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[真相深層]政治の圧力 揺れる規制委
発足わずか1年半で再々編、原発審査 疑念招く恐れ
原発の安全審査などを担う原子力規制委員会の組織が1日付で再々編された。2012年9月の発足からわずか1年半で、自民党からの強い要求を受けて傘下の独立行政法人を廃止・吸収する。政界では原発再稼働に向けた審査が長引いていることへの不満もくすぶる。政治の圧力が過ぎれば規制委の独立や判断の正当性に疑念を招きかねない危険もはらむ。
初の「天上がり」
「なんとか無事に統合にこぎ着けられた」。規制委の事務局である原子力規制庁の職員は胸をなで下ろす。原発の検査や安全研究を担当している独法の原子力安全基盤機構(JNES)を廃止し、400人弱の職員は規制庁で採用する。規制委には人材育成センターなどの部署を新設し、定員も545人から1025人へと一気に倍増する。
これまで国家公務員の身分を民間に移すことはあっても、これほど大量の独法職員を公務員として“天上がり”させるのは、実は初めてだ。
JNES廃止と規制庁への統合は、12年に成立した規制委設置法の条文にも盛り込まれ、いわば既定路線。規制当局の専門性向上が狙いだった。ただ規制庁幹部は発足後も「JNESを廃止するのが本当に良いのかどうか」と語り、研究などの機能を残して温存する道を探っていた。なぜか。
JNESは、日本で原発建設が盛んだった時代の原子炉メーカー技術者を大量に中途採用したため、高齢職員が多い。公務員なら定年退職になる60歳以上が2割以上を占める。また博士号を持つなどの高学歴者が多く、給料も国家公務員より2割ほど高い。そのまま吸収すれば、ポストや給与面の処遇が難しいという課題があったからだ。
遅々として進まない統合に不満を募らせたのが野党時代に規制委設置の法案作りを主導した自民党。塩崎恭久政調会長代理は昨年8月、「(統合問題を)はっきりしなければ14年度予算の概算要求は承認しない」と規制庁に迫った。困り果てた規制庁は官邸まで巻き込んで防戦を試みたが、最終的には要求を受け入れざるを得なくなった。
統合が3月1日という中途半端な日付になったのも、このとき「年度内に統合を」と要求されたため。規制庁はあわてて秋の臨時国会に提出する法案作りを始めた。
60歳以上も公務員に採用できる特例に加え、JNES出身者には通常の公務員よりも高めの給料を払い続けられるようにする規定も盛り込んだ。1972年の沖縄返還時に琉球政府職員を日本政府に受け入れた際の前例があるのみというほど異例の措置だった。
人員は増えず
今回の統合で注目されるのは、体制強化で原発再稼働に向けた審査のスピードが早まるかどうかだ。昨年7月に始まった審査は順調にいけば半年程度で終了し、地元同意などの手続きに進むとみられていたが、いまだに終わりが見えてこない。与党内や電力業界には「規制委の審査には時間がかかりすぎる」という不満がくすぶっている。
ただ、実はJNES職員は統合前から規制庁の職員に加わる形で審査に参加していた。このため統合後も審査人員は実質的にほとんど増えない。規制委の田中俊一委員長は「(審査のスピードが)そんなに急激に変わることはない」と話す。
今回の統合騒ぎではっきりしたのは、政治からの独立性が高い「三条委員会」として発足した規制委も、予算承認などを人質に取られれば、政治の圧力をはねつけるのは難しいということだ。
規制委の設置法には施行から3年で見直す規定もある。ねじれ国会の与野党協議で、前民主党政権の主張も採り入れながらできあがった現在の体制に、自民党内ではなお不満も根強い。発足3年を迎える来年9月に向けて、組織の見直し議論が再燃する公算が大きい。
今のところ政界の注文は組織体制などに関するものが大半で、審査内容そのものへの口出しはあまり聞こえてこない。
ただ政治の意向に左右されている印象を持たれれば、それだけで安全審査への信頼も揺らぎかねない。今後、審査に合格する原発が出ても、再稼働へ地元の理解を得るのが難しくなる危険をはらんでいる。
(本田幸久)
[日経新聞3月1日朝刊P.2]
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