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<集団的自衛権の行使容認は利益か損失か>評論家 孫崎享
http://www.asyura2.com/14/senkyo162/msg/879.html
投稿者 赤かぶ 日時 2014 年 3 月 17 日 13:00:00: igsppGRN/E9PQ
 

日米共同訓練 離島奪還訓練で、海上の輸送艦からヘリコプターで降り立ち、展開する陸上自衛隊員ら−−米=2013年06月17日撮影(毎日新聞社)


<集団的自衛権の行使容認は利益か損失か>評論家 孫崎享
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140317-00000001-nronten-pol
日本の論点 3月17日(月)12時28分配信


◇集団的自衛権は自衛隊を米軍の“傭兵”にするだけで、東アジアの安定にはまったく寄与しない 

孫崎 享(評論家)

 ◇日本防衛のためなら安保条約で十分な理由

 集団的自衛権の推進者が指摘する理由に次の2つがある。

(1)中国の軍事大国化が進み、海洋進出が活発になる。尖閣諸島の防衛を含め、米軍にますます依存しなければならない。

(2)日米同盟は日本の基軸である。日本は米国に一方的に守ってもらっているので、日本も軍事的貢献をしなければならない。

 この代表的見解は、小泉元首相が2004年6月27日のNHKの討論番組で話した論拠であり、彼は、「日本を守るために一緒に戦っている米軍が攻撃された時に、集団的自衛権を行使できないのはおかしい。憲法を改正して、日本が攻撃された場合には、米国と一緒に行動できるような形にすべきだ」と述べた(*1=編集部注)。

 だが、日本防衛のためには、すでに日米安保条約がある。何も新たに集団的自衛権を設ける必要はないのだ。

 日米安保条約の第五条では「各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従って共通の危険に対処するように行動することを宣言する」と規定されている。

 しばしば、「米国が一方的に日本を守るだけであって、日本は何ら自国の防衛に貢献していない」という議論があるが、これは正しくない。「日本を守るために一緒に戦っている米軍が攻撃された時には、日本は行動をとること」が条約上の義務になっているのである。

 ◇全世界に拡大される自衛隊の行動範囲

 ではなぜ、政府は集団的自衛権の行使を認めようとするのか。

 それは安保条約と比較すれば解る。安保条約には二つの縛りがある。一つは「日本国の施政の下にある領域」という縛りである。もう一つは「いずれか一方に対する武力攻撃があった時」と限定している点である。

 つまり、集団的自衛権の行使を認めることによって、対象となる地域を「日本国の施政の下にある領域」から「全世界」に拡大することができるのだ。

 2013年10月16日の時事通信は、次のように報じている。

「政府の『安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会』座長代理の北岡伸一国際大学長は、集団的自衛権の行使などを可能にした場合の自衛隊の活動範囲について、『地球の裏側で行動することは論理的にはあり得る』と述べた」

 なぜ自衛隊が地球の裏側に行く必要があるのか。それは米国に要請されるからである。

 では、どのような時に集団的自衛権が行使されるかを考えてみよう。

 安保条約では「いずれか一方に対する武力攻撃があった時」と限定している。しかし集団的自衛権では、「国際的安全保障環境の改善のため」という理由がよく指摘されるように、「相手の攻撃」の存在が必ずしも前提となっていないのである。

 この点、あたかも集団的自衛権は国連憲章で認められた権利であるかのような説明がなされるが、じつは国連憲章の理念とも異なる。国連憲章は第51条(*2)で「この憲章のいかなる規定も、国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間、個別的又は集団的自衛の固有の権利を害するものではない」と集団的自衛権は認めているが、あくまでも「国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合」に限定している。

 ◇日本にとって何一つプラスにならない

「まあ、問題はあろうが、集団的自衛権の行使を認めてもさしたる害はない。日米関係が重要だからいいんじゃないの」という声がある。

 だが、これは間違っている。

 認めれば、まず第一に、日本は「国際的安全保障環境の改善のために」米軍と一緒に行動、つまり軍事行動に参加することになる。それは先方がまだ軍事行動を行っていない場合を含むのだ。日米が軍事行動を起こせば、当然、先方は報復措置を考える。今だったら、中東やアフリカ諸国には日本にテロを行う理由はない。しかし、日本の方から攻撃を仕掛けるなら、これらの国や団体は、日本に関するテロを考えるだろう。いわば、起こるはずのなかったテロ行為をわざわざ呼び込む行動になるのだ。

 第二は対北朝鮮である。

 集団的自衛権の行使容認では、「同盟国を攻撃する弾道ミサイルをMDシステム(*3)で撃破する」ことが想定されている。北朝鮮のミサイルが米国に飛んで行く時、約1000キロメートル上空を飛ぶが、日本に配備される迎撃用ミサイルの射程距離はせいぜい数十キロ、可能であったとしても数百キロで、北朝鮮の弾道ミサイルには届きだにしない。ではどうするか。北朝鮮が撃つ前に攻撃するしかない。

 米国にとっては、自国に向かってくるミサイルを日本が撃墜してくれるのでプラス。

 北朝鮮は撃たれれば当然、それに見合う報復をする。日本に到達するミサイル、ノドンを200から300発配備しているので、これを使う。北朝鮮にしてみれば、日本から攻撃されればそれに見合う反撃をするので、プラスマイナスなし、ということになる。

 では日本はどうか。ミサイルは米国行きなので、これを撃墜しても何らプラスにならない。しかし、北朝鮮から報復攻撃されるのでマイナスだけが残る結果となる。

 米国のためといいながら、日本の安全保障にマイナスの行動をとる。それを是とするくらい、日本の指導層は退廃しているのだ。

 集団的自衛権は米国の軍事目的のために、自衛隊を傭兵的に使うシステムである。しかも自分のお金を使ってである。世界史でも稀な傭兵の形式といってよい。

 ◇北朝鮮、中国からの激しい反発は必至

 日本が集団的自衛権の行使を認めた時、日本の周辺諸国からは、どのような反応が出るであろうか。

 いうまでもなく北朝鮮は激しく反応するであろう。

 北朝鮮にとって日本の集団的自衛権とは、「北朝鮮が米国を射程に収め得るミサイル発射を行う場合」、日本が北朝鮮の国土を直接攻撃しようとするものであるから、当然だ。

 中国の場合はどうであろうか。

 尖閣諸島問題を含む日本と中国との安全保障関係は、基本的に日米安保条約の範囲で処理される。したがって、中国の軍事戦略である大陸間弾道弾発射に日本が関与していくことはありえない。しかし日本政府は「いまなぜ集団的自衛権が必要か」という説明を行うのに、中国の軍事力強化を口実として使っている。さらに、日米安保条約の「極東」の域外である南シナ海における日米軍事行動を活発化することに、集団的自衛権が利用される可能性が高い。もし日本で集団自衛権の行使容認が成立すれば、軍部を中心に中国の激しい反発にさらされることが予想される。

 ◇【筆者が推薦する基本図書】

●豊下楢彦『集団的自衛権とは何か』(岩波新書、2007年)

●半田 滋『集団的自衛権のトリックと安倍改憲』(高文研、2013年)

●孫崎享『日米同盟の正体−−迷走する安全保障』(講談社現代新書、2009年)

 ◇【編集部注】

*1 小泉元首相の発言

参議院選直前の党首討論会で、各党首が集団的自衛権についての見解を問われ、答えたもの。この時期に集団的自衛権が議論された背景には、アフガニスタンにおける対テロ作戦の後方支援や、イラク戦争後の復興支援業務など、自衛隊の任務が拡大していたことがある。その際、集団的自衛権の行使を禁じる憲法解釈が、金銭だけでない「汗をかく」国際貢献の障害になるとみなされるようになったのだ。小泉首相は、就任(01年4月)直前までは憲法解釈変更による集団的自衛権行使に前向きだったものの、その後「憲法解釈を変えることは考えていない」(03年2月の国会答弁)と軌道修正、「解釈の変更ではなく、正面から憲法改正を議論することで解決すべき」(04年2月の国会答弁)と述べるようになっていた。

*2 国連憲章51条

集団的自衛権とは、国連憲章51条において初めて明文化された、国際法においては比較的新しい概念である。第2次世界大戦の終結直前、米国とラテンアメリカ諸国は相互援助条約を締結しようとしていた。ところが同時期に制定へ向けて作業が進められていた国連憲章では、「地域的機関」による強制行動(=武力行使)には、安全保障理事会による承認が必要になり、さらに米ソ英仏中(当時は中華民国)の常任理事国には拒否権が認められることとなった。したがって、5常任理事国のうち1国でも反対すれば、共同防衛のための武力行使が行えなくなる。そこで米国は、自衛権について定めた51条に集団的自衛権の概念を盛り込み、「他国から武力攻撃を受けた場合、安保理が必要な措置をとるまでの間」は、安保理の許可なく共同防衛が可能となるようにしたのである。

*3 MDシステム

専守防衛を基本とする日本では、敵国が発射した弾道ミサイルは、人工衛星、イージス艦、地上配備レーダーなどで探知・追尾し、大気圏外に到達したとき(ミッドコース段階)、イージス艦のスタンダードミサイル(SM−3)が迎撃するという第一段階と、敵弾道ミサイルがそれでもこの迎撃をくぐり抜けて大気圏に再突入したとき(ターミナル段階)には、パトリオットミサイル(PAC−3)によって撃ち落とすという2段階の迎撃システムをとっている。米国では、これにさらにミッドコース段階で迎撃する地上配備型システム(GMD)と、ターミナル段階で撃ち落とす高高度地域防衛システム(THAAD)が構築されている。

Profile

まごさき・うける 元外交官・評論家。1943年旧満州国生まれ。66年東京大学法学部中退、外務省入省。英・米・ソ連・イラク・カナダ等の駐在勤務を経て、駐ウズベキスタン大使、国際情報局長、駐イラン大使を歴任。2002年から09年まで防衛大学校教授を務めた。退官後は外交問題の論客として活躍、ツイッターでの率直な発言が人気に。『日本外交 現場からの証言』で山本七平賞受賞。ほかに『日本の国境問題』『日米同盟の正体』『検証 尖閣問題』『日本を疑うニュースの論点』など著書多数。


 

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コメント
 
01. 2014年3月17日 17:49:33 : TTP2aHMdDU
孫崎さん、小沢さんは鳩山さんと組んでいた時が一番まともだったようですね。 いま小泉と組み、脱原発以外殆んど自民の政策に合意しています。 この集団的自衛権の行使もそうです。
孫崎さんは、再び投稿開始されましたが、二度と阿修羅を見ている人達を、小泉・小沢さんに誘導することは止めて下さい。 阿修羅を見ている多くの人達は、小沢陣営の投稿者を拒否しています。  昨年の7.21以降、国民の意識は大きく変わりました。小沢さんの目くらましには、二度と騙されません・・・

02. 2014年3月17日 21:36:24 : diADX7bCck
あえていうが、

日本ほど攻めにくい国はなかなかない。ある程度の広さの海で隔てられた島国。
千年以上実質の国境線が変動していない世界で唯一の国と言える。一度世界史で各世紀の国境線がどこにあったかを確認されたい。他の国は全て国境線が大きく変動している。日本はその後琉球と北海道に勢力を広げるがそう大きな変動ではない。

戦乱に明け暮れたユーラシア大陸の歴史、ナポレオンもヒトラーもあの狭いドーバー海峡を突破できなかった。本来のイギリスの力では対抗できなかったはず。
当時世界の半分以上の地域を支配していた元でも日本侵攻には失敗した。何も台風だけが理由ではないだろう。中央政権は一応機能していたが北条政権がそれほど強力だったわけではない。中国の内戦で敗れた蒋介石は台湾に逃れたが海で隔てられた台湾には共産軍は攻めて来なかった、あるいは出来なかった。

戦国時代ポルトガルの宣教師は信長を見てこの国を侵略できるなどとは想像もつかなかっただろう(当時中南米ではスペイン・ポルトガルが現地の王朝を滅ぼし原住民を虐殺し植民地にしていたが)


明治維新の時代も植民地にされることはなかった。敗北した長州も鹿児島を焼かれた薩摩も降伏することはなくすぐ次の手を打った。

同質でまとまった国民性に加えて一定の防衛力があればこんな国を攻めて支配できると妄想できる国も人物もいない。それは宣伝による創造上の産物。


03. 2014年3月17日 21:54:02 : 1B3usXJoMI
薩英戦争や下関戦争を経験した薩摩や長州が拠り所にしたのは英国(や米国)。欧米コンプレックスの始まりはここから。それが後になって売国政治推進の温床になった。そんな批判も一方ではあり得る。琉球を併合したのは日本独自で行ったことだが北海道の併合は英国の監視があって行われた。これがそれほど誇れることとは思えないのだが。

04. 2014年3月18日 00:43:25 : FfzzRIbxkp
先の国会で可決した特定秘密保護法が憲法に違反しているとして廃止できなければ、三権分立がなされていませんので、

集団的自衛権の議論はできないと思います。


05. 2014年3月18日 02:00:33 : QBrYpzDGwo
     結局のところ、後付けの理由で他国軍の戦闘に共同参加するつもりなのだろう。先般も、ソマリアだったか、銃弾の貸し借り云々の件があったように、現地へPKOで派遣され、選挙監視や生活支援を行っていても現実にそこで小競り合いが起こればどうしても参加を余儀なくされるだろう。
   銃弾の貸し借りは序の口で、次第に銃を持って交戦地域に行くよう指示されるかもしれない。そのような際になし崩しに戦闘参加してしまえるのが集団的自衛権の拡大解釈である。
   それもそのはず、他国はれっきとした軍隊であり、韓国などは徴兵制まで敷いている。法律そのものが違うのである。
   そもそも、遥か彼方までPKOで行くということからして予測出来た話であり、今やインターネットで情報が飛び交う時代であるからアフリカの奥地ですら内戦が起こるのであり、戦闘のない国は無いくらいであるから、そこへ行く以上は戦闘行為に巻き込まれることは必至である。
   徹底的な不戦主義を採り、武器、兵器の売買のない世界を説いて行くのが未だ憲法9条を持つ日本の役割であろう。
   しかしそれが不可能というのなら、解釈改憲などとの官僚トリックを使うのは止めて、憲法9条を破棄し、徴兵制を敷き、それこそ他国と同様の条件で兵隊を出すべきである。日本はなし崩しというのを好むが、権限と責任が一致しないために統治エリートは非常に気楽であるが、これで最も苦しむのは国民なのである。

06. 2014年4月01日 10:53:48 : AgumpIiQVY
現実の世界情勢を見ずに詰まらぬ議論ばかりがなされている。

「日米安保の傘の下、抑止力のお蔭で日本は安泰だ」とはためにする論法でしかありえない。

米国の各地を廻って対日感情が如何なるものか調べるといい。日本を知っているのは商売上の付き合いがあるか、対日参戦の経験者やその家族ぐらいだ。
アフリカのどこかにある国という回答も不思議ではない。
 
損得勘定のある連中は笑顔で応対するだろう。「リメンバーパールハーバー」と未だに米国が直接攻撃を受けたことを根に持っている連中のいかに多いことか。

日本に一旦緩急の事態が起こった場合、条約があっても、米国は実力行使での支援には上院/下院の承認が必要となり、まず通過する可能性は半分以下だろう。政治家は票を取ることが第一だから。大統領も権限でこれを行うには政治生命をかけねばならない。簡単単純なものではない。

逆に米国に何かが起こったら当然支援参加が要求され、忠誠心を試されるに決まっている。集団的自衛権を行使できない場合はそれを盾に断ることが可能だが、出来ると解釈をすればどうなるかは自明の理だ。

対米隷属的な官僚/自民の所為で、わが国の外交的地位が如何に低下したか真面目に反省してみることだ。

近隣接国に嫌われ、アジアでも軽視され、欧米には疎まれ、戦前の孤立化した時代の再来を見ているようだ。


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