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2014年02月22日 板垣 英憲(いたがき えいけん)「マスコミに出ない政治経済の裏話」
◆「見事にひつくり返った。あの子、大事なときには必ず転ぶ」と、2020年夏季オリンピック・パラリンピック組織委員会会長の森喜朗下首相(元文相)が2月20日、福岡市で開かれた(毎日フォーラム)での講演で、ソチ・オリンピック・フィギュアスケート女子ショートプログラム(SP)16位だった浅田真央選手について酷評してしまった。この発言に全国各地の浅田真央選手ファンの多くから批判の声(ブーイング)が燃え上がった。
森善朗元首相は、自民党文教族のドンと言われ日本体育協会名誉会長(前会長)を務めたスポーツ界の実力者であるだけに、ソチ・オリンピックが終わっておらず、ましてや浅田真央選手が、これからフリーのプログラムを控えて真剣に精神の統一に努めている最中という「大事なとき」に、苦言を呈する形の不用意な発言を行ったのは、軽率の極みと言われても仕方がない。
それだけに、浅田真央選手の熱烈なファンだけでなく、海外のスポーツファンからも、森善朗元首相の見識の浅さに批判の矢が向けられる格好となってしまった。
森善朗元首相は、講演の中でソチ五輪・フィギュアスケート団体について「負けると分かっていた。浅田真央選手を出して恥をかかせることはなかった」「米国に住んでいる。(米国代表として)五輪出場の実力はなかったが、帰化させて日本選手団として出した。アイスダンスは日本に出来る人はいない」「浅田が団体でトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)を成功させれば、アイスダンスの劣勢を盛り返し、銅メダルを獲得できるとの期待が日本チームにあった」「(団体戦で)転んだ心の傷が残っているから(SPで)転んではいけないとの気持ちが強く出たのだろう」と発言したという。
【参考記事】
森元首相 真央に「あの子、大事なときには必ず転ぶ」
http://www.sponichi.co.jp/sports/news/2014/02/20/kiji/K20140220007629140.html
森元首相 リード組に「五輪出場の実力はなかったが…」
http://www.sponichi.co.jp/olympic/news/2014/02/20/kiji/K20140220007629531.html?feature=related
◆森喜朗元首相は、スポーツ界に強い影響力のある政治家で、表向き政界を引退し議員バッジを外しているとはいえども、今もスポーツ界に隠然たる実力を残している。そうした立場から、裏事情に精通しているということを講演会の聴衆に見せつけたかったのであろう。そこでついついサービス精神旺盛になって口が滑ってしまった面がある。東京から遠く離れた九州・福岡市になまで出向いて行った以上、自分だけの「とっておきの話」を「ここだけの話」といった感じで話したのかもしれない。
けれども、それが大きな間違いだった。浅田真央選手の熱烈なファンから直ちに反撃をくらったのだ。
その翌日、浅田真央選手はフリープログムでは渾身の演技で、まさに不死鳥のごとくどん底から這い上がり蘇った。浅田真央選手の底力に、日本国民の心は大きく揺さぶられた。
結果は「6位入賞」にとどまりメダルには届かなかったが、多くの国民が、「メダル以上の感動をもらった」「メダルより大切なものがあることに気づかされた」と称賛の声が絶えない。
浅田真央選手の演技はまさに「神演技」だった。前日の演技の失敗で「金メダル」が絶望的となり、バンクーバーの雪辱から4年間「金メダル」を目指してきた浅田選手にとって、まさに地獄のどん底からの「神演技」だった。女子フィギュアでは現在、浅田選手だけが世界で唯一跳べるという「トリプルアクセル」を、バンクーバーに続いてソチでも成功させ、さらにその「トリプルアクセル」を含めた「6種8トリプル」という前人未到の彼女しか出来ないジャンプ構成をことごとく成功させたからだ。地獄の底からの「8トリプル」の快挙により、「16位から6位」へと劇的な挽回を遂げ、日本のみならず、世界中のアスリートたちからも「真のファイター」と称賛を浴びている。
浅田真央という選手は、人並み以上の努力と困難を積み重ね、文句ひとつ言わずひたむきに挑戦していく姿が、日本そのものだと感じている人が少なくない。
人は誰しも、俗世間に揉まれ振り回されながらも、どうにかこうにか俗世間に折り合いをつけて生きている。しかし、ふと何か大切なものを見失っているのではないかと感じつつ日常をやり過ごすなか、限界に向けて果敢に挑戦していくアスリートの勇姿に感応したとき、生きる希望と勇気をもらう。
浅田真央選手もそんなアスリートの一人である。だからこそ、メダルを超えた感動と喜びを知った日本人は、彼女のことを誇りに思い、惜しみない賛辞を送り続けているのだろう。
願わくば、「真のアスリートの姿」を、これからも世界に示していってほしい。
浅田真央選手は、今回の演技をこれまでの集大成と考え、引退を覚悟しているかもしれない。もちろん、進退については本人の意思を尊重すべきであるのだが、年齢はまだ23歳であり若い。引退するには早すぎるというのが、私の率直な感想である。まだまだもう少し、浅田真央選手の演技を見続けていたいという思いは、正直捨てきれない。
まずは体のメンテナンスを優先して、ゆっくり考えてもらいつつ、日本中の批判の的となってしまった森喜朗元首相には、お節介ついでに、浅田真央選手の続投に尽力してもらいたいと言っておこう。
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