http://www.asyura2.com/14/senkyo162/msg/921.html
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生活の党・副代表の主濱了・参議院議員は、3月16日にNHK日曜討論に出演し[文献1]、「憲法九条の解釈は,戦後から現在まで長い年月をかけて,言わば内閣と国会が共同で築き上げてきたものであるので、一内閣の閣議決定によって軽々に変更は行なわれるべきではない」としながらも、「憲法九条が容認している自衛権の行使。これは,日本が直接攻撃を受けた場合,あるいはいわゆる周辺事態法に言う日本の安全が脅かされる場合に限られる」という発言をおこないました[文献2]。
すなわち、生活の党の主濱副代表は、安倍内閣による憲法解釈の変更を非難しながらも、「日本が直接攻撃を受けた場合,あるいはいわゆる周辺事態法に言う日本の安全が脅かされる場合には、憲法九条が容認している自衛権の行使が認められる」と述べました。
この主濱副代表の発言は、生活の党の鈴木克昌代表代行・幹事長が3月5日発表した「生活の党としては、現行憲法9条が容認している自衛権の行使は、我が国が直接攻撃を受けた場合及び周辺事態法にいう日本の安全が脅かされる場合において同盟国である米国と共同で攻撃に対処するような場合に限られるものと考えます」という見解[文献3]に基づいていると見られます。
拙稿[文献4,5]において指摘したように、この条件は、安保法制懇の北岡伸一座長代理(国際大学長)が2月21日の記者会見で示した、歴代政権が憲法上、禁じてきた集団的自衛権の行使を可能にするための「5要件」[文献6]である、
(1)密接な関係にある国が攻撃された場合
(2)放置すれば日本の安全に大きな影響が出る場合
(3)当該国からの明示的な支援要請がある場合
(4)第三国の領海通過では許可を得る
(5)首相が総合的に判断して国会承認を受ける
のうちの一部の要件でしかありません。
この5要件を満たす条件においても、日本が直接攻撃を受けていないにもかかわらず日本が武力行使をおこなうことは、現行憲法では認められません。
もともと周辺事態法(注1)では、「周辺事態」について、「そのまま放置すれば我が国に対する直接の武力攻撃に至るおそれのある事態等我が国周辺の地域における我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態」としか定めていませんので、安倍首相の安保法制懇の答申案の5要件によって、自民党の国家安全保障基本法案 (概要)の第10条(国際連合憲章に定められた自衛権の行使)[文献7]に挙げられている自衛権行使のための要件に比べて、特に制約が強められているわけではありません。
生活の党は、実質的に集団的自衛権行使を容認し、しかも、そのための憲法解釈の変更は不必要だと主張していることになります。
おそらく、生活の党は、「いわゆる周辺事態法に言う日本の安全が脅かされる場合」に限られるという制約をつけることにより、自民党の国家安全保障基本法案に書かれている自衛権の発動要件と異なり、憲法解釈の変更必要でなくなるという主張をしたいのでしょう。そして、安倍首相の安保法制懇の答申が出てくると、生活の党の提案と同じく、「周辺事態」という制約が加わっていることにより、安保法制懇の答申の「自衛権」を容認しても現行憲法の解釈の変更は必要ない、という論陣を張り、安倍首相の集団的自衛権容認の味方をするつもりなのでしょう。
このような生活の党の態度は、議会の一角を占める政党として、真に姑息であり、真に不適切だといわざるをえません。
これは、生活の党が、民主党の一部や結の党の集団的自衛権行使容認に反対する人たちを説得して彼らと連携した上で、安倍首相に集団的自衛権行使を容認する法律を通しやすくさせるために考えたトリックなのかもしれません。
生活の党は、議員をだませても、有権者をだますことは、もうできないと思います。
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【注】
(注1)周辺事態法
周辺事態法では、自衛隊が活動できる地域が後方地域(我が国領域並びに現に戦闘行為が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる我が国周辺の公海及びその上空の範囲)に限られ、活動内容も武器や弾薬の輸送など米軍への後方地域支援、後方地域捜索救助活動、船舶検査活動その他の対応措置に限られています。
武器の使用(注2)も、自己又は自己と共に当該職務に従事する者の生命又は身体の防護のためやむを得ない必要があると認める相当の理由がある場合に、その事態に応じ合理的に必要と判断される限度でしか認められず、武力行使(注3)や他国軍隊の武力行使との一体化はおこなえません[文献8]。
(注2)武器の使用
火器、火薬類、刀剣類その他直接人を殺傷し、又は武力闘争の手段として物を破壊することを目的とする機械、器具、装置をその物の本来の用法によって用いること[文献9]。
(注3)武力行使
我が国の物的・人的組織体による国際的な武力紛争の一環としての戦闘行為[文献9]。
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【参考文献】
[1]”集団的自衛権「自民党内で慎重に議論すべき」”,(NHK,2014/03/16).
”生活の党の主濱参議院会長は「9条の解釈は国会と内閣が共同で築き上げてきており、一内閣の閣議決定で軽々に変更することは許されない。9条が容認する自衛権行使の範囲を変えるならば、憲法そのものを変えるべきだ」と述べました。”
(http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140316/k10013012311000.html)
[2]”参議院議員 主濱了 生活の党 ・副代表 NHK日曜討論 出演”,(ブログ「銅のはしご」,2014/03/17).
”参議院議員 主濱了 生活の党 副代表
まず,憲法九条の解釈は,戦後から現在まで長い年月をかけて,言わば内閣と国会が共同で築き上げてきたものだということなんですよ。
国会審議を経ることなく,一内閣の閣議決定によって軽々に変更は行なわれるべきではない。許されない。こう思っております。
憲法九条が容認している自衛権の行使。これは,日本が直接攻撃を受けた場合,あるいはいわゆる周辺事態法に言う日本の安全が脅かされる場合に限られる。と,生活の党は,考えておりまして,もしこれを変えるんであれば,憲法そのものを変えるべきであろうと,考えております。”
(http://4472752.at.webry.info/201403/article_17.html)
[3]” 集団的自衛権の解釈変更方針について”,(生活の党,2014/03/05).
”生活の党としては、現行憲法9条が容認している自衛権の行使は、我が国が直接攻撃を受けた場合及び周辺事態法にいう日本の安全が脅かされる場合において同盟国である米国と共同で攻撃に対処するような場合に限られるものと考えます。一方、日本に直接関係のない紛争のために、自衛隊が同盟国の軍事行動に参加するということは、歯止めなき自衛権の拡大につながりかねないものであって、現行憲法9条は全くこれを許していないと考えております。”
(http://www.seikatsu1.jp/activity/declaration/20140305suzuki-danwa.html)
[4]”生活の党が安倍内閣の安保法制懇と同じく、周辺事態法を援用して集団的自衛権の発動要件に(新共産主義クラブ)”,(阿修羅掲示板,2014).
(http://www.asyura2.com/14/senkyo162/msg/734.html)
[5]”安倍内閣の安保法制懇は周辺事態法を援用して集団的自衛権の発動要件に(新共産主義クラブ)”,(阿修羅掲示板,2014).
(http://www.asyura2.com/14/senkyo162/msg/734.html)
[6]”集団的自衛権「5要件」 自衛権発動との矛盾消えず 安保法制懇”,(しんぶん赤旗,2014/02/23).
(http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2014-02-23/2014022302_02_1.html)
[7]”国家安全保障基本法案 (概要) 第10条”,(自民党,2012).
”第10条
(国際連合憲章に定められた自衛権の行使)
第2条第2項第4号の基本方針に基づき、我が国が自衛権を行使する場合には、以下の事項を遵守しなければならない。
一 我が国、あるいは我が国と密接な関係にある他国に対する、外部からの武力攻撃が発生した事態であること。
二 自衛権行使に当たって採った措置を、直ちに国際連合安全保障理事会に報告すること。
三 この措置は、国際連合安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置が講じられたときに終了すること。
四 一号に定める「我が国と密接な関係にある他国」に対する武力攻撃については、その国に対する攻撃が我が国に対する攻撃とみなしうるに足る関係性があること。
五 一号に定める「我が国と密接な関係にある他国」に対する武力攻撃については、当該被害国から我が国の支援についての要請があること。
六 自衛権行使は、我が国の安全を守るため必要やむを得ない限度とし、かつ当該武力攻撃との均衡を失しないこと。
2 前項の権利の行使は、国会の適切な関与等、厳格な文民統制のもとに行われなければならない。”
(http://www.jimin.jp/policy/policy_topics/117613.html)
[8]”武器使用 周辺事態、装備守るため可能(ガイドライン法案Q&A)”,(朝日新聞朝刊,1999/01/31).
(http://nippon.zaidan.info/seikabutsu/2002/01257/contents/105.htm)
[9]阪田雅裕・編著『政府の憲法解釈』(有斐閣,2013)p.90.
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