http://www.asyura2.com/14/senkyo162/msg/734.html
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生活の党の鈴木克昌代表代行・幹事長は、「現行憲法9条が容認している自衛権の行使は、我が国が直接攻撃を受けた場合及び周辺事態法にいう日本の安全が脅かされる場合において同盟国である米国と共同で攻撃に対処するような場合に限られるものと考えます」と3月5日に述べました[文献1]。
すなわち、生活の党は、
(A)我が国が直接攻撃を受けた場合
(B)周辺事態法にいう日本の安全が脅かされる場合において同盟国である米国と共同で攻撃に対処するような場合
の条件の、いずれか一方でも満たされれば、現行憲法の解釈を変更せずとも、憲法9条が容認している自衛権の行使である武力行使が認められるという見解を示しました。
新共産主義クラブは、(B)の場合の武力行使は、現行憲法が禁じている集団的自衛権の行使にあたると考えます。現行憲法の解釈の変更と、集団的自衛権の行使の容認に強く反対する立場の新共産主義クラブとしては、生活の党の見解に反対します。
さらに、生活の党が(B)で示した自衛権の行使の条件は、実は、安倍晋三首相が設置した政府内の有識者会議「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会(安保法制懇)」(座長代理・北岡伸一国際大学学長)で検討が進められている集団的自衛権の発動要件の一部でしかないことを、本稿において指摘したいと思います。
まず、武力行使のための条件(A)の「我が国が直接攻撃を受けた場合」について見てみましょう。これが、日本の領土、領海、領空においておこなわれた攻撃であるならば、明らかに、従来の政府見解が認める個別的自衛権に基づく武力行使であるとして、日本の領土、領海、領空に存在する敵に対して武力行使をおこなうことができます。ただし、日本の集団的自衛権の行使が容認された場合、海外の日本の在外公館や、公海上または外国に派遣中の自衛隊、海外の日本の民間人や海外の日本の民間施設が攻撃された場合において、個別的自衛権を行使することの是非が、大きな問題となります。これに関しては、別途に議論したいと思います。
次に、武力行使のための条件(B)の「周辺事態法にいう日本の安全が脅かされる場合において同盟国である米国と共同で攻撃に対処するような場合」について見てみましょう。
周辺事態法とは、自民党と、当時、小沢一郎氏が代表を務めていた自由党との連立政権であった、自自連立政権下の第一次小渕内閣で制定された「周辺事態に際して我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律」のことです。
拙稿[文献2]でも述べましたが、周辺事態法においては、周辺事態の定義として、「そのまま放置すれば我が国に対する直接の武力攻撃に至るおそれのある事態等我が国周辺の地域における我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態」としか説明していません。周辺事態法は、制定当初から、どの地域での、どのような事態を、指して周辺事態とみなすかが、極めて不明確であり、大きな問題になっていました。
「周辺事態法にいう日本の安全が脅かされる場合」というだけでは、米国にも、日本にも、どこの国からの攻撃をも受けていない場合が含まれます。たとえば、北朝鮮でクーデターが発生し大量の難民が発生している場合にも、北朝鮮に経済制裁が課せられている場合にも当てはまります。現在、日本は北朝鮮に経済制裁を課しているので、現在この時点において、「周辺事態法にいう日本の安全が脅かされる場合」という条件が満たされています。
実は、(B)の文は、やや曖昧です。
「米国と共同で攻撃に対処」の意味が、どこから、どこへの攻撃であるかが明らかではありません。
(B1)米国と共同で、日本が受けた、敵からの攻撃に対処、
(B2)米国と共同で、米国が受けた、敵からの攻撃に対処、
(B3)米国と共同で、敵への攻撃に対処
の三通りに解釈できますが、(B3)の意味に解釈した場合、先に述べた理由により、米国にも、日本にも、どこの国からの攻撃も受けていない場合も含まれ、その場合は個別的自衛権と集団的自衛権利のどちらの自衛権行使に基づく武力行使でもなくなり、単なる侵略戦争になってしまいます。
(B1)の場合は、先ほど述べたように、海外で日本の自衛隊や公務員または民間人が攻撃された場合に、日本の個別的自衛権を行使する要件を拡げることに関連しますので、別の機会に議論します。
ここでは、(B)を、
(B2)周辺事態法にいう日本の安全が脅かされる場合において同盟国である米国と共同で、米国が受けた、敵からの攻撃に対処に対処するような場合
という意味に解釈することにします。
そうして、安保法制懇が出した、集団的自衛権の行使によって日本の武力行使が認められる条件、
(1)日本と密接な関係にある国が不当な攻撃を受けた場合、
(2)放置すれば日本の安全に大きな影響が及ぶ場合(周辺事態法の援用)、
(3)攻撃を受けた国から明示的に要請があった場合、
(4)第三国の領海・領土を通過するには許可が必要、
(5)首相が総合的に判断して国会の承認を受ける必要
と見比べると、生活の党が出した武力行使のための条件(B2)は、実は、安倍内閣の安保法制懇が出した、憲法解釈を変更して集団的自衛権を行使するための5条件の、(1)と(2)が同時に満たされた場合と一致します。
結局、生活の党は、安倍内閣の安保法制懇が出した(2)「放置すれば日本の安全に大きな影響が及ぶ場合(周辺事態法の援用)」の条件を満たせば、憲法解釈を変更せずに、憲法9条が容認している自衛権の行使である武力行使、すなわち集団的自衛権による武力行使が認められると主張していることになります。
読売新聞社は、この有識者会議である安保法制懇の出した5条件について、「政府が、過去の見解との論理的整合性を取り、閣議決定などの手続きをきちんと踏んで、解釈を見直すことに何ら問題はない」「米国などが攻撃され、日本として『放置』できない事態は、起こり得る。その際の日本の反撃は、憲法の認める「必要最小限の実力行使」の範囲内にとどまる、という新解釈は十分成り立とう」などと主張し、有識者会議が出した5条件のもとでの集団的自衛権行使、すなわち生活の党が主張する「周辺事態法にいう日本の安全が脅かされる場合において同盟国である米国と共同で、米国が受けた、敵からの攻撃に対処に対処するような場合」における日本の武力行使は、憲法解釈の変更が必要だけれども、現行憲法下で容認される武力行使であると主張しています[文献3]。
生活の党の鈴木克昌代表代行・幹事長は、「安倍政権は、戦後一貫して『保有しているが行使できない』としてきた集団的自衛権に関する憲法解釈を、いとも簡単に一内閣の権限のみで変更しようとしています。このような政治姿勢は、国家権力を縛るものという憲法の本質である立憲主義を否定し、国会の存在意義を軽視するものであり、到底容認できるのものではありません。」と言っていますが、生活の党の党が示している条件は、安倍内閣の安保法制懇が出した、憲法解釈を変更して集団的自衛権を行使するための5条件の一部でしかありませんので、これは詭弁であるとしか言いようがありません。もちろん、安倍内閣の安保法制懇が出した5条件のうちの(3)から(5)も満たせば良いという事柄ではなく、現行憲法における日本の集団的自衛権行使は、従来の政府見解と同様に憲法違反であるからに他なりません。
新共産主義クラブは、読売新聞社の言うように「周辺事態法にいう日本の安全が脅かされる場合において同盟国である米国と共同で、米国が受けた、敵からの攻撃に対処に対処するような場合」における自衛権行使には憲法解釈の変更が必要だという主張は認めますが、生活の党および安倍内閣の安保法制懇が出した「周辺事態法にいう日本の安全が脅かされる場合において同盟国である米国と共同で、米国が受けた、敵からの攻撃に対処に対処するような場合」という条件における日本の武力行使を認めることには強く反対します。
結論として、生活の党の集団的自衛権行使の要件は安倍内閣の安保法制懇の出した集団的自衛権行使の要件の一部に一致していますが、生活の党はその要件の下での武力行使は憲法解釈の変更ではないと主張し、安倍内閣の安保法制懇の5条件の下での集団的自衛権行使の容認に賛成する意見を主張しています。生活の党は、表面的に安倍内閣への対決姿勢を、とりつくろっているだけです。新共産主義クラブは、これらの安倍内閣の安保法制懇の答申案の内容および生活の党の主張に強く反対しています。
* * * * * * * *
【参考文献】
[1]”集団的自衛権の解釈変更方針について”,(生活の党,2014.3.5).
”平成26年3月5日
生活の党
代表代行・幹事長 鈴木 克昌
安倍政権は、戦後一貫して「保有しているが行使できない」としてきた集団的自衛権に関する憲法解釈を、いとも簡単に一内閣の権限のみで変更しようとしています。このような政治姿勢は、国家権力を縛るものという憲法の本質である立憲主義を否定し、国会の存在意義を軽視するものであり、到底容認できるのものではありません。
憲法は、国家のあり方や国法秩序の基本を定める最高法規として安定性を求められる性質のものです。そもそも憲法解釈、とりわけ9条の解釈は、戦後から現在までの長年にわたる国会審議において、いわば国会と政府の共同作業によって練り上げられてきたものであって、国会審議を経ることもなく、一内閣が行う閣議決定などによって軽々に変更が許されるものではないのです。
生活の党としては、現行憲法9条が容認している自衛権の行使は、我が国が直接攻撃を受けた場合及び周辺事態法にいう日本の安全が脅かされる場合において同盟国である米国と共同で攻撃に対処するような場合に限られるものと考えます。一方、日本に直接関係のない紛争のために、自衛隊が同盟国の軍事行動に参加するということは、歯止めなき自衛権の拡大につながりかねないものであって、現行憲法9条は全くこれを許していないと考えております。
冒頭述べましたように、憲法は、国家のあり方や国法秩序の基本を定める最高法規でありますから、生活の党は、上で述べたような考え方を十分に踏まえた上で、まずは国会で徹底した議論を行うべきであると考えます。”
(http://www.seikatsu1.jp/activity/declaration/20140305suzuki-danwa.html)
[2]”安倍内閣の安保法制懇は周辺事態法を援用して集団的自衛権の発動要件に(新共産主義クラブ)”,(阿修羅掲示板, 2014 .3.12).
”周辺事態法を援用して集団的自衛権の発動要件にしたとしても、憲法解釈を変更せずに日本が集団的自衛権を行使できるようになることを意味するわけではありません。
新共産主義クラブは、たとえ周辺事態法を援用して自衛権の発動要件にしたとしても、日本の集団的自衛権行使の容認に強く反対します。”
(http://www.asyura2.com/14/senkyo162/msg/696.html)
[3]”集団的自衛権 行使容認へ与党の議論深めよ(3月9日付・読売社説)”,(読売新聞,2014.3.9).
”政府が、過去の見解との論理的整合性を取り、閣議決定などの手続きをきちんと踏んで、解釈を見直すことに何ら問題はない。”,”有識者会議の北岡伸一座長代理は、集団的自衛権の行使に必要な5条件を示している。「密接な関係にある国への攻撃」「放置すれば日本の安全に大きな影響が出る」「当該国からの明確な要請」「国会承認」などだ。妥当な内容である。特に重要なのが「放置すれば日本の安全に大きな影響が出る」との条件だ。”,
(http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20140308-OYT1T01187.htm)
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