氏も記者会見に顔を見せることはできなかった。当選した本人が記者会見に出られないほど開票結果にショックを受け、どのように弁明するか頭の整理ができなかったからだろう。そこで身代わりの松井知事を出し、「市長は明日からの公務の準備があるから出られない」との下手な(見え透いた)言い訳をさせたわけだ。
その点、松井知事は正直だ。「一時は投票率が10%台になるかもしれないと思っていた」と舞台裏の懸念を率直に告白している。史上最低の投票率はそれほど維新にとっては打撃だったのであり、どのように言い訳するかがわからないほど維新内部は混乱を極めていたのである。ところが翌日24日の記者会見では、驚くべきことに橋下市長は一転して強気に出た。投票率よりも得票数を前面に出し、「歴代市長より多い37万票をいただいた。大阪都構想の議論を進め、最後は住民投票で是非を決めることへの信任を得た」と強気そのものの発言に終始したのである。その真意はなにか。
橋下氏は稀代の“トリックスター”だ。彼が右手を出すときは左手で何をしているかをよく見なければならない。記者会見の模様を報じた各紙は、一応言葉の裏を解説したものの、実は橋下氏の本当の狙いを解き明かしていない。おまけにこれまで取材拒否をされてきた朝日新聞は(何らかの取引があったのか)、3月27日の紙面で橋下市長のインタビュー記事を何の(批判的)解説もなく大々的に掲載して、その言い分をそのまま紹介している。内容はまるで維新の機関紙とも言えるもので、メディアとしては見苦しいことこの上ないと言うべきだろう。
私の分析は、橋下市長が強気の発言に打って出た背景には、このままで行くと来年4月の統一地方選で維新府議・市議が壊滅しかねないと言う危機意識があるからというものだ。橋下氏自身はもはや大阪都構想も住民投票も断念せざるを得ない状況に追い込まれており、それを覆すことは不可能に近い。その意味で大阪維新の会の政治生命はもはや終わったのも同然であり、どうやって切りをつけるか迫られていると言える。しかし大阪都構想は大阪維新の会の「レゾンデートル」(存在意義)であるがゆえに、それが実現不可能になったとそのまま言うわけにいかない。大阪都構想を放棄した瞬間に維新は即崩壊するからであり、橋下氏は依然として「大阪都構想はやる」と府議・市議たちに言い続けなければならないのである。これが強気発言の舞台裏であり政治的背景だ。
一方、大阪維新の会の府議・市議たちは動揺の極みにある。1年後に迫っている統一地方選で自分が当選できると思っているのは、ごく一握りの議員を除いてほとんどいない。多くの議員は橋下氏にこのままついていくか、それとも離れるかを迷いに迷っている。しかし大半の議員は親離れのできない未熟な「橋下チルドレン」だから、自立できる状態にない。離党できるのはそれだけの実力のある議員に限られるのである。
橋下氏および維新幹部の目下の焦眉の課題は、この「迷える子羊ども」を群れから離さないことだ。維新府議団幹事長は24日の府議団総会で「『無駄な選挙』と言われた中で、前回の地方統一選を上回る票を取った。悲観することはない」と呼びかけたと言う(朝日新聞、3月26日)。これが“橋下37万票発言”の政治背景をすべて物語っている。つまり橋下市長に投じられた37万7千票は、2011年4月の大阪市議選で維新が得票した33万7千票よりも4万票も多いので「安心しろ」というわけだ。
だが、この呼びかけは慰めでしかない。橋下市長の得票数は前回市長選の75万票から半減したのであるから、次期統一地方選では維新府議・市議の得票数も半減する(あるいはそれ以上に減る)と見なければならない。知名度ゼロ、実績ゼロ、外人部隊の新人候補たちが前回当選できたのは偏(ひとえ)に「橋下ブランド」のお陰であって、それがなければ彼らは吹けば飛ぶ「紙切れ」のような存在だからである。
3月24日夜、府議会では自民党提案の選挙区区割り変更案が可決された。来年4月の府議選から合区・再編で9選挙区が新設され、うち7選挙区で維新現職同士が重なるのだと言う(朝日、同上)。維新は前回府議選の1人区では圧勝しているので、1人区が合区すれば2人のうち1人が自動的に減ることになる。この事情は1人区と2人区の合区の場合でも基本的に変わらない。
しかしそれ以上に、選挙区が変わらなくても1人区では維新がほぼ“全滅”すると言うのが私の見立てである。1人区(小選挙区)の恐ろしさは「たった1人」しか当選できないので、維新ブームに乗って当選した府議は足場がないので議席を維持することはきわめて難しい。「追い風」が「向かい風」に変わったとき、維新ブームに乗って当選した(だけの)議員たちにはそれに耐えるだけの体力が備わっていないのである。
大阪市議会選挙区の場合は1人区はないが、2人区が6区、3人区は9区ある。維新が議席を持っていないのは3人区の西淀川区だけで、2人区では全て1議席を確保し、3人区では2議席確保が4区、1議席確保が3区あって、いずれも議席数の少ない選挙区で維新が圧倒的なシェアを占めているのが特徴だ。これは議席数が少ないと「小選挙区効果」があらわれ、そのときの風に乗った候補が当選しやすいことの反映だろう。
しかしこのことは、次期市議選では府議選と同様、維新は激しい逆風にさらされることになる。得票数が半減すれば2人区、3人区での議席がほぼゼロになることも考えられ、全体の議席数が2分の1から3分の1に激減することもあながち的外れとはいえない。そのことは誰よりも維新市議自身が日々実感していることであり、今度の出直し市長選はなによりもその証となったのである。
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