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自民党議員は「福島原発」処理より「再生可能エネルギーの公共事業化」に夢中 photo gettyimages
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/38612
2014年03月11日(火) 町田 徹
福島第一原発の事故から今日(3月11日)までの3年の歳月はいったい何だったのだろうか。相変わらず「脱原発依存」論議が迷走を続ける裏で、「新エネルギーの普及」という美名のもとに昔ながらのバラマキ政治が復活の兆しを見せている。
安倍政権は、国政選挙の公約を反故にするかのように、具体的な原発の削減目標や再稼働できない原発の廃炉の方策を新たなエネルギー基本計画の原案で、何ら示さなかった。これに続いて、自民党の関係部会は、原案の不備を追認するばかりか、再生可能エネルギーの普及目標作りに躍起になっているという。
いったい、なぜ、自民党の政治家は、原発事故の処理や原発依存度の引き下げ戦略作りよりも、新エネルギーに熱心なのか。真相を探ってみると、被災地よりも自身の選挙区への利益誘導に熱心な伝統的な自民党議員の本音が浮かび上がってきた。
■脱原発依存を「はぐらかす」エネルギー基本計画
政府が2月25日に公表したエネルギー基本計画の原案は、肝心のことにまったく触れておらず、保守的な新聞でさえ呆れ果てるものだった。一例をあげると、日本経済新聞は3月3日付のコラム『核心』で、「政府が国民をはぐらかすかのような説明をするのは願い下げだ」と切り捨てた。
一昨年の総選挙と昨年の参議院選挙で公約していたうえに、先の東京都知事選挙でも「脱原発依存」を掲げた舛添要一氏を担いだ政府・与党だが、問題の原案では、数や期限を盛り込んだ原発の削減計画や、安全が確認できず再稼働できない原発の処理の道筋を示されていない。
それどころか、原発の新増設にまで含みを残している。これでは、新聞に批判されるのも無理からぬところだろう。
ところが、約400人の国会議員を抱える自民党の内部では、政府に再考を求める意見は少数派に過ぎない。脱原発議員として知られ、超党派の国会議員でつくる「原発ゼロの会」の共同代表をつとめる河野太郎議員らを含めて、全体の3分の1程度にとどまっている。
河野議員らは「新増設をしない」「(使用済み核燃料の)再処理推進策をやめる」「原子力施設の立地自治体に迷惑をかけない」「新エネ・省エネの数値目標」の4項目をあげて原案の修正を求めている。
これに対して、残る3分の2の国会議員は、脱原発依存という公約を反故にしたと受け取られかねない政府の原案をそのまま容認する構え。唯一、河野議員らの主張の4つ目の項目である「新エネ・省エネの数値目標」にだけ強い賛意を示しているのが実情だ。
■前のめり過ぎる「数値目標」を強要
そうした自民党のムードを象徴する舞台となったのが、同党の「資源・エネルギー戦略調査会」(会長山本拓元農林水産副大臣)が2月28日に開いた会合だ。
この場には、自民党の「地域の活性化に資する分散型エネルギー会議事務局」が『再生可能エネルギーの試案ならびに提言』と題するレポートを提出。その中で「2030年に再生可能エネルギーの比率目標を35%にすえることは可能である」と主張、党執行部に対して、政府に原案の修正を要求するよう迫ったのだ。
今後の電力・原発政策のバイブルとなるエネルギー基本計画に、再生可能エネルギーの普及に関する数値目標を盛り込ませようというのである。
再生可能エネルギーの比率は、関西電力の大飯原発しか原発が稼働しなかった2012年度でさえ、わずか10%に過ぎない。しかも、これは全体の8%を超す水力発電を含めた数字だ。18年後とはいえ、これを35%に引き上げろという自民党の多数派意見は、かなり前のめりの計画と断じてよいだろう。
念のために補足しておくと、『再生可能エネルギーの試案ならびに提言』は、原発依存度の引き下げ目標や、全体に占める火力発電の比率の目標などを明記する必要性には一言も言及していない。原発の新増設の禁止についても、然りである。むしろ、大半の議員は、原発依存度が下がらないことや新増設を容認しかねない勢いなのだ。
■再生可能エネルギー普及の予算を選挙区へ!
いったい、なぜ、こうなるのだろうか。複数の議員や電力業界の関係者を取材すると、「原発の後始末の政策を講じても、公共事業的な予算を投入できる除染だけ。これでは、福島県しか潤わない。我々の地元には何の見返りもない」(自民党国会議員)という反応が戻ってきた。
これに対して、再生可能エネルギーの開発・普及促進ならば、各議員が地元へ予算を還元する道が開けるというのである。このことが理由で、議員たちが再生可能エネルギーの普及に躍起になっていることは、前述の『地域の活性化に資する分散型エネルギー会議事務局』というような名称の組織が存在することからも容易に納得できるだろう。
もちろん、今後、安定的に、脱原発依存を進めていくためには、再生可能エネルギーを利用した電源の開拓や育成と、省エネの徹底は避けて通れない。資源価格が高止まりしているうえ、円安によって輸入代金が急騰している化石燃料を使う火力発電への依存を続けていたのでは、貿易収支だけでなく国際収支も早晩、大幅な赤字に転落して外貨繰りが立ち行かなくなる懸念がある。
しかし、その一方で、自主避難を含めると、現在も13万人の福島県民が避難生活を続けているとされる。被災地・福島では十分な除染が行き届かず、まだ帰宅困難者が存在していることに対して、国が十分な対策をしたとは言い難い。
東京新聞が3月10日付朝刊で報じた同紙の独自調査によると、避難生活が原因で体調を崩して命を落とした福島県民の「原発関連死」は3年間で1048人に達したという。
■原発被害者救済より「地元への利益誘導」優先の異常
半ば国際公約にもなっている脱原発依存に関して、政府は明確な数値目標も設けなかった。そんな中、原子力規制委員会から施設の直下に活断層が存在すると判断されて、再稼働が事実上不可能な状態になりながら、経営破たんの危機に直結する廃炉を回避するために、規制委員会の判断に異議の申し立てを続ける日本原子力発電のような存在まで出てきた。
政府がそうした危機的な状態を放置してよいと言わんばかりの言動を与党議員がとるのは、異常な事態である。
さらに、自民党内では、電力の小売り自由化の推進や、まだ実用化されていない水素発電、林業の立て直しが前提になるバイオマス発電などの開発・普及を目指す議員連盟の設立がブームになっており、加入する議員が後を絶たないという。
これらは、いずれも地元振興の名目で予算配分の道が開ける可能性が高い政策である。はっきり言えば、かつての公共事業の感覚で予算をバラマキ、自身の得票に繋げたいとの算盤が働いているというわけだ。
しかも、それらの施策の財源は、今後、被災者を含むわれわれ国民が一段と重い負担を強いられることになる税金や電気料金である。
経済、産業、地域振興の重要性を否定するつもりは毛頭ないが、人類史上最悪の原子力事故にいまだに苦しんでいる人がたくさん存在する中で、その問題に十分な対策をとることなく、自身の地元への利益誘導に勤しむような国会議員を日本は求めているのだろうか。
今一度、われわれ有権者全員が自問してみるべきではないだろうか。
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