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[風見鶏]与野党が見つめる「第2幕」
編集委員 坂本英二
「思ったほど輸出が伸びず、円安の効果を過大評価していたかもしれない。4月以降の景気が心配だ」。自民党のベテラン議員の顔色がさえない。
関心を示すのは日本の産業構造の変化だ。「自動車の海外生産が増え、電機の商品力は低下。好調なのは造船ぐらいじゃないか」。安倍内閣での大胆な金融緩和は円安や株高で景気回復への期待を高めたが、消費税率が8%に上がるショックを吸収する力強さには欠けると不安視する。
野党にも景気の先行きを厳しく見る声が多い。こちらは政局的な思惑が絡んでの発言だ。
日本維新の会の有力議員は「半年もたてば日本経済の復元力の弱さが鮮明になって政府・与党への逆風が強まる。それまでに何とか野党再編の道筋をつけたい」と語る。
維新などとの連携に動く結いの党の江田憲司代表は「安倍政権は株が上がっているから支持率が高いだけだ」と手厳しい。「消費増税の影響を見くびってはいけない。財政再建は重要だが、実体経済が動き出すのをあと1〜2年待てばよかった」と指摘する。
江田氏は1996年に発足した橋本内閣の首相秘書官として、政権運営の怖さを思い知った。いまの第2次安倍内閣は取り組む課題で共通点が多い。
橋本龍太郎首相は社民、自民、さきがけ、安倍晋三首相は民主、自民、公明の3党合意を前政権から引き継ぎ、就任の約1年3カ月後に消費増税を迎えた。
両首相はともに日米防衛協力のための指針(ガイドライン)の改定や米軍普天間基地の返還を推進。ロシアとの北方領土問題の解決も目指した。一方で靖国神社の参拝により、中国や韓国との関係がきしんだ。
政策テーマがこれだけ重なるのは偶然ではない。財政再建や外交・安全保障の問題は、どれも重要な長年の懸案だ。逃げずに取り組む姿勢は「本格政権の証し」とも言える。
安倍首相の手腕が試されるのはこれからだ。橋本内閣は増税から半年余りで経済の変調が鮮明となり、支持率が急落した。「当時は金融機関の不良債権問題が重荷だった。今とは経済状況が違う」との分析もあるが、日本経済の行方に世界が注目している。
1月下旬にスイスで開かれた世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)。米コロンビア大のジョセフ・スティグリッツ教授は公開討論会で「97年に日本は消費税率の引き上げで景気が失速しましたよね。今はその時と同じように不安定な時期を迎えている」と指摘した。他の出席者からも「金融緩和と財政政策に続く、成長戦略の『第3の矢』がまだ放たれていない」との声があがった。
安倍首相は橋本内閣のつまずきを教訓にしてきた。景気動向や政権の求心力の行方をうかがうのは野党だけではない。予兆は少しずつ現れている。
ある自民党幹部は、首相が重視する集団的自衛権の行使容認への党内からの批判の高まりについて「慎重論が根強い公明党との信頼関係にヒビを入れるなら倒閣も辞さないとのシグナルだ」と解説する。
橋本内閣は消費増税が折り返し地点となって、翌年夏の参院選で惨敗し総辞職した。安倍内閣の安定度は近年になく高いが、首相は来年9月に自民党総裁の任期切れを迎える。
何事も逆算で動くのが永田町。「安倍内閣の強みは経済だ」と言い切れる状況はいつまで続くのか。与野党を巻き込んだ駆け引きが始まっている。アベノミクスの真価は4月からの「第2幕」で問われる。
(編集委員 坂本英二)
[日経新聞3月23日朝刊P.2]
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