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http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140317-00000010-sasahi-pol
AERA 2014年3月24日号
高支持率を背景に、次々安倍カラーの政策実現に向けて加速する安倍政権。高支持率を支えるのはネット世代とも言われるが、
実は2千万もいるロスジェネは政治そのものに背を向け始めている。(編集部・太田匡彦)
自分が知る限り、地元で賛成している人はひとりもいない。
「なんで、そんなことができちゃうんだろう」
宮城県南三陸町が拠点の一般社団法人「復興応援団」代表理事、佐野哲史さん(39)は粛々と進む防潮堤計画をそう嘆く。
震災復興支援に携わるようになったのは、2007年7月の新潟県中越沖地震からだ。直前まで、民主党の若者対策の全国キャラバンで、運営責任者のひとりとして活動していた。社会や国をよくするために、若者と政治を結ぶ「懸け橋」に──そんな思いでキャンペーン運営を受託するかたちで携わっていた。
慶應義塾大学在学中の1997年には、信頼できる政治家を当選させるためのNPO法人「ステイツマン」を立ち上げている。佐野さんは、ロストジェネレーションと呼ばれる同世代の政治参加を促す「仕掛け人」の一人だった。それがなぜ、政治とかかわりが薄い分野に活動の場を移したのか。転機になった07年7月をこう振り返る。
「07年の参院選で民主党のキャンペーンをやったが、俺たちは本当に社会の役に立てたのか? そんな疑問が募った」
疑問の先に、社会や地域にある課題を住民と一緒に直接解決する、という答えを見いだした。東日本大震災後の11年8月、被災地で復興応援団を立ち上げた。いま被災地の交流人口拡大を目指して、首都圏からのボランティアツアーなどを仕掛ける。復興の最前線に身を置いていると、政治への「無関心」が自分の中に広がるのを感じる。
「以前は意識的に政治とリンクを張ってきたが、いまは南三陸町の防潮堤のように政治が作る制度と現実の乖離が激しくて、もう政治とリンクする気持ちを持てなくなった。自分たちで解決手段を模索するようになっています」
72〜82年に生まれ、バブル崩壊後に社会に出たロスジェネ。約2千万もの人口を抱えるこの世代は05年の小泉郵政選挙や09年の政権交代選挙などで存在感を示してきた。ところがここにきて、政治参加のうねりが急速に後退しつつある。
●分裂と階層の固定化
自民党が大勝し、安倍晋三政権が生まれた12年12月の総選挙で、30代の投票率は50.10%にとどまった。09年総選挙からの下落幅は13.77ポイントと全年代で最大だった。安倍政権への信任が示されたとされる13年7月の参院選では、43.78%まで低迷した。『若者を殺すのは誰か?』などの著者、城繁幸さん(40)は、この要因を安倍政権がロスジェネの受け皿になっていないためだと言う。
「構造改革を標榜した小泉政権は確実に受け皿だった。民主党も元は構造改革政党だったからロスジェネの支持を集めた。ところが現在、与野党ともにこの世代が求める政策を掲げない」
本誌は同世代のキーマン10人に取材するとともに、全国の30代500人にアンケートを行った。その結果からは、安倍政権に一定の評価を与えているようにも見える。シンクタンク「青山社中」筆頭代表の朝比奈一郎さん(40)は、その評価は特に経済政策に対してだ、と指摘する。
「金融緩和というアベノミクスの『1本目の矢』の印象が大きく、ツケの後回しである『2本目の矢』の財政出動への問題意識は薄まり、『3本目の矢』である成長戦略は安倍総理が出すと言い続けている。結果、改革派と認識され、評価を得ている」
実際、「支持する」政策は圧倒的に「金融緩和」。「支持しない」人たちが評価できないとする政策で、「消費増税」や「歳出総額96兆円の14年度予算案」などが上位に来るのも、その裏返しとみられる。
フリーライターの赤木智弘さん(38)は、一部が40代に突入したロスジェネで、分裂と階層の固定化が起きていると分析する。
「数年前なら、この世代の正社員は失業の危機を実感していて、非正規社員とも思いが共有できた。ところがその交換可能性が徐々に減り、正社員はいまの会社や立場にしがみつこうとする。安定した人たちは安倍政権に取り込まれ、あぶれた人たちの存在を見ようとしない。そして安倍政権は、再分配政策には何も手を打とうとしていない」
●互助しようという意識
目立つのが、支持・不支持にかかわらず、政策が「わからない・(評価するものが)特になし」とする回答だ。2月の都知事選については、「投票に行かなかった・支持したい人がいなかった」が54.4%にのぼっている。
「安倍政権や自民党政権に対する支持は、積極的に投票に行こうという熱狂的なものではない。冷静で、ある意味、消極的な支持なのです」(朝比奈さん)
世代として堅実になってきたとも言える一方で、若者の政治への無関心が、質を変えて顕在化してきているのではないか。ヤフー副社長で、06年に政治に関する情報や評価を掲載するサイト「ヤフー!みんなの政治」を立ち上げた川邊健太郎さん(39)も、ロスジェネの政治参加を促してきた「仕掛け人」だった。この世代の政治への意識を考えるうえで、東日本大震災の影響が大きいと話す。
「3・11を境に、政治に過度な期待をしなくなった。自分たちで互助しようという方向にパラダイムが変わった」
その変化を、急速に発達したソーシャルメディアが後押ししていると言う。
若年投票率向上を目指し、議員インターンシップなどを手掛けてきたNPO法人「ドットジェイピー」理事長の佐藤大吾さん(40)もこう見ている。
「安倍政権がどうこうということは、本当に意識していない。行政や政治家に頼るという発想が、そもそもない」
こんなたとえ話を例に引く。50、60代以上の人の場合、目の前に困った人がいれば、役所や政治家のもとに連れて行く。ところがロスジェネの場合、自らその人を助けようとし、場合によってはソーシャルメディアを使って協力を呼びかける。
「自分たちの問題を自分たちで解決するための手段として、政治があるのかもしれない。その意味で政治は、寄付行為やボランティア活動、社会起業家になるなど、数ある手段の一つになっていると思う」(佐藤さん)
自分たちの問題を自分たちの手で、という考えは社会起業家を生み出した。病児保育サービスなどを展開するNPO法人「フローレンス」代表理事の駒崎弘樹さん(34)もそのひとり。駒崎さんの政治とのかかわり方は、今後のロスジェネの姿を先取りしているのかもしれない。
●政治家とは対等
「政治が社会をよくしてくれるとは思っていなくて、私たちが社会をよくできるように、政治に参加していく、というのが正しい態度だと思う」
NPOとしての事業活動は、目の前の人を助けられる一方で、問題の根源である制度や法律に影響を及ぼすことは難しい。だから駒崎さんは、政治家や行政にロビー活動も行ってきたのだ。
93年に設立され、社会起業家を支援してきたNPO法人「ETIC.」の代表理事、宮城治男さん(41)は、こう話す。
「政治や行政が解決できない課題に実行力をもってアプローチできているのが、私たち社会起業家。政治家とは対等のパートナーという感覚で、実際、彼らのほうからアクセスがある」
特定政党への熱狂的な支持はありえず、同世代の政治家や官僚で思いや志が同じであれば、党派を問わず一緒に課題にあたる。一方で投票という行為が、課題解決の方法として「相対的に合理的ではない」と思える世代なのだと、宮城さんは言う。
●同世代に投票を
だが同時に、ロスジェネが政治参加に消極的になってきたことへの危機感が、同世代のなかで改めて高まってきてもいる。
公共経済学が専門で、世代間格差の問題などに取り組む法政大学准教授の小黒一正さん(40)は、財政の観点から危機感を募らせる。
「安倍首相は憲法改正にばかり関心が向かい、財政問題には何も手を打とうとしていない。このままではロスジェネは、たいへんなツケを払わないといけなくなる。もはや破綻しないための研究ではなく、破綻処理の方法を研究したほうがいい状態」
現在の社会保障制度などを存続させる前提で、国際的な公約である20年度時点のプライマリーバランス黒字化を達成するためには、消費税10%ではとても足りない。25年には団塊の世代が皆75歳を超え、財政収支はさらに悪化する。
「本来なら私たち世代が投票に足を運び、財政問題に取り組んでくれる同世代の政治家を当選させなければ」(小黒さん)
元千葉県市川市議で、「ワカモノ・マニフェスト策定委員会」メンバーの高橋亮平さん(37)は、安倍政権が構造改革に踏み込んでいけるかが、ロスジェネにとって重要だと言う。
「既得権益層の声に押し切られれば、最悪の事態に陥る。成長戦略や社会保障制度の見直しを実行し、財政健全化を進めていかなければ、負担は僕ら世代やその子どもに押し付けられる。むしろいままで以上に、政治に関心を持たなければいけない」
ヤフーの川邊さんは、政治参加への意識が薄いロスジェネが、決して社会に対して問題意識が低いわけではないことに期待する。今後、ロスジェネが歩む道は二つ。ひとつは自分たちの相互作用で問題を解決する流れがより強くなる道。そして、
「大きな反作用が出てくる可能性もある。日本をめぐる状況がより悪くなり、一方でネットの力がより強くなるタイミングで、一気に政治への関心が高まるかもしれません」
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