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2014年02月25日
余程、火事場泥棒のような行為に手を染め、気が引けているのかどうか判らないが、早速、オバマ政権のライス大統領補佐官が、「ウクライナ騒動」に関し、ぬけぬけと天使のような発言をしている。こんな発言を早速するからには、自分たちが裏から手を回したと白状しているようなもので、滑稽でさえある。その辺は、WSJの記事を参考に読んでもらおう。
もうアメリカが軍事上の覇権を握る地位から降りたいとでも言わんばかりのNYTの記事も目についた。ヘーゲル国防長官が、現在50万人規模の陸軍兵力を1割近く削減する方針を近々発表するようである。軍備増強に血眼になった1940年レベルに戻ろうと云うのだから、かなりの削減である。正直、米陸軍は金食い虫であり、海軍、空軍に比べハイテク化が難しい人海戦術系なだけに、この削減は、99%の米国貧困層を直撃する衝撃的軍事と云うか、国家失業率悪化に拍車をかけることになるだろう。イラク、アフガンと云う二つの戦場からの撤退を念頭に入れた計画だろうが、おそらく、ウクライナ騒動でNATO軍への増派が迫るだけに、思い通りには行かないと見るのが妥当だろう。
≪ ライス大統領補佐官、ロシアのウクライナ派兵をけん制
ライス米大統領補佐官(国家安全保障担当)は23日、ロシアが同国にとって適切と思う政権を復活させるために軍隊をウクライナに送らないようロシア指導部に警告、ウクライナの騒乱を東西間の闘争と見る冷戦時代的な見方をしないよう訴えた。
ライス補佐官は、NBCの討論番組「ミート・ザ・プレス」で、「それは重大な誤りだ」とし、「ウクライナが分断されることはウクライナにもロシア、欧州、米国にとっても利益にはならない。再び暴力沙汰が起き、状況がエスカレートすることは誰の利益にもならない」と述べた。
ライス氏の発言は、ウクライナでの流血の抗議を受けて親ロ派のヤヌコビッチ大統領が先週末、ウクライナの首都キエフを離れたのを受けたもの。
同氏は、ヤヌコビッチ氏がどこにいるのかは「今のところ分からない」と述べた。また、ヤヌコビッチ氏は「国民を攻撃したことや平和的デモ隊に暴力 を使ったこと、それにウクライナ国民の意思を無視したことで正統性」をほとんど失ったとし、オバマ政権が同氏の失脚を遺憾に思っていないことを明確にした。
ライス氏は、ヤヌコビッチ氏の歩調は欧州との関係を緊密化させたいと考えるウクライナ国民のそれとずれていると示唆し、「欧州に背を向けた彼の決 定は国民の選択ではなかった」と付け加えた。また、「ウクライナ国民は平和裏に意見を表明したが、暴力に遭い、このことがヤヌコビッチ氏にとって良い結果をもたらさなかった」と話した。
ライス氏はヤヌコビッチ氏について過去形で話した。ヤヌコビッチ氏やクレムリンの支持者らはウクライナでの出来事を「クーデター」と呼んでいるが、ライス氏は彼が権力を放棄しなければならないかどうかという問題は非現実的だと述べた。ライス氏は「彼は行ってしまった」とし、彼は「整然と荷造りを し、家具やら何やらを持ってキエフを去った」と付け加えた。その上で、ヤヌコビッチ氏は「現在、指導者ではない」と述べた。
ロシアのプーチン大統領はウクライナの騒乱を東西が影響力をめぐり争った冷戦時代の文脈の中で捉える可能性があるかとの質問に対してライス氏は「そうかもしれないが、それはウクライナ国民が考えていることを反映していない、ずいぶんと時代遅れな見方だ」と話した。
さらに、「これは米国のことでもないしロシアのことでもない。これはウクライナ国民がその願望を実現し、民主的に欧州の一部になる機会を持てるか どうかということだ」と述べた。同氏はまた、米国は「近く」行われる選挙を受けて「挙国一致政権」が樹立されるのが好ましいと考えていると語った。 ≫(WSJ)
注:日経には、フィナンシャルタイムズの社説の和訳がわざわざ載せられていたが、プーチン大統領の行動をけん制するのに必死の論調だった。中身は、上記、ホワイトハウス、ライス大統領補佐官と同じだ(笑)。余程、プーチンの逆襲が怖いのだろう。
アメリカおよびNATOがウクライナ問題でどのような選択をするのか判らないが、表立ってNATOがウクライナの西側陣営を支援出来るほどの余力を持っているとも思えないので、EU加盟支持派の連中の運動は、ロシアの介入により、散り散りになる可能性は大いにある。(1)で言及したように、ウクライナの国家分裂は、まだ穏便な道であり、内戦の継続と云う最悪のシナリオも予想できる。その時、アメリカを含む西側諸国が、本当に腰を入れてウクライナのEU加盟を支持し続けるかは、かなり危うい。西側諸国自体が、自国の経済をなんとか凌ぐのに精一杯な状況で、虎の子を吐き出し、ウクライナの為に命まで犠牲にする根性があるとは思えない。
今回のウクライナ騒乱における、失業者へのバイト費用が、ロシア側から出ているわけはないので、西側乃至はイスラエル、サウジ等々の財布から出たと見るのが妥当だろう。壊す手伝いはするが、そこから先のことは判らない、と云うのが最近のCIA等々の勢力の行動原理であり、常に尻切れトンボな戦略しか持ちえないのである。イラク、アフガン、エジプト等々の国が、既存の枠組みを壊したのはイイのだが、その先に責任を持たない連中のチャチャに踊った国家は、ことごとく只騒乱の坩堝を出現させられただけである。あとはお前たちで好きにやれ、と言われて出来るくらいなら、あんな暴動事態を起こす国民ではないわけで、最後まで、茶々を入れるなら責任を取るべきである。デモクラシーのない国民に、これからはチャンと民主的に自己責任でやりなさい、なんて云うのは空理空論なのだ。
まぁ他国の話はこの位にして、わが国がウクライナ騒乱で、どのような影響を受けるのか考えてみようと思う。世界の軍事的大国と言えば、先ず米ソが挙げられる。ソ連は崩壊し、ロシアとなったが、幾多の艱難辛苦を味わったようだが、最近では国際社会におけるプレゼンスも、プーチン大統領と云う稀有なリーダーの牽引で、かなりの力を保持し始めている。このロシアと中国の接近は、素知らぬ顔をしている割には、欧米諸国は相当神経質に、この社会主義的歴史を包含する二大国に、対峙している。一見、東西対立などなきが如き顔をしているが、西側諸国は、中露の覇権的傾向に神経をとがらせ、あらゆる地域紛争において、鍔迫り合いを展開している。
現在起きているウクライナ騒乱も、シリア問題も、構図は似ている。シリアでは、オバマは完全にプーチンの横やりに敗れ、腰を抜かしてしまった。ウクライナで、プーチンの好きにはさせじと、西側陣営にハッパをかけている状況は、手に取るように判る。日本にまったく無関係のように思える、現在のウクライナにおける、EU対ロシアの綱引きは、想像以上に、わが国にとって重要な意味を持っている。現在の安倍政権が、唯一対等な立場で会話のできるビックネームがプーチンロシア大統領である事実は、非常に重要だ。仮に、安倍首相が、歴史に残る大事業をなしえた日本の総理として歴史に名を刻む絶好のチャンスは目の前にぶら下がっている。
筆者の目から見る限り、到底安倍晋三が、世界の覇権の潮流が、海洋国家から大陸国家に回帰しつつある歴史認識など持っている訳はないと推量するが、米国の度重なる警鐘を無視して、靖国参拝を強行するなど、常人では理解しがたい行動をとる人ゆえに、東西のステルス性冷戦構造の醸成が始まっていることなど露とも知らず、唯一自分を認めてくれるプーチンに親和的心情を持つ可能性は大いにある。つまり、一貫した論理で外交防衛を行うと云うよりは、自分が、どちらの方が心地いいかと云う基準で行動する性癖があるので、日露関係でホームランを打つ可能性はある。これから佳境を迎える「日露首脳会談」は、東シナ海の岩礁に比べれば、驚くほど壮大な夢が実現可能な領土の確保に至る北方4島の帰属問題である。ビデオニュース・ドットコムのマル激トークエンドデマンドで東郷和彦、神保哲生、宮台真司の三人が、その可能性を探っている。
≪ 北方領土問題解決の千載一遇のチャンスを逃すな
安倍首相は、2月7日の冬季オリンピック開会式に出席するためロシアのソチを訪れ、翌8日、プーチン大統領と首脳会談を行った。プーチン政権が進める同性愛規制などに対して、人権上の懸念から主だった欧米諸国の首脳が軒並み開会式を欠席したのを尻目に、安倍首相は五輪外交の機会を逃さなかった。それは日露関係が非常に重要な局面を迎えているからだった。
日露関係は詰まるところ北方領土問題をどう決着させるのかにかかっている。その一点が解決できないために、日本とロシアは未だに第二次世界大戦後の平和 条約を結ぶことさえできていない。そして、それが戦後70年近くにわたり、日本とロシアという東アジアの2つの隣国の関係を進展させる上での決定的な足かせとなってきた。
実はロシアは2000年代に入って、中国、ノルウェーなど周辺国との国境を積極的に画定してきた。2月18日にはバルト三国のエストニアと国境を画定さ せて、残る大きな領土紛争は日本との北方領土を残すばかりとなっている。更にロシアのプーチン大統領は日本に対して「原則引き分けで領土交渉をやりましょう」とまで発言している。
一方の安倍首相も、向こう3年は大きな国政選挙が予定されない中で、領土問題のような腰を据えて取り組むべき政治課題に手をつけられる立場にある。外務省で一貫してロシアを担当してきた東郷和彦京都産業大学教授は「この機会を逃すと北方領土は二度と返ってこないかもしれない。これが最後のチャンスになるのではないか」と、日露関係が千載一遇の、そして最後のチャンスを迎えていると指摘する。
歴史的に見ると北方領土といわれている4島(択捉島・国後島・色丹島・歯舞諸島)は、1855年の日魯通好条約締結以降、1945年のポツダム宣言受諾まで約90年間日本が統治してきた。しかし、同年2月のヤルタ会談でルーズベルト、チャーチルと対日参戦を約束したスターリンの下、日ソ不可侵条約を破ってソ連軍が満州に侵入。9月5日頃までに北方4島も支配下に治める。その後、サンフランシスコ講話条約で、日本は国際社会に対して公式に樺太と千島列島の放棄を宣言している。ところが旧ソ連がサンフランシスコ条約に調印しなかったため、現在までのところ北方4島の領有権は国際法上日本とロシアのどちらも有していないながら、一貫してロシアが実効支配をしているという状態にある。
日本には、不可侵条約を破って対日参戦をし、日本のポツダム宣言受諾後も侵攻を続け、満州で民間人を相手に殺戮や強姦などの蛮行を繰り返した上に60万人の日本人をシベリアに抑留したソ連に対する特殊な感情もある。更に日本は少なくとも1956年以降、一貫して北方4島は日本の領土であるとの立場を貫き続け、積極的にそのような広報活動もしてきているために、国民の多くも政府のその立場を支持している。4島一括返還以外の立場を日本が取ることに抵抗が多いのは言うまでもない。
しかしその一方で、過去70年近くもロシアの実効支配下にあり、4島にはひとりも日本人がいないまま、この先もそれが続くとなると、日本への返還は事実上不可能になってしまうことは想像に難くない。加えて、ロシアは2007年からクリル開発計画と称して5千億円規模の予算を投じて北方4島の開発に取り組んでいる。これらの事情を考慮すると、今、より現実的な解決策を探らない限り、北方領土が日本に戻ってくる見込みは事実上消滅してしまうと言っても過言ではないだろう。
東郷氏は北方領土問題は2島+α(歯舞、色丹の2島返還と残る国後、択捉の2島についても何らかの将来につながる合意)が落としどころになるだろうと指摘する。「まず1954年の日ソ共同宣言に従って歯舞、色丹を返してもらう。残る択捉と国後は日本、ロシア双方が関わる特別共同経済特区のような仕組みを作った上で、今後も交渉を続けていく」というのが東郷氏の提案だ。これならロシアも乗れる可能性が高いと東郷氏は言う。4島一括返還にこだわり、何も手にできないまま、結果的に両国関係を進展させないこれまでの道を選ぶのか、4島一括返還にこだわらず、まず2島の返還を実現するとともに、とにかく北方4島に日本人が住めるようにすることで、その後の2島の帰属にも可能性を残していくのかのいずれかの選択になるのであれば、これがベストな選択ではないかと東郷氏は言う。
日露両国が北方領土問題を解決させ、友好的な隣人として新しい関係の構築に成功すれば、東アジア情勢はもとより国際的にも大きな意味を持つ。しかも、その時はこれまで両国間の対立の象徴だった北方領土が、友好と経済協力関係のシンボルとして機能することになる。
果たして北方領土問題に決着をつけ、日露関係を大きく前進させることができるかどうかは、両国の問題であると同時に、日本国内の問題としての面が多分にある。東郷氏は、これまで日露関係が前進の兆しを見せるたびに、ある時はアメリカから、またあるときは日本国内の勢力から横やりが入り、期待が幻滅に終わるような苦い経験を繰り返してきたという。
日露両国は、そして日本はこの千載一遇の機会をものにすることができるのか。北方領土問題と日露関係改善の前途に横たわる課題とその克服の見通しを、ゲストの東郷和彦氏とともに、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。
≫(マル激トークエンドデマンド:東郷和彦、神保哲生、宮台真司)
ロシアが国境線問題を確定させる作業を着々とおこない、残されたのが日本との国境線であることが、日露交渉のキーであったが、前述のように“ウクライナ問題”の勃発で、NATO諸国との国境問題が再浮上したので、懸案の国境問題は二か所に戻ってしまった。この点は、幾分マイナスな要素だが、経済的発展が、プーチンの重大な興味である以上、北方4島のドラスティックな経済開発とシベリアの開発において、日本の協力は切り札のようなものである。筆者も、この機会を除くと、プーチン以上の実力者が、将来的にロシア政権に誕生する可能性は今後少なく、プーチン時代に一定の成果を上げるのはベターな選択だろう。
勿論、ロシアと中国の蜜月を考慮すると、日露関係だけを成功させても意味がないと云う主張もあるだろうが、安倍政権一代で行う歴史的快挙は一つで十分である。おそらく、株式の快調とは裏腹に、アベノミクスの副作用の方が際立ってきている日本経済の状況から、経済政策も失敗、日米同盟の深化も不確か、軍事大国に向かおうと云う幻想まで抱いているわけだから、10年も権力の座に居られるわけもないので、「日中露」と云うアジア的枠組みを夢見させる方向づけをすることは、外交上有益なポイントを挙げることになる。対中問題は、次の政権の宿題として残されて良いのではないだろうか。韓国はいずれ腰砕けになるのは自明、向きになる必要はないだろう。米国も、本気で日露交渉の邪魔立ては出来そうにない。
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