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ウクライナ紛争ぼっ発 安倍首相の「宿題」北方領土返還が遠のいた〈週刊朝日〉
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140313-00000006-sasahi-pol
週刊朝日 2014年3月21日号
プーチンの野望でぼっ発したウクライナ紛争。「自分の在任中に北方領土を解決させたい」と意気込む安倍晋三首相(59)の夢はしぼみつつある。そして、“蜜月”と言われた日ロ関係の行方はどうなるのか?
安倍首相は、就任以来5度にわたってプーチン大統領と会談。同性愛の宣伝を禁止した法律に反発して欧米の主要国が欠席したソチ五輪の開会式にも出席した。今秋にはプーチン大統領の訪日も予定され、北方領土問題に何らかの進展があるとも期待されていた。
だが、政権崩壊後のウクライナにロシア軍が侵入してクリミア半島を掌握すると、事態は一変。米国のケリー国務長官がロシアのG8からの追放にまで言及する中、日本だけがロシアと仲良くするわけにもいかなくなってきた。
北方領土問題を担当する外務省幹部もため息をつく。「プーチン訪日前の夏ごろまでに両国の間で北方領土に関係する文書作成などの準備をしたいと思っていたが、ウクライナの問題でお釈迦になる可能性が大だな。官邸筋も予防線を張り、『プーチンの来日までに北方領土問題の進展は絶対無理』と触れ回っているよ」。
隣国の中国、韓国と一度も首脳会談ができていない上、靖国参拝で米国にも「失望」を表明された安倍外交。唯一、良好な関係を築いていたのがロシアだった。
「安倍首相の出身派閥『清和会』の森喜朗元首相が非常にプーチンと親しいこともあり、北方領土問題の解決は森政権時代からの清和会の悲願。安倍さんの思い入れもすごい。何とか自分の政権時に北方領土返還を成し遂げたいと思っている。ソチ五輪の開会式も秘書が飛行機に間に合うかヤキモキしたほどのハードスケジュールだったが、どうしても行きたいと強行軍で行った。ソチへ飛ぶ前に国内の日ロ、北方領土運動関係者への挨拶まわりもこなすなど、その思い入れは半端じゃないですよ」(官邸関係者)
こうした経緯があるだけに、ウクライナ問題に対する日本の態度は微妙だ。
「日米、EUの統一的な考え方をプーチン大統領に伝えていきたい。問題解決のため、日本としても役割を果たしていきたい」
安倍首相は3月8日、こう述べたものの、ロシアへの直接的な非難を避けた。
そんな中、ロシアの政府系天然ガス企業「ガスプロム」はウクライナへのガス供給を止める可能性に言及。そして同9日にはウクライナ南部のクリミア半島西端、チョルノモルシケにある国境警備拠点をロシア軍とみられる武装部隊が制圧。
すでに11の拠点を占拠するなど、武装部隊とウクライナ側との緊張はさらに高まっている。
だが、今のところ、安倍政権は欧米が検討するロシアへの制裁に歩調を合わせる気配はない。このような状況について、北方領土問題に詳しい北海道大学の岩下明裕教授はこう指摘する。
「日本外交のプライオリティーを考えると、あくまで日米同盟が基軸で、ロシアにつく選択肢はあり得ない。あいまいな態度は欧米諸国の信頼を失うことにつながりかねず、危険です。ロシアをかばったところでプーチンがそう簡単に北方領土の返還に応じるとも考えられませんし、ロシアのように日本は国際的に単独で行動できる力量も覚悟もない。領土問題の解決には時間がかかる前提で旗色を示すべきです」
最近“前のめり”の姿勢が目立つ安倍首相だが、ここはいったん、ブレーキを踏んだほうがよさそうだ。
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