http://www.asyura2.com/14/senkyo162/msg/696.html
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昨年10月に、安倍晋三首相が設置した政府内の有識者会議「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会(安保法制懇)」で検討が進められている集団的自衛権の発動要件の柱は、
●周辺事態法の援用、
●武力攻撃を受けた国からの援護要請、
●国益を踏まえた高度な政治判断
の3つであることを、政府関係者が明らかにしていました[文献1]。
さらに、今年2月21日に、安保法制懇の北岡伸一座長代理(国際大学学長)は、検討中の集団的自衛権の行使条件が、
(1)日本と密接な関係にある国が不当な攻撃を受けた場合、
(2)放置すれば日本の安全に大きな影響が及ぶ場合、
(3)攻撃を受けた国から明示的に要請があった場合、
(4)第三国の領海・領土を通過するには許可が必要、
(5)首相が総合的に判断して国会の承認を受ける必要
の5つであることを明らかにしました[文献2]。
政府は集団的自衛権を、「自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力をもって阻止する権利」と定めていますので、(1)は、政府が定義する集団的自衛権を行使するための一般的な条件を提示しています。安保法制懇は、さらに、(2)から(5)の条件がすべて成立した場合においてのみ集団的自衛権を行使できるとすることによって、憲法解釈の変更による集団的自衛権行使容認への反対をやわらげようとしているように見えます。ところが実際には、(1)から(5)の条件は、現時点でほぼ満たされるような、緩い条件でしかありません。
ここでは、(1)と(2)の条件に着目してみましょう。
まず、(1)の「日本と密接な関係にある国が不当な攻撃を受けた場合」の条件です。
イラク戦争において、イラクが米国を攻撃したわけでもなく、イラクが大量破壊兵器を保有していたかどうかすら不確かであったにもかかわらす、米国は先制的自衛権を主張して個別的自衛権の行使によってイラクを攻撃しました[文献3]。先制的自衛権が認められるならば、たとえば、米国は今すぐにでも北朝鮮を攻撃することが認められることになります。(1)が、同盟国が先制的自衛権を行使した場合を含むかどうかは、明らかでありません。しかし一般に同盟国の先制攻撃の後には、攻撃された国からの報復攻撃を受けると考えられますので、(1)の条件は、ほぼ確実に満たされるでしょう。
次に、(2)の「放置すれば日本の安全に大きな影響が及ぶ場合」の条件をみてみましょう。
これは、周辺事態法に定める周辺事態の定義を援用したとみられます。実は、周辺事態法においては、周辺事態の定義として、「そのまま放置すれば我が国に対する直接の武力攻撃に至るおそれのある事態等我が国周辺の地域における我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態」としか説明していません。周辺事態法は、制定当初から、どの地域での、どのような事態を、指して周辺事態とみなすかが、極めて不明確であり、大きな問題になっていました。
周辺事態法制定のいきさつから、朝鮮半島有事が対象であることは、ほぼ明らかですが、台湾有事が対象であるか、インド洋が対象地域に含まれるかなど、政府が具体的に対象地域を明示したことはありません。
また、朝鮮半島有事にしても、具体的にどのような事態を「周辺事態」とみなすかについて、極めて曖昧(あいまい)です。周辺事態法を制定する契機となった「日米防衛協力のための指針」(新ガイドライン)についての政府の説明に基づけば、北朝鮮軍が韓国へ軍事侵攻するような事態の他にも、北朝鮮でクーデターが発生し大量の難民が発生している場合(国内の政治体制の混乱等により大量の避難民が発生している状況)や、北朝鮮に経済制裁が課せられている場合(特定の国の行動により国際の平和及び安全の維持又は回復のために経済制裁が課されたような状況)も、周辺事態法における「周辺事態」とみなされます。
日本は、平成18年10月の北朝鮮による核実験以降、北朝鮮に対する何らかの経済制裁を継続しています。ですから、現在この時点において、周辺事態法が定める周辺事態の条件とされる「放置すれば日本の安全に大きな影響が及ぶ場合」という条件を、法律上は満たしているのです。周辺事態法が定める周辺事態は、実は内閣の斟酌しだいで決まるのです。
「放置すれば日本の安全に大きな影響が及ぶ場合」は、めったに起こらないような非常に緊迫した事態であるので、実際の集団的自衛権行使には障壁があると見せかけようとしていると思われます。解釈改憲をおこなって集団的自衛権行使を容認する法律を制定しても、実際に集団的自衛権行使するような機会はほとんどないと、無能な国会議員に心理的に印象づけようとするねらいがあると思われます。新共産主義クラブは、このような詐術によって、憲法解釈を変更して集団的自衛権行使を容認する法律を制定することがあってはならないと考えます。
もちろん、周辺事態法を援用して集団的自衛権の発動要件にしたとしても、憲法解釈を変更せずに日本が集団的自衛権を行使できるようになることを意味するわけではありません。
新共産主義クラブは、たとえ周辺事態法を援用して自衛権の発動要件にしたとしても、日本の集団的自衛権行使の容認に強く反対します。
【用語の解説など】
■集団的自衛権(防衛省)
国際法上、国家は、集団的自衛権、すなわち、自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力をもって阻止する権利を有しているとされています。わが国が、国際法上、このような集団的自衛権を有していることは、主権国家である以上当然です。しかしながら、憲法第9条の下において許容されている自衛権の行使は、わが国を防衛するため必要最小限度の範囲にとどまるべきものであり、他国に加えられた武力攻撃を実力をもって阻止することを内容とする集団的自衛権の行使は、これを超えるものであって、憲法上許されないと考えています。
http://www.mod.go.jp/j/approach/agenda/seisaku/kihon02.html □
■集団的自衛権そもそも 日本に攻撃なしで他国攻撃(しんぶん赤旗)
[どう使われたのか]
集団的自衛権は、一見すると「友好国同士が助け合って不当な攻撃から身を守る」ようにも見えます。実態はまったく異なっていました。米ソなど軍事大国は、他国に軍事介入するときに「集団的自衛権」の行使を主張します。「同盟国から要請があった」「集団的自衛権を行使する」と称して、軍事介入、侵略戦争を繰り返してきました。
それだけではありません。米ソは「集団自衛」を口実に軍事同盟網を張りめぐらせ、同盟国を侵略戦争に動員してきました。ベトナム戦争に動員された韓国は5千人近い死者を出しました。韓国兵によるベトナム住民虐殺事件も起きています。
このような経緯を見ると、集団的自衛権とは、「集団で弱い者いじめをする権利」であるといえます。
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2014-03-09/2014030902_02_1.html □
■周辺事態法(コトバンク)
日本の平和と安全に重要な影響を与える武力紛争などの事態(以下「周辺事態」)において自衛隊が実施できる活動内容を定めた法律。朝鮮半島有事などを想定して、99年に制定された。周辺事態と認定されると、国会の承認を経て、自衛隊は武器や弾薬の輸送など米軍への後方地域支援が可能になる。同法を補完するため、00年に船舶検査活動法が制定され、周辺事態に際して実力行使を伴わない任意の積み荷検査などができることになった。その場合、周辺事態の認定のほか、検査活動を要請する国連安保理決議などが必要とされる。これまでに、これらの法律が適用されたことはない。
( 2006-10-17 朝日新聞 朝刊 1社会 )
http://kotobank.jp/word/%E5%91%A8%E8%BE%BA%E4%BA%8B%E6%85%8B%E6%B3%95 □
■周辺事態に際して我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律(周辺事態法)
(目的)
第一条 この法律は、そのまま放置すれば我が国に対する直接の武力攻撃に至るおそれのある事態等我が国周辺の地域における我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態(以下「周辺事態」という。)に対応して我が国が実施する措置、その実施の手続その他の必要な事項を定め、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約(以下「日米安保条約」という。)の効果的な運用に寄与し、我が国の平和及び安全の確保に資することを目的とする。
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H11/H11HO060.html □
■周辺事態(防衛省)
日米防衛協力のための指針Q&A
Q1 「周辺事態」とはどのような概念ですか?
A1 「周辺事態」とは、日本周辺地域における事態で日本の平和と安全に重要な影響を与える場合をいいます。
これは地理的概念ではなく、事態の性質に着目した概念で、特定の事態がこれに該当するか否かは事態の態様、規模等を総合
的に勘案して日米両国が各々主体的に判断するものです。従って、「周辺事態」が発生し得る地域を地理的に一概に画すること
はできません。
Q2 「周辺事態」の「事態」とは、具体的にどのような内容を含むのですか?
A2 「周辺事態」としては、特定の事態を念頭に置いているわけではありませんが、あえて一般論を言えば、日本周辺地域に
おいて日本の平和と安全に重要な影響を与えるような実力の行使を伴う紛争が発生する場合(紛争の発生が差し迫っている場合
及び紛争後の秩序の維持・回復が求められている場合を含みます)が考えられます。
また、このような場合以外においても、例えば、
(1) 国内の政治体制の混乱等により大量の避難民が発生している状況
(2) 特定の国の行動により国際の平和及び安全の維持又は回復のために経済制裁が課されたような状況
であって、それらが日本の平和と安全に重要な影響を与える場合等も周辺事態に含まれ得るものと考えています。
Q3 「周辺事態」か否かはどのように判断されるのですか。
A3 ある事態が、わが国周辺地域における我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態、すなわち「周辺事態」に該当する
かどうかについては、日米両国政府が各々主体的に判断するものです。さらに、「周辺事態」においてどのような活動を行うか
、また、米国に対してどのような協力を行うかについても、わが国が、国益を確保するという見地から主体的に判断を行います
。
http://www.mod.go.jp/j/approach/anpo/sisin/q_a.html □
【参考文献】
[1]”集団的自衛権、発動に3要件 政府方針 行使を最小限”(産経ニュース,2013.10.11).
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/131011/plc13101108560007-n1.htm
[2]”集団的自衛権、行使には5条件=北岡・安保法制懇座長代理”(ロイター,2014.2.21).
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYEA1K07J20140221
[3]”主張 集団的自衛権発言 日米軍事介入への道開く危険”(しんぶん赤旗,2006.8.31).
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik4/2006-08-31/2006083102_01_0.html
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