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日本を不安にした米高官の「失言」[日経新聞]
編集委員 秋田浩之
2014/3/14 7:00
秋田浩之(あきた・ひろゆき) 87年日本経済新聞社入社。政治部、北京、ワシントン支局などを経て政治部編集委員。著書に「暗流 米中日外交三国志」。
米政府の高官はひんぱんにメディアの質問にさらされる。それだけに、公式答弁をきちんと用意し、失言しないよう入念に準備する。ところが今月初め、米国防総省高官がうっかり口を滑らし、大きな波紋を広げる騒ぎが起きた。
発言の主は、カトリーナ・マクファーランド国防次官補(調達担当)。艦船やミサイル、レーダーといった軍事システムの導入や兵器の調達などについて、大きな影響力をもつ人物だ。
■「もう実行できない」
マクファーランド次官補は3月4日、米バージニア州アーリントンで開かれた国防関係の会議に出席し、こう断言したのだ。
「いま、(米軍によるアジア重視路線は)見直しの対象になっている。率直にいって、もう実行できないからだ」
彼女はその根拠として、国防予算が大幅に削られようとしていることをあげた。資金がなければ、アジア太平洋に大量の戦力を維持することはできない、というわけだ。
この発言はまたたくまに米メディアに伝わり、ワシントンで騒ぎになった。それもそのはずである。彼女が見直しを断言したアジア重視路線は、オバマ政権の金看板ともいえる軍事戦略だからである。
中国軍が急速に台頭するなか、米軍の兵力をアジア太平洋に傾斜して配置しようというものだ。国防総省は同じ4日に発表した「4年ごとの国防戦略見直し(QDR)」で、この路線を堅持する方針をかかげた。
その象徴ともいえるのが、2020年までに米軍艦船の60%を太平洋に集中するという計画。このほか、QDRでは日本やオーストラリア、韓国、フィリピン、タイとの同盟協力の拡大や、在日米海軍の強化も打ち出した。
中国軍の海洋進出に、日本や東南アジアの国々は不安や懸念を深めている。オバマ政権はQDRで、国防予算が削られたとしてもアジア重視路線は続けると強調し、アジア各国の米軍への信頼をつなぎ留めようとした。
ところが、である。その路線を支える立場にあるはずの国防総省高官が、あっさりと「実行できない」と認めてしまったのだ。この発言は米国内だけでなく、日本などアジアでも静かな波紋を広げた。
■修正された発言
あわてたマクファーランド次官補は、ただちに発言を訂正。国防総省報道官を通じ、次のようなコメントを出した。
「国防予算について質問され、あのような発言をした。ヘーゲル国防長官も言っているとおり、アジア太平洋に重点を移すには(予算上)革新的で難しい決断が必要になる。いま、まさにそうした努力をしているのであり、アジア重視路線は続く」
同省の首脳から指示され、発言を修正したとみられる。それでも、米安全保障専門家からは「マクファーランド次官補が言ったことは間違っていない。このまま予算が減れば、アジア重視路線は揺らぐ」との声も聞かれる。この騒動、日本にとっても人ごとではない。
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK1203Y_T10C14A3000000/?dg=1
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