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http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140303-00000017-pseven-soci
週刊ポスト2014年3月14日号
1か月の入院療養を終えて先月24日、職務に復帰した小松一郎・内閣法制局長官の第一声は「首相の方針に従ってやるべきことをやる」だった。官僚の見本のような発言だが、この人が言うと、一官僚の発言以上の重みがある。
小松長官は、安倍晋三首相が「集団的自衛権の行使を容認する」という憲法解釈の大転換を行なうための“切り札”として昨年8月に駐仏大使から内閣法制局長官に抜擢した人物だ。
そもそも外務省出身で内閣法制局の勤務経験がなく、極めて異例の人事だった。第1次安倍内閣で設置された有識者会議で解釈見直しを提言した報告書の取りまとめに関わり、理論的支柱として安倍首相の信頼を獲得。長官就任で解釈見直しへ突き進むと見られていた。
しかし、入院後、官邸には「復帰は無理」という見方が強かった。政治ジャーナリストの歳川隆雄氏が明かす。
「小松氏は検査で胃がんが見つかったとされる。1月下旬に開腹して摘出を試みたが、すでに転移が見られ、結局、摘出手術は行なわれなかったようです」
そうした体調面を考慮し、「内閣の顧問弁護士」「憲法の番人」といわれる法制局長官の重責を担わせるのはあまりにも酷だ、と官邸は後任人事の選定に入っていたが、一転して続投へと翻った。その裏には安倍首相を感動させた小松長官の一言があったのだという。
「官邸は2月初旬に後任長官人事を検討していました。しかし、その動きを察知した小松長官は人を介して病床から安倍総理にメッセージを送った。『命に代えても、憲法解釈変更は私の手で成し遂げたい。何卒私の任を解かないでほしい』と。これを聞いた総理は、『小松さんは戦死の覚悟だ』と痛く感動し、続投を決めたといわれている」(歳川氏)
安倍首相は4月に安保法制懇談会に答申を出させ、与党内の合意を取り付けた上で、終戦記念日(8月15日)の前に解釈改憲を閣議決定するスケジュールを考えていた。だが、小松長官の続投が決まると、「体調を考えて、総理は日程を大幅に繰り上げた。憲法記念日(5月3日)の前に閣議決定を行ないたいようです」(官邸スタッフ)と急ぎ始めたのだ。
この逸話が永田町では“涙なしでは語れない友情の美談”として語られているが、美談や感傷で拙速に憲法解釈を変更されては国民はたまらない。第一、内閣法制局長官は首相の法律顧問ではあっても、憲法解釈を最終的に決める権限を与えられているわけではない。
小松長官の体調も必ずしも深刻なものとは限らない。日本医科大学武蔵小杉病院腫瘍内科の勝俣範之教授が語る。
「腹腔の腫瘍だと発表されているなら一番多いのは消化器のがんで、胃がんでしょう。手術ができなかったとすれば、進行がんが考えられますが、進行がんイコール末期がんではない。通院治療を続けながら仕事することは可能です」
こう見てくると、小松氏の末期がん説や美談仕立ての友情物語そのものが解釈改憲を急ぐための“演出”ではないかと怪しく思えてくるのである。
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