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2014年03月16日
*本日は多忙なので、以下の記事をどのように読まれるかは、皆さんのご見識に任せよう。ただし、今なぜナイ教授のインタビューを朝日が載せたのか、そこをじっくり考えてみようと思っている。単に、朝日新聞が米国ベッタリ志向と言ってしまえば、身も蓋もないわけで、何らかの意図はあるのだろう。一番言いたいところは、日韓関係なのかもしれない。北朝鮮が暴発すると云う事例は、ハーバード大学教授の口から飛び出すのは違和感だらけだ。要するに、べ国にとって、役立つ日本の姿を語っている、と受けとめておいてもよさそうだ。こういう日本が、アメリカにとって、最も都合が好いのだが、と聞き流すのも選択だ。または外務省の役人たちのように、忖度の基礎知識として知るべきインタビューかもしれない。
≪ 憲法解釈の変更「正当だが」 ジョセフ・ナイ氏に聞く
ジョセフ・ナイ・ハーバード大教授が日本の集団的自衛権行使や安倍晋三首相の靖国神社参拝、日米中の関係などを語った。主なやりとりは以下の通り。
【集団的自衛権】
――日本の集団的自衛権を巡る議論をどうみていますか。
日本にも、他の国々と同じように集団的自衛権はあります。日本は戦後の憲法でこの点を非常に限定的に解釈してきましたが、これをより広く解釈することは正当なことだと思います。
――集団的自衛権行使が米国側に資する状況とは。
典型例は日本近海で北朝鮮が米艦船を攻撃し、海上自衛隊の艦船が近くにいる場合などでしょう。あまりに狭い憲法解釈によって、日米が協力して対処する能力が妨げられる恐れがあるのです。
米国は、日米はいくつかの困難な状況に直面していると考えています。その中で最も危険なのが北朝鮮です。憲法をあまりに狭く解釈すれば、協力して取り組む我々の能力が疎外される恐れがあります。
――安倍政権は憲法解釈の見直しを考えていますが、日本国内には憲法改正で集団的自衛権を行使できるようにすべきだという意見もあります。
憲法の改正は近隣国をさらに神経質にさせると思います。中国や韓国では、日本が軍国主義的になるのではという不安が生まれています。憲法改正はこの不安を増大させるでしょう。
日本政府のいくつかの行動は、近隣国が懸念をしているこうした状況を悪化させています。たとえば、安倍首相の靖国神社参拝や首相周辺の人々の、村山談話や河野談話見直しに関する発言です。
米国内でも、日本で強いナショナリズムが台頭しているのではという懸念は出てきています。個人的には日本の大部分の意見は穏当なもので、軍国主義的なものではないと思います。
ただ、米政府の言葉を借りれば、首相が自らの政策が近隣国との関係に与える影響にもっと注意を払わないことについては、失望しています。私は政策に反対しているのではありません。ただ、ナショナリズムのパッケージで包装することに反対しているのです。
――日本の集団的自衛権は東アジアの安定に資するものだと考えますか。
日本の集団的自衛権行使は、ナショナリズムで包装さえしなければ、東アジアの安定に積極的な貢献を果たしうるものです。日本は安倍政権の下で正しい政策を進めていると思います。しかし、首相の靖国参拝や河野談話、村山談話見直しの兆候と合わさると、良い政策を悪い包装で包むことになります。
――むしろ「包装」の部分こそが安倍首相の心情であり本質だとしたら?
我々が同盟国の首相の考えを決めることはできません。ただ同盟国として、「それをやることはあなたにとって良くないし、我々にとっても良くないことだと助言します」とは言えます。
私たちは一人の政治家や一つの政党だけでなく、日本全体を見る必要があります。私が、日本が攻撃的な国になっていると心配していないのは、それが 日本全体の世論ではないからです。同盟国の指導者のやったことに失望すれば、我々は率直に失望を表明すべきです。しかし、これが日本の人々や日本という国との同盟関係を失うことを意味するわけではありません。
日本は「どうやって近隣諸国の懸念を引き起こさずに、理にかなった政策変更を行うか」と自問すべきです。日本が平和を愛する国であり、軍国主義の国ではないことを示すための一歩を踏み出すべきです。
――日本の平和維持活動(PKO)の拡大については、どう考えていますか。
平和憲法の精神にも合致していると思います。日本のPKOへの貢献は世界平和への重要な貢献です。世界は安全保障の公共財を提供できる主要国を必要としています。
――安倍政権の評価は。
日本に経済成長が戻ってきたことをとても喜んでいます。日本が世界に貢献できることはたくさんあります。経済成長は日本の人々の暮らしにとって重要ですし、世界での日本の地位や日本の貢献という意味でも重要です。
安全保障政策では先ほど述べた通り、政策には反対しませんが政策を包む包装には反対です。同じことを、靖国参拝に代表されるようなナショナリズムなしでやるべきです。
【日米中関係】
中国との関係で米国が望むのは、米中、日米、日中の「良い関係のトライアングル」です。これが最も安定した形です。日中関係の悪化は我々にとって喜ばしいことではありません。
中国はいま、新たな経済力と軍事力をどう使うかを見極めようとしている時期です。米国は中国に対して、冷戦時代のような「封じ込め」をやるつもり はありません。ただし、中国が東シナ海や南シナ海で隣国をいじめるようなことは許さないということも、はっきりさせておきたいのです。
――クリントン前国務長官は「(既存の大国と台頭する大国はやがて衝突するという)古い問いに新しい答えを見つける」と繰り返していましたが、米中の将来像は。
まず、中国は今後も長い間、米国と対等の力にはなりません。多くの人が1914年時点の英独と比較しますが、当時のドイツはすでにイギリスを上回る国力でした。
私は、新しい関係とは東アジアでの勢力均衡だと考えます。米国がその一角を占め、日本や中国も一角を占めます。ロシアはまだわかりませんが、最終的にはインドネシアのような国もより大きな役割を果たすでしょう。
東アジアにおいては、私たちはある分野では協力し、別の分野では競争する関係になるでしょう。ただ、武力衝突につながる敵意や恐怖で特徴づけられた関係ではありません。
――協力と競争は共存可能ですか。
歴史を振り返れば、協力と競争が共存した関係はたくさんありますが、21世紀にはこれがさらに強まります。貿易は長年国家同士が協力してきた分野 ですが、さらに気候変動や世界的に流行する感染症、国際金融システムの安定など、協力しなければならない新たな分野が出てきています。これが、米中の新しい関係とは何かという問いへの答えになるはずです。
【日米韓】
――米国にとって、日韓関係の改善がなぜ重要なのですか?
日韓関係については我々が直面する課題に目を向けるべきです。北朝鮮は深刻な脅威で予測不能です。北朝鮮から自分たちを守ろうとするときに、日韓が協力や合同訓練をできないことは3カ国すべてにとって危険なことです。
◇
Joseph Nye(ジョセフ・ナイ) 1937年生まれ。国際政治学者。クリントン政権で国防次官補として「ナイ・イニシアチブ」と呼ばれる日米安保再定義を主導した。 ≫(朝日新聞デジタル)
*2012年8月の拙コラムに、アーミテージやジョセフ・ナイが提言した、日米同盟のあるべき方向と云う報告書がある。ご親切なことに、第3弾まで出している。以下は当時の朝日新聞の記事である。参考までに張り付けておく。
≪日米韓強化へ「歴史問題解決を」 アーミテージ氏ら提言
アーミテージ元米国務副長官とナイ・ハーバード大 教授ら超党派のアジア専門家が、日米同盟のあるべき姿についてまとめた報告書が15日に公表された。中国の台頭や北朝鮮の核開発に対処するため、日米に韓 国を加えた関係強化が重要と指摘。障害となる日韓の歴史問題の解決に向けて努力するよう求めている。
報告書はアーミテージ、ナイ両氏を中心に2000年 と07年にまとめられ、今回は第3弾。「米日同盟――アジアの安定を支える」と題し、エネルギー、経済・貿易、周辺諸国との関係、安全保障などの分野を扱い、日米同盟が地域の安定のために何をすべきかを包括的に提言している。
日米韓の関係については、中国や北朝鮮への対処のために「外交上の持てる力をともに出し合うべきである」と指摘。原子力利用の国際的なルール作り、政府の途上国援助(ODA)などの分野でも3カ国が協力できるとした。
そうした協力関係を深めるため、日韓の歴史問題の解決に向け、米国は「徹底した外交努力を行うべきだ」とし、日本に対しても「韓国との複雑な関係を続けて いる歴史問題に向き合うことが不可欠だ」とした。そのうえで日韓の歴史問題について、米国が加わる形で、日米韓の3カ国の有識者らで作る民間レベルの対話 の場を設けるよう提言した。
安全保障面では、中国が南シナ海や尖閣諸島を新たな「核心的利益」に加えている可能性があると指摘。日米が政策、軍事的能力の両面で対応できるようにする必要があるとした。
原子力発電については、経済の活力維持や温室効果ガス削減などの観点から「再開は、正しく責任ある措置」と原発の再稼働を促した。さらに、米国で開発ブー ムに沸く「シェールガス」など天然ガスについて、日本で需要が高まっていることを踏まえ、米側に日本への輸出規制を緩和するよう求めた。≫(朝日新聞:ワ シント ン=伊藤宏)
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